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37.闘気が沸騰する。爆発的に周りの空気が熱せられアイグとともに弾け飛ぶ。

 敵か、それとも味方か?

 まったくもって正体が分からない。


 黒鎧は俺の質問に、その態度で答えてくれた。


 静かに剣を構えた。

 切っ先は静かに俺に向けられた。

 流れるような所作。

 一分の隙もない極限まで研ぎ済まされた殺意。


 こいつは、強い。

 途方もない強者だ。


 お互い言葉を発することなく、戦いの火蓋は切って落とされた。


 そして…


--------------------


 俺はアイグの罠にまんまとはまってしまった。

 「光牢獄ライトプリズン」。光の網に絡まれ動きが取れない。

 回避不能な必殺の一撃が迫る。

 光の奔流に包まれた俺は、もはやと観念したはずだったが…


「ステータス、リブート。

 リザレクト ニヨリ ソセイ カンリョウ シマシタ。」


 続いて流れた無機質な音声。

 それは絶対にあってはならない文言もんごんだった。


「シオ ガ リザレクト ヲ トナエマシタ」


「何故だ! シオ、何故リザレクトなんだ!

 うおおああああああっ!!!」


 それは、かつて俺がシオに使った禁断の自己犠牲のスペル。

 天を仰いだ俺は、呪いの言葉を放つがごとく咆哮した。


 「こちら側」に来るのは、俺だけでよかったんだ。

 シオは…シオまでがこの世界に巻き込まれることはなかったんだ。


 復活した俺を見て、間合いの外から様子を伺っていたアイグ。

 激しく動揺する俺に好機を見出したのか、漆黒の鎧を駆り肉薄する。

  

 俺は我を忘れた。


「お前さえいなければっ!!」

 怒りというものがあれば、そのすべてを奴にくれてやる!!


 闘気が沸騰する。

 周りの空気が爆発的に熱せられアイグとともに弾け飛ぶ。


 俺は分かっていた。

 自らの力のなさがシオをこんな目にあわせたことを。

 愛すべき存在を守れなかった。

 それは、この眼前の男の強さに俺が遅れをとったからだ。

 腹立たしかった。

 悔しかった。

 そして、悲しかった。

 渦巻く気持ちすべてを怒りと化して、奴にぶちまけた。


「極大奥義・煉獄衝貫戟れんごくしょうかんげき


 それは剣に刻まれた記憶。

 俺は、初めてであるはずの技の名を唱える。


 闘気が一気に膨張し、体ごと炎の弾丸となって奴に突撃する。

 同時に奴の胴を切断するように水平に飛天紅戟をなぎ払う。

 剣技から発せられる衝撃波とほぼ同速に達した俺の身体が一体となった一撃は、空気を切り裂き、圧縮し、雷鳴がごとく大音響を響かせた。


 だが、アイグには届かなかった。

 怒りに任せて猪突猛進する愚かな一撃。

 闘牛士のごとく、紅蓮の一撃が達するまでの瞬時に軌道を見抜き、まさに、ひらり、という言葉でしか表せないような鮮やかさでその一撃を回避して見せたのだった。


 空振りに終わった極大の一撃。

 そのリスクはあまりにも大きかった。

 大技の反動で、次の動きが取れない。

 いなされ、体勢が崩れたまま無防備な姿をアイグにさらしてしまった。


 今度こそ、もう避けられない。

 俺はこの世界での死を覚悟した。


 ためらいもなく、アイグは光来瞬戟こうらいしゅんげきで切り掛かる。

 輝きを放ちながら迫る凶刃。

 絶望の一撃は俺に達してしまった。


「シオ、すまない…」


 後悔よりも、謝罪の言葉が最後となった。



 ・・・かと思われたが、視界の外で黄金の柱が立ち上るのが見えた。


「あきらめてはダメよ!!」


 飛び散る火花。アイグは直前で太刀筋を変え、その電磁派系魔法パルス・ウエーバーを切り裂いた。


 その声は聞きなれた、ああ、シオの声だった。

本日2話目です。一話を長くすればよかったのですが、個人的に長いのは苦手なので・・・。さて、サトーとシオの物語、もう一息です。

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