22.コーボーは目覚めた。そして、お砂糖にインベルの大ハサミで切りかかった。
イースト。英語で書くとyeast。何か本格的ですね。
スーパーの製菓材料コーナーに、よく粉末タイプのドライイーストが置いてあります。袋を開けると、粉薬のような細かい顆粒状の茶色い物質。
一見、砂のようにも見えますが生き物です。こやつは。
生物分類的にはキノコなどと同じ「菌」に属します。
何かを食べて、それを分解、体内に吸収、そして排泄します。
自分で動くことはできませんが・・・これはキノコも同じですね。
さて、酵母の働きを寸劇?でみてみましょう。
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「腹減ったなー」
コーボーはつぶやいた。
どうやら長い眠りに付いていたようだ。
徐々にはっきりしてくる意識。
コーボーはあたりを見回した。
「何か食いもんないかな~」
コーボーは思い出す。
そう、あれは数カ月前。
毎日それなりに楽しく暮らしていた。
それがある日を境に突然、水が与えられなくなったのだ。
徐々に干からびていく体。
「くそっ。このままじゃミイラになっちゃうよ。
しかし、眠いな。いや、ここで眠ってはいけない・・・んだけ・・・ど・・・
・・・ZZZ」
カラカラになって眠りについたコーボー。
これが我々人間ならば、その眠りは永遠のものとなっただろう。
しかし、コーボーは違った。
体に水が触れた瞬間、再び目覚めることができたのだ。
「腹減ったな~」
コーボーはあたりを見回す。
だが見回すだけで、自分から動くことができないのだ。
コーボーがせめてゾウリムシのように自由に動けたら、と恨み節を吐き出したかどうか定かではないが、少し鋭くなった目付きで辺りを見回したその時、目の前に大好物のお砂糖が降ってきたのだった。
「あっ、あれはお砂糖!」
コーボーの口元が緩む。鋭かった目付きがやわらぐ。
すかさず腰にぶら下げていた大きなハサミを構える。
このハサミ「インベルの大ハサミ」という名を持つ逸品だ。
「お砂糖は、僕の口には大きすぎるんだよね。
インベルちゃん、頼んだよ」
コーボーはインベルの大ハサミで切りかかる。
バチリ、という音が聞こえてきそうなくらいに砂糖が両断された。
「よし、やっとこの大きさなら食べられるぞ。
じゃあ、いただきまーす」
コーボーは切り分けた砂糖の片割れをほおばった。
それは数カ月ぶりの、ささやかな幸せを運んでくれたのだった。
(続く)
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【ドライイースト】
パン作りに最適な酵母を工場でたくさん育て、それを乾燥させて作ります。乾燥させても「仮死状態」のようになって、再び水などを与えると復活します。というか、パン作りに最適で、かつ、乾燥にも強い酵母を選りすぐってドライイーストとして使っています。
【酵母の食べ物】
基本的にブドウ糖や果糖といった単糖類を食べます。
ざっくりいえば砂糖はデッカイので小さくちぎってやらないと酵母は食べられないのです。
【インベルターゼ】
砂糖をブドウ糖と果糖(いずれも単糖類=酵母の食べ物)に分解する酵素です。インベルターゼは酵母自身が持っています。
コーボー、何のことやら・・・
何とか話を続けたいとは思いますが、書けるかな?




