30.巨大で鋭利な光の柱が襲い掛かる。それは地面に突き刺さり、岩石が飛び散った。
間合いの外から放たれるアイグの剣撃。
先ほど聞こえた声は幻か?
津波のように襲い来る光刃。それと同時に光の魔法をぶっ放して来る。
回避するのに手一杯で、そのつぶやきを確かめる術もない。
魔法はほぼ無詠唱。巨大で鋭利な光の柱が何本も俺に襲い掛かってくる。それら一つ一つが、俺が持つ最上位の術に匹敵する速さと威力を見せ付けている。俺の周囲に連続して着弾する。地面に突き刺さり、岩石が飛び散る。
流麗でいて凶悪なアイグの連続攻撃。徐々に受けのタイミングが遅れ、体を掠ることが多くなる。
俺が窮地に陥るようにアイグの攻撃が組み立てられていることは分かっているのだが、どうしても抜け出せない。
焦りが動きを阻害する。これは、避けきれない・・・アイグにとっては最大の好機到来か。歯噛みしながら、奴が光来瞬戟を一際大きく振りかぶったのを視界に捉える。
これまでで最も強大な一撃。
その光の剣撃を無防備に左腕に喰らってしまう。瞬時に蒸発するかのように鎧気が弾け飛ぶ。鎧そのもので、直にその衝撃を受け止めるしかなかった。
「ぐおおおっっ」
ギシギシといやな音を立てきしむ鎧。凶暴な剣撃を何とか耐えしのぐ。
鎧を破壊されることはなかったが、体ごと持っていかれそうな衝撃に歯を食いしばって耐えた。
「一撃で2割持っていかれるのかっ!」
モニターに表示された体力ゲージがごっそりと削られている。
5発食らえば終わりか・・・さすがに五大元素剣、その威力はすさまじい。
アイグは大技を放ったせいで、攻撃に若干の空白ができている。
気を引き締め、右足を半歩前に出し半身になって構え直す。
「さあ、反撃の時間だ」
再び放たれ始めた攻撃に合わせて剣を振り払う。
相殺された双方の攻撃は衝撃波をなし大気を揺らす。
かわされた光と炎の剣撃は、周囲の木々をなぎ倒し、或いは岩を砕く。
幾筋にもえぐれ、至る所で陥没した大地。
飛天紅戟と光来瞬戟。元素剣同士の激突はまさに「災厄」と呼ばれるにふさわしい状況を作り出した。
相変わらず、ヤツの方が攻撃力は上だ。剣撃にせよ、魔法にせよ。攻撃を剣で受け止めるのだが、受けきれず体勢を崩されてしまう。
そんな状態で致命的なシーンを迎えていないのは、ひとえにシオのサポートによるものだ。それなりの時間を置いてなのだが、的確なタイミングで放たれる電磁波系魔法の攻撃で、俺を助けてくれている。
一進一退の魔法と剣の攻防を繰り返しながら、右回りに徐々に間合いを詰める。
唐突に、何かのタイミングで双方の動きが止まった。
「スキあり」
そう見たのは、アイグも同様だったようだ。
何とか再開いたしましたが、相変わらず何のことやら。
パンの話に戻したいという気持ちもあるのですが・・・
とはいえ、このお話を途中で切るのも忍びないので、話が一区切り付くまで頑張りたいと思います。すみません。あとしばらく、お付き合いくださいませ。




