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43.突然オーブが輝きだした。 俺の目に真っ先に飛び込んできたのは…

 ハバンとアイグが大地の底に消えてもなお、巨鳥アマドリとの攻防は続いた。先ほどの大噴火による地面の揺れは収まっている。辺りを見渡すとあちこちで地面が裂け、底が見えないほど深く大きな地割れが発生している。


 大噴火による衝撃波は山全体を覆う大気を震わせ、空中にいるアマドリもしばらく動けない様子だった。

 

 だが、それもつかの間。4人は上空からの容赦ない攻撃にさらされた。

 

 両翼を巧みに使い、魔法攻撃や剣撃をかわしながら急降下。

 両脚の鋭い爪で襲い掛かってくる。

 ギリギリでその攻撃をかわし反撃しようとするが、間合いに入るのはほんのわずかな時間で、すぐに上空に逃げられてしまう。

 上空に舞い戻ると、再び急降下というパターンが繰り返される。ヒット&アウェイのお手本のようなアマドリの攻撃に、かなり手こずらされた。


 最終的には、ミッシュがおとり役となり、その身に一撃を食らった。

 すかさず大きなカギ爪を抱え込み、ミッシュがアマドリの動きをロック。

 さらにシオの電撃で動きを止め、俺とクロワが同時に剣撃を叩き込んで何とか撃退することができた。

 シオはアマドリを押さえ込むミッシュごと電撃魔法を掛けていたような気がするのだが…ミッシュは気に留めていないようだ。



「それで、このドロップアイテムなんだけど…」


 戦いを終え、ミッシュの脇腹の治療をしながらクロワが言う。

 右手には卵のような形をしたアイテムが掲げられていた。


 俺が受け取り、鑑定のスキルを使って調べたところ、


<<アマドリのオーブ:フェニル>>


 と表示された。


「オーブ? 何か特別な効果があるのかしら?」


 俺からオーブを受け取り、さまざまな角度から眺めて思案顔のシオ。

 治療を終えたミッシュは、大きなため息をついてシオから強引にオーブを取り上げた。


「解らねえなら、タタクまでだっ!」


 足元近くにそのオーブを放り投げ、いきなり大刀で切りつけた。

 

ガキンッ!

 

 「ちょっと何してんのよ!」

 「ミッシュ、それは無茶よ…」


 シオとクロワがほぼ同時に抗議の声を上げた。

 しかし、当のオーブは傷一つ付かず、何の変化もしていない。


「もしかすると…アイス・フロストッ!!」


 クロワはオーブに対して氷系魔法を唱えた。

 が、やはり何の変化も起こらない。


「やっぱりだめね…」


 切っても冷やしてもダメなら熱してみろ。俺は何の脈絡もなくそう言って、剣を振り下ろし炎の斬撃「紅炎斬」を打ち込んだ。


「ちょっ! そんな大技、危ないじゃ…」


 シオが忠告を言い終わらぬうちに、突然オーブが輝きだした。

 光は急速に強さを増し、やがて、直視できないほどの光量となった。


 その光が収まった時、その場の全員が言葉を失った。

 俺の目に真っ先に飛び込んできたのは…

 

 女性の胸や腰のラインを強調した曲線美。

 装飾は抑制的。そのシンプルさがフィット感を強調する。

 そして、何よりも、深く切り込まれた両脚のスリット。

 西洋の騎士然としていた全身鎧フルアーマーが変形して…

 こっこれは、チャ、チャイナドレスか?

 健康的な片脚が大胆に出てますよ、シオさん。

 おおっ、動作のたびにクロワの鎧がヒラリと揺れる。

 この鎧の素材って金属だったはずなのに。

 チラリ…ああ、俺の心も揺れる…

 恥ずかしげな動きのクロワは綺麗というか、むしろ妖艶な感…


「痛てっ!! シオいきなり電撃はよせって!」


「サトー、いま変なこと考えたでしょ!

 それより早くこれを元に戻しなさいっ!!」


 容赦ないシオの電撃が俺を襲う。しかし、直せといわれてもオーブの効果なので解除することもできない。


 改めて見てみると、俺を含めて全員の鎧が変化し、中華テイストの拳闘士カンフーファイターのような容姿となっている。


 鎧はメタリックな光沢を放つ紅褐色。これまた渋い。


 ミッシュは野党か山賊か? そのまま水滸伝に出てきそうな格好も凄みがあるが、自慢の大刀は青竜刀ばりに片刃で幅広の剣となっている。


「おっいいねえ、これ。クロワも可愛いじゃねえか」


 青竜刀?を手にミッシュが放った言葉に、クロワはすっと視線を外した。おおっ。誰かと違って、これは大人の魅力が…ぐわっっ!!


「悪かったわね。クロワと違ってオ・コ・サ・マで」

 少しは反省しなさいという言葉とともに、またも電撃が放たれた。


「でも見て。すべてのステータスが上昇しているわ」


 クロワの指摘を受けて、モニターをチェックする。確かに体力・魔力・攻撃力などは軒並み1・5倍程度にかさ上げされていた。


強化系ブーストタイプのオーブか。こりゃ使えるな」


「使えないわよ!」


 ミッシュのつぶやきに、すかさずシオとクロワの言葉が重なった。


 あれこれ試しているうちに5分位が経過した頃、全員が再び光に包まれ、何とか元の姿に戻ることができたのだった。


-----------------------


 アマドリとの闘いは十数回に及んだ。結局、ハバンとアイグに再会するまでにオーブを6つ手に入れることができた。


 それらは鑑定によると

「フェニル」

「グルタ」

「リジン」

 の3種類のオーブに分類された。


 「フェニル」と同じように、なぜか俺の炎の剣撃を加えないと、その「変身効果」が現れないのだった。


 フェニルは中華テイストの装備に変身したが、「グルタ」と鑑定されたオーブを使ってみると…光に包まれた後、古代戦士風に鎧が変形した。


 俺とミッシュは興奮した。

 いや、シオとクロワの姿にでは断じてない。

 ダークブラウン系のカラーリングをした古代剣闘士グラディエーターテイストの装備は、剣士として戦う者として満足のいくものだったからだ。


 もっとも女性2人の姿は一切見ることができなかったが。

 そして、「グルタのオーブは絶対に使わないこと」というキビシイお達しまで受けてしまった。

 一体、どんな鎧だったのだろう? 


 さて、もう一種類の「リジン」という名のオーブ。

 このオーブは女性陣にも好評だった。

 変身後の姿は…みなさまの想像に任せるでゴザル。ニンニン。


 これらのオーブは赤き巨竜との最終決戦ラストバトルの切り札になる。

 俺はそう確信して、懐にそっとしまい込んだ。


「さあ、行こう。メイラードの頂はもう目の前だ」


 サトーと5人の仲間は、旅の最終章へと踏み出した。

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