28.灼熱の蜃気楼をまとった光の奔流。シオの忠告、サトーの技。
掲げられた左手に光が収束する。
一瞬で直視できないほどに光量が増幅され、白い輝きを帯びはじめた。
「ライトウォーム!!」
攻撃魔法のスペルなのだろう。
アイグは高らかに唱え、左手を素早く振り下ろした。
光の塊が帯をなし空間を切り裂く。
灼熱の蜃気楼をまとった光の奔流。
直撃すれば、だだではすまない--死の一撃が俺に迫りくる。
「ふんっ」
俺は愛刀「飛天紅戟」を力任せになぐ。
切り裂かれた空間が圧縮され、衝撃波となって前面に押し出される。
響き渡る轟音。全身に降りそそぐ熱風。
俺の一撃は灼熱の光線をかろうじて相殺した。
しばしの静寂が訪れる。
互いに間合いを計りながら牽制しあう。
「これじゃ、らちが明かないな」
全身を黒い甲冑に収めた姿。
俺の前に立ちはだかる奴の名はアイグ。
分厚い装甲の下にあるため、表情すらうかがい知れない。
ヤツは先ほどから、何度も魔法での攻撃を仕掛けてくる。
どうやら、まず魔法で先制し敵の戦力を削るタイプのようだ。
雑魚といえど、直接切り結ぶと意外な反撃をくらうことがある。
俺も格下相手にリスクを負いたくないので、同じ様にまず魔法をぶちかまし蹴散らすことが多い。
逆に言えば、剣を抜くこともなく遠隔から魔法攻撃を繰り返されているこの状況は、俺が奴に雑魚扱いされてるってことでもある。
「なめるなよ。目にものをいわせてやる」
毅然と、一歩、踏み出す。
ヘッドギアに到着されたモニター越しに、にらみつける。
ゆらり、とまったく隙のない挙動で俺の前に立ちはだかる黒甲冑の頭部を視線が捉える。モニターの端には「アイグ」と、その名が表示されている。
剣を腰だめに構え、いざ踏み込もうとした瞬間。
この殺伐とした空間に、まったくもって似合わない軽やかな声が俺を引き止めた。
「サトー、待って。
まだ早いわ。敵の腰にある剣を、よく見て」
俺のパートナーであるシオの忠告で俺は何とか踏みとどまった。
が、次の瞬間、またもや光の奔流が迫り来る。
奴は一瞬の空白も許してはくれないようだ。
腰だめにしていた剣を居合い抜きのように高速に振り出した。
繰り出される炎の衝撃波。
ドゴォオンンン
光と炎の激突。腹に響くような衝撃音が周囲の大気を振るわせる。
もう何度目なのだろうか。
いっそ、俺としては突貫して斬り合うのが本望なのだが…。
シオがそれを許さない。
闘気を敵に向けて放ちながら、言われた通りに奴の腰に視線を移す。
その腰に刺さる剣を見れば…ああ、さすがに俺も警戒を禁じえない。
向けられた視線さえも断ち切るような禍々しさと神々しいさを併せ持つその刀身。恐らくあれは…この世に5つしかないとされる最強剣だろう。
「シオ、奴の剣なんだが…」
「あれは光来瞬戟でしょう。そう、五大元素剣って出ているわ」
俺の質問を遮ってヘッドギアのイヤホン越しにシオの応答が届く。やはり、か。
「光の属性を極大に極めた者が装備できる究極の剣のひとつ、とあるわ」
何だか「極」の字が多いなと思った瞬間。
突然、奴が一瞬で間合いを詰めてくる。肉薄しながら右手を剣の柄に掛けるのが見えた。
いきなりの剣戟。「させるか!!」
飛天紅戟の狙いを奴の右手に定める。
防御用に使う鎧気を闘気にシフト。全力を載せ大地を踏み込む。一歩、二歩。その踏み込みは大地をえぐる。一気に超常的な速度にまで加速された剣尖は、赤銅色の輝きを放ち奴の右手へと迫る。
岩石さえ溶かしうるような熱量の真紅の輝きを放つ一撃が達すると見えた、その刹那。
「やばいっ」。俺の背中に悪寒が走った。
条件反射的に俺は剣を引き、飛び退いた。
深い考えなどなかった。
回避。
ただ、その2文字が頭を、体を支配した。
見えなかった。
奴の右手はすでに抜き去られていた。
黒甲冑の男が天を突き刺すように掲げるは、まばゆき五大元素剣「光来瞬戟」。
俺の手に握られるは、紅蓮の五大元素剣「飛天紅戟」。
世界の災厄とまで呼ばれた五大剣同士の戦いが、ついに始まったのだ。
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何のことやら分かりませんが、とにかくパン作りのエッセーの一環です。
書いたことのないジャンル・・・
いつもそうですが、どうなるのか当方にも分かりません。
行き当たりばったり。相変わらず、すみません・・・。




