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42.アマドリとの戦い。パパンとアイグはメイラード山の地割れに飲み込まれた。

 五つの剣 集いし時

   メイラードの頂に導かれん

 五つの刃 重なりし時

   千年の赤竜は地に堕つべし

 魔の炎を鎮め 光あふれし時

   五つの宝 約束の空に帰らん



 サトーの元に集いし五大元素剣士とシオ。

 その6人のパーティは、数々の魔物との死闘を乗り越え、

 伝承が示す決戦の地へと到達したのだった。



「ここが、メイラード山なのね」

 一行の真ん中で、シオが確認するように言う。


 荒涼とした岩肌。草木一本たりとて生えてはいない。

 遠くに望むその頂は暗褐色の噴煙を上げ続けている。

 陽の光を遮り重く垂れ込めた暗雲。

 雷鳴が轟き、時折、紅蓮ぐれんのマグマが地鳴りを伴って噴出する。

 ここは、まさしく死の山だ。


「最後の地ってヤツか。燃えるぜっ!」

 ボサボサの赤髪を揺らし、ミッシュが豪快に両腕を振り回す。


「あなたはいつも燃えてるじゃない…」

 クロワは冷めた声で、その巨体の男をたしなめた。


「そう言うなよ。お前だって、気合入ってるんだろ?」


 内気なクロワは普段からほとんどパーティーの会話に絡むことはない。

 久しぶりに発せられた肉声を、ミッシュが茶化した形となった。

 困り切った顔をしてうつむくクロワ。


「あなたはもう少し女性への接し方を勉強した方がいいわね」


 クロワの隣に立つシオが、すかさず助け舟を出した。


「さあ、こんなところで立ち話をしていても仕方がないわ。

 どんどん進みましょう♪」


 軽やかなシオの声が一行の背中を押す。

 6人のパーティーは1・2・2・1のフォーメーションを保ちながらメイラード山の探索を始めた。


 先頭を歩むのは風の剣士・ハバン。

 白髪と白髭がトレードマークの老剣士だ。飄々(ひょうひょう)とした身のこなしだが、一体どれほどの戦歴を重ねているのだろう。まったく隙のない鋭い眼差しで周囲を警戒し歩を進めていく。

 

 ハバンに続くのが大地の剣士・ミッシュ。

 赤毛の大男。一見して粗野な感じだが、まったくそれを裏切らない豪放磊落ごうほうらいらくな性格だ。仲間を思う気持ちはこのパーティー随一で、巨体を生かした盾役を買って出てくれている。

 

 俺・サトーはミッシュの隣を進む。炎の剣士で愛剣の銘は「飛天紅戟ひてんこうげき」。リーダー役を任されている。後ろを歩くシオとは幼なじみで、彼女のたったひとつの願いを叶えるために、この世界を旅している。

 

 そのシオはこのパーティーで唯一、五大元素剣士ではない存在だ。

 電撃系の魔法をメインとして、回復・能力付加系の魔法を駆使するサポート役。本来なら、こんな生死を掛けたバトルとは無関係な女子だったのに…俺の窮地を救うために、この世界に来ることになってしまった。


 シオに並んで歩む女性は、水の剣士・クロワ。

 水・氷系の魔法と回復系の魔法を得意としている。清楚かつクールな雰囲気をまとっている、寡黙さ故に謎も多きお姉さんだ。年の頃はシオよりも5歳位年上だと推定されるのだが…


 パーティーの殿しんがりを務めるのは光の剣士・アイグ。

 単身の戦闘力は俺を凌駕し、恐らくこのパーティーで1番であろう少女。剣による遠隔・近接攻撃に加え、強力な光魔法も兼ね備える万能タイプ。状況判断力も高いのでこのパーティーの殿を任せている。

 

 「むっ? 上空からおいでなすった」

 

 ハバンが上空を見上げ緊張した声で伝える。

 まだ敵の姿を捉えることはできないが、全員散開し戦闘態勢に入る。


 俺は静かに抜刀し、ハバンが見上げた先の虚空に目を凝らす。

 最後の地というメイラード山のモンスターだ。

 決して油断できる相手ではないだろう。


「斬光波っ!!」


 アイグが光来瞬戟こうらいしゅんげきを振り抜き、先制の一撃を放つ。空を切り裂く光の奔流。しかし、その攻撃は空中で巧みに回避された。急降下し接近する巨大なモンスターの影。


 巨鳥・アマドリ。

 その両脚のツメは人間の胴よりも太く、鋭い。

 両翼長は10メートルを軽く超すだろう。


 巨体の割りに翼を器用に操り、機敏な動きでこちらを翻弄する。アイグの斬光波や、俺の紅炎斬のような遠隔系の剣撃はことごとくかわされていく。


 ミッシュは大剣を手に歯噛みしている。かの大剣はパワー重視の元素剣でドラゴンやキング・オーガといった重くて硬い敵にはめっぽう強いのだが、今回の攻防には手出しができないでいるのだ。


 クロワとシオはそれぞれ水系と電撃系魔法を繰り出して、アマドリの動きを制限する。

 

「ふむ、近づいたところを、ひと当て」

 

 ハバンが隙を作ったフリをして、モンスターを呼び込みカウンター攻撃を仕掛けた。


「そいっ、風塵斬ふうじんざんっ!」


 拍子抜けするくらい場違いな軽い掛け声だが、ハバンのその一撃は破壊的な轟音を響かせアマドリに迫った。


 だが、ハバンの刃がアマドリに届くことはなかった。


 ハバンが一撃を繰り出したまさにその瞬間、巨大な噴火が我々を襲った。

 山頂からほとばしる圧倒的な熱量を伴った紅蓮の閃光。

 大気を振るわせ、足元の山肌が崩壊した。

 

 体勢を崩し、そのまま地割れに飲み込まれるハバン。

 続いてアイグも地面とともに崩れ落ち、姿を消した。


「ハバン、アイグッ!

 くそっ! 2人を追うぞ!」


 急いで地割れに飛び込もうとする俺をシオが制した。


「サトー、落ち着いて。

 今やらなければならないのは、目の前の敵を倒すことよ」


 あの2人ならきっと大丈夫。シオはこうも付け加えた。

 奥歯をかみ締めながら、俺はアマドリに対峙した。


「さっさとこいつを倒して、ハバンとアイグを追うぞ!」


 静かに、強く頷いたミッシュとクロワは、ほぼ同時に巨鳥に対して踏み出していた。

せっかくなので、前回のお話の続きとしました。メイラード山、アマドリの戦い…。何とかして書き進めます。

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