41.砂糖は水分を抱え込みデンプンに取り込まれます。これがパサツキも防ぎます。
パンにおいて砂糖は、これらとは別の役割も果たしています。
前々々回はこんな「引き」で終わっていました。
その後、番外編「ダース ピスタチオ」を挟んでしまったので、話がぶつ切りになってしまいました。元々からして理路整然としていないぞ、と言われれば返す言葉もないのですが…
さて、砂糖には水分を吸着する性質があります。
その理由は…ここで、化学のお時間です。
砂糖(ショ糖)の分子構造を見ると、水になじみやすい性質を持つ親水基を持っており、多くの水の分子を抱え込むことができる。…っていわれても、当方も何だかよくわかりません。
なにせ、砂糖にはたくさんの「手」があって、水の分子をたくさん掴むことができるようなイメージです。
「ねえ、サトー。当然、私も一緒に連れて行くわよねっ!」
「お主の男気にワシは惚れた。地獄の果てまで一蓮托生だっ!」
「ふうむ。お前さんの力になってやろうと思うが、どうじゃ?」
「(背中を向けて)まあ、着いて来てほしいっていうなら、行かないでもないわよ…」
以前に展開した「サトーとシオの物語」では、元素剣を持つ屈強の剣士たちが次々と仲間となって赤き巨竜を倒すっ! というストーリーを考えていました。
「砂糖の水に対する吸着性」を「サトーの主人公的求心性」に置き換えて表現しようと思ったのですが…そのためには壮大なストーリーが必要になることが判明して、計画倒れになってしまいました。ぐすん。
話は戻ります。
砂糖は多くの水分を抱え込んだまま小麦粉のデンプンなどに取り込まれます。結果として、デンプンの保水力がアップするので、しっとりとした焼き上がりとなります。また、焼いた後、保存している間の乾燥によるパンのパサツキも防いでくれます。
砂糖のパサツキ防止作用でよく知られているのは、お寿司のシャリでしょう。時間がたっても酢飯がカチカチにならないのは、お酢ととも混ぜ込まれた砂糖がご飯の中に入り込み、保水力がアップしているからです。
ちょっと余談になります。
家庭でよく使われている砂糖はしっとりした上白糖です。
お菓子作りで使うグラニュー糖はサラサラした感じですね。
この上白糖の「しっとり感」。実は、あのあこがれの「しっとりしたお肌」と同じ原理で、上白糖の結晶は水分が多くてみずみずしい「お肌」で包まれた状態になっています。
台所のケースに分け入れた上白糖がよく固まるのは、そのお肌が「乾燥肌」になることが原因です。ということで、元のしっとり状態に戻すには水分を加えて、お肌のカサカサ状態を解消してあげればOKです。
ただし、水分の量が多すぎると砂糖の結晶自体が水に溶けてしまい、結果としてよりひどく固まってしまうことになります。
「おばあちゃんの知恵袋」的な情報を総合すると、カチカチ上白糖を解消するワザとして、霧吹き一吹きや水滴1滴を加えて数時間放置、などが挙げられていました。
砂糖は水分保持のほかに、焼き色をつけるためにも一役買っています。
醗酵を終えたパン生地をオーブンで焼き上げます。
焼いていると、う~ん、いい香りがしてきます。
そして、表面が徐々にキツネ色に変わっていきます。
このパンの焼き色、当方はずっと「焦げ」の一種だと思っていました。
(説明が長くなりそうなので、このお話は次回に続きます…)