38.アイグの漆黒の兜が宙に舞った…豊かな栗色の髪がなびいていた。
深い藍色の鎧。
優美さとシャープさが混在した意匠は、まさに女性を感じさせる。
俺のそばにシオが立っている。
本来なら、悲しむべきなのだろう。
この世界に、こんな世界にシオがいることを。
だが、俺は素直に嬉しかった。
「シオ、会いたかった」
「ありがとう。でもいまは目を向けるべき相手が違うわ」
シオはアイグを無視して、無防備に近づこうとした俺をたしなめた。
「一気にいくわよ」
その言葉を合図に、シオは大魔法を連発する。
えっ?
いきなり出て来てそのレベルの攻撃って反則じゃねえか?
「あの世界からサトーのサポートをしていた時もレベルアップしていたの」
ゲームのキャラでないシオがどうやって経験値をためたのだろう?
少し疑問にも思ったが、それより…いま俺、声を出していなかったよな。
なのに、シオの的確な返事。
「何となく、サトーの思いが伝わってくるの」
もしかして俺の考えが分かる、のか?
「ふふっ」
シオは俺の問いを無視して、いきなり両手を広げた。
「こんな魔法も使えるみたい。パルス・バインド!!」
シオの両手の先から黄金の火花を纏った電磁波の網が広がる。
瞬時にしてアイグと、そして俺をも絡め取る。
「うっ、動けねえ…」
一気に上がるボルテージ。
シオ、シオさん? ちょっ、ちょっと待ってくれ。
やばいって。うおっ。
「…アンド、パルス・ショット!!」
ガガガガガガガガガガガガガガッ!!
脳の奥で無数の火花が飛び散った。
「あっ、いけない!」
シオはあわてて魔法を解除した。
もう少し解くのが遅れていれば俺は行動不能に陥っていた。
アイグの奴もたまらず片膝を突いていた。
それからの闘いは一方的なものとなった。
先ほどの失態以降、冷静沈着さを取り戻したシオ。
あの世界からとは違ってリアルタイムで魔法を打てるようになり、アイグの動きを封殺してゆく。
口には出さなかったが、俺の思考が読めるのだろう。
一緒に闘うのは初めてだというのに、俺の斬撃と絶妙のコンビネーションで攻撃が重ねられる。隙のない連携攻撃を受け一度も攻勢にでることのないまま、アイグは再びシオの電磁波拘束に捕らえられた。
俺は深く息を吸う。
それを腹の底に圧縮する。
みなぎる闘気。この一撃が最後だ。
「極大奥義・煉獄衝貫戟!!」
炎の弾丸と化した俺は、一直線にアイグに迫る。
アイグはすでに観念したかのように動かなかった。
しかし、ギリギリのところで渾身の力を込め大きく身を反らせ、胴の両断を回避した。
直進する俺の刃は、仰け反ったアイグの頭部に吸い込まれた。
ガキンッ!
確かな手ごたえが伝わる。
アイグの、その漆黒の兜が宙に舞った…
漆黒の鎧には、豊かな栗色の髪がなびいていた。
切れ長の目に上気して赤みが差した白い肌…
漆黒の兜の下に現れたのは女、いや少女といえる顔だった。
「えっ? お前、女だったのか?」
終わらせるといって、なかなか終わらなくてスミマセン。筆力がないもので・・・話がうまくまとまらないっ! 生地なら丸くまとまるのにっ!