4.苦しい戦いの末に苦いメロンパン。そして食パン作りの道へ。
「だらだらしてもいいじゃない。生地だもの。」
こんな、どこかで聞いたような感じにのびきった夕張メロン果汁&果肉入りメロンパンの生地を何とか更生させようと、強力粉やイーストを行き当たりばったりに投入したのですが、彼は(なぜか人になっていますが)まったく立ち直らないまま。
恐らく2時間くらい経ったと覚えています。
ランチェスターの法則だか孫子の兵法だか忘れましたが「戦力の逐次投入」は決してしてはならないことをパン作りで再認識しました。
仕方がない……
手にした「あれ」は、先立って作っておいた上に乗せるクッキー生地。
こやつは余分な果汁などが入っていないノーマルレシピ。
我々の苦汁に満ちた戦いをテーブルの端から静かに見守っていたのでした。
この男ならできる(なぜか性別は男に)。
大逆転はムリだろうが……
きっと、この戦いに終止符を打ってくれるはず。
理由などまったくないのですが、強引にそう確信して、アヤツの上にコヤツを覆いかぶせました。
そしてレンジに戻し、しばらく待ちます。
作っているのはもちろんメロンパン。
ということで、クッキー生地にはナイフで格子状の切り目を入れていました。
それが原因で土台の生地がさらに伸びてゆくのに従って、上に乗せたクッキー生地が大陸大移動のごとく分解し、四角いパーツに切り離されてしまったのです。
ううっ。
平べったくなった生地の上に、ばらばらになったクッキー生地。
その姿は、まるで100倍の重力に負けてべしゃりとつぶれた亀のようです(実際に見たことはないですが)。
なんだか、コワイヨウ。
コワイいながらも、焼きりゃんせ、焼きりゃんせ。
姿形は悪いけど、何とかメロンのいい香りがしています。
というか、かなり濃厚な香りが台所に充満しています
焼き上がり。冷ましてから恐る恐る口に含みました。
うわっ、苦い。
それも、むせ返るような苦さ。
Why? メロンって甘いよね?
……今思えば、恐らくイーストの入れすぎが原因だったのでしょう。
生地がふくらまないからといって、かなりの量を入れたからです。
クッキー生地は、単体で食べるとバター風味で、そこそこのオイシサでした。
しかし、下の生地の香りというか臭いが付いて、ちょっと残念な感じに。
苦い土台を食べて苦しくなったら、クッキー生地を食べて……。
家人は「食べられなくはない」と言ってくれましたが、あまり手をつけませんでした。そりゃそうですよねぇ……
食べられないことはないので、製造者責任を取って完食いたしました。
この失敗は当方に苦い経験となりました。
そして、菓子パン作りへの「浮気心」を抑えて食パンオンリーのパン作りに勤しむきっかけになったのでした。
ところで、苦いと苦しい、辛い(カライ)と辛い(ツライ)って、何だか関係が似てますね。関係のない話ですが。
長くなりすぎてすみません。