49.甘み&深み&ボリューム感。シオちゃんは、きょうも腐らず頑張ってますっ!
塩味の対比効果、つまり「お塩は少しでピリリと辛い」効果です。
…いや、これは山椒か。
味に関する塩の作用を言い表すとすれば、似たようなものでしょう。
塩には同時に含まれる、甘さや風味を際立たせる働きがあります。
それに加えて、塩といえば塩梅や青菜に塩。
ちょっとムリヤリですが…梅干や漬物などの保存食が思い浮かびます。
これは、塩の殺菌・防腐作用を利用したものです。
塩が持つ防腐作用を科学的(むしろ化学的?)にみてみますと、食物に加えられた「塩」が水分子とくっつくことで、腐敗菌が使える水がなくなり、結果として腐敗が抑えられる-という仕組みのようです。
「腐らない」というか「腐れない」といった方がいいのかもしれません。
味わい的には正反対の砂糖も、この塩と同じ防腐作用を持っています。
甘~いジャム、あんこなどは腐敗しにくく長期間保存がききます。
これは大量に加えられた砂糖が、材料のイチゴや小豆に含まれる水を抱え込み、腐敗菌が使える水がなくなってしまうことが主な理由です。
サトーとシオ。性格は正反対。
だが、その目指すところは同じであった。
塩が持つ殺菌・防腐作用。
パンの発酵を担う酵母も、例外なくこの作用の影響を受けます。
つまり、塩によって酵母が「苦しみ」、発酵スピードが抑制されます。
塩が生地に加わることで、じっくりと醗酵が進み、より味わいのあるパンに仕上げることができるのです。
このような点からみれば、パン生地における塩の役割は「醗酵の調整役」といえます。
塩にはさらなる作用があります。
詳しい仕組みは、よく分かっていないようですが…
グルテンの網目を強くかつ密にするといわれています。
小麦に含まれるタンパク質は、水分が加えられ捏ねられることでグルテンが形成されます。
グルテンはパンのふっくら・モチモチ感の大黒柱ともいえます。
塩にはこのグルテンをより緻密にして、きめ細かくボリュームのあるパンにする働きがあると考えられています。
パン作りにおける塩の役割をまとめると、
しょっぱさが引き出す甘味と風味
醗酵を抑制することで生まれる味わいの深み
きめの細かさが生むボリューム感
となります。
ああ、もう忘れてしまいそうですが…以前書かせていただいた「サトーとシオの物語」。
このお話のヒロイン役のシオは、この「塩の役割」を意識して描きました。
サトーの暴走(妄想?)に対して電撃を加え、たしなめていたのも塩の「調整役」としての働きを考えてのことです。
豪快でいて仲間を呼び集め、パーティーの中心にいるサトー(砂糖)に対して、シオは冷静沈着なストッパー役、調整役として演じてもらいました。
味わいまでは力量が足りなかったので書ききれず。ご勘弁を…。
パン全体の味わいを調整するシッカリさん。
シオちゃんはきょうもガンバってます。