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113.パン作りは人を育てるのと似ている。


 おいしいパンを作りましょう。


 パン作りの工程をもう一度おさらいしておきましょう。順に書き出しますと、


 材料混ぜ合わせ→捏ね→1次発酵→ベンチタイム→2次発酵→焼成→冷却→切断→食べる


 となります。パン作りの工程を一通り追ってきて感じたのは、レシピというのは本当によく考えられたものである、ということです。パンに関して言えば、主材料である強力粉のデンプンとタンパク質の特性を十二分に発揮できるような水分量▽砂糖・塩・油脂などの種類・量▽捏ね時間・強度▽加温・加熱の程度・時間などが「レシピ」として記されています。これはパンに限ったことでなく、レシピは多くの先人たちの試行錯誤の結晶であり、記された作業は理由や理論にきちんと裏打ちされているということを、ひしと感じました。


 さて、おいしいパンを作るうえで大事なことは何か?


 極論すると「しっかりしたグルテンの膜を作り上げる」ことになります。加えて「イーストを活発に発酵させる」となります(念のため書きますが、当方が目的とするパンは丸型食パンです。なので、長時間発酵させるパンなどの場合は冷蔵庫などでじっくり発酵させることになります)。活発なイーストの発酵によって発生する炭酸ガスの気泡をしっかり受け止める柔軟性に富む生地は、ふっくらふんわりと焼きあがります。


 そんな生地の状態にするためには……もちろん、先に書いた通りレシピを守ることが重要です。当方は、まず基本をしっかり身に付けたいと思い、敢えて食パンのみを作ることにしました。捏ねの仕上がり具合(いまだに上手く仕上がらないことが多いのですが)や発酵、焼き上げ温度……基本のレシピを守って何度も繰り返していると、いつの間にか失敗することが少なくなりました。


 とはいえ、酵母は生き物です。そして、水の温度、室温、粉の状態……一見、同じように見えても毎回パン作りの「条件」が異なっているのも事実です。


 同じ分量なのに生地がまとまらない……

 捏ねの強さを変えていないのに滑らかにならない……

 こんがりとしたキツネ色の焼き色が付かない……


 ああ、一体どーしたらいいの?



 知り合いのケーキ職人さんにお話を伺った時のことです。

「シュークリームの皮って、毎日焼き上がりが違うんです」

 もちろん、すべて商品として出すには十二分の品質を持った焼き上がりです。ですが実は、これは! といえる仕上がりになることは一月に数度あるかないかとのこと。

「でもね、そこが面白いんですよ。気温や湿度、いろんなことを考えながら生地を混ぜて、焼く。オーブンの扉を開ける瞬間が、毎日楽しいんです」

 

 これはプロの方のお話なのですが、趣味でパンを焼いている当方にとっても大変参考になる内容でしたので紹介いたしました。

 

 自らの技量をもってして、「材料」の良さを引き出す。そして、あせらず、「材料」の力を信じてその結果を待つ。楽しみに待つ。


 これって何かに似ていると思いませんか?


 言葉は少し違うのですが、「材料」の部分を「子供」や「後輩」あるいは単に「人」という単語に置き換えてみましょう。すると……そう、



 パン作りは、人を育てるのと似ている。



 連載冒頭の言葉を以って、パン作りのお話を締めさせていただきます。

 読者さまにはずっと支えられっぱなしでした。ただただ感謝の言葉しかありません。

 最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

 

 パン大好き



 



 長い長いP.S.


 本連載ではパン作りの工程を紹介するとともに、それぞれの工程の特徴をモチーフとした創作などでお話を進めてきました。なかなか筆が進まない時もありましたが、ようやく無事に書き終えることが出来ました。作者としてもホッとしております。


 最後にこの連載を陰に日向に支えてくれた登場人物たちからのメッセージです。一部、人間でないものもいますが……聞いてやってくださいませ。


グルテニン「グリとは強い友情でつながっています!」


グリアジン「グル、粘り強さとしなやかさも大事だぜ!」


グリアジンの父ちゃん「迷ったならばパンを食え!」


青の森のはずれの村の村長「試されるのはパンを想う心じゃ」


聖なる水を守る精霊のケウ・フォーチ「右手にパンを。左手にもパンを!」


グリの2軒隣に住む幼なじみの女の子のコルネ「ねぇ、わたしの出番は?」


グルと一緒に暮らしていたお姉さんとも呼べるレザン「コルネ、もっと作者に言ってやりなさい!」


大人になってバーを訪れたレザン「は~い、レーズンパンよ。あ~んして!」


同じくバーでレザンと飲む大人になったグリ「レザン、俺は……」


ミーちゃん「パンの味わいは酸味サンミーも大事だよ」


ピヨミー「限定もののヨンミーもよろしくピヨ」


裂ぱくの気合でパンを切る人「パンを斬るのではない。パンに斬られてもいけない」


コーボー「僕はお砂糖みたいに甘いパンが大好きなんだな」


アミはん「ただ眼前のパンを断つ。コーボー、酒を! あのシュワッとするやつ!」


プロテア「そこのタンパク質よ! どかぬなら切り伏せてまかり通るっ!」


デンプーン「プリプリの蒸しパンもおいしいよね」


グルテーン「カリカリ固めのバケットもいいよ」


シオ「塩パン? またエッチなパンを想像したでしょ!」


サトー「いてっっ電撃はよせ! ってどんなパンだよ? パン、ツ? ぐはぁ!」


アイグ「たったまたまパンを買っただけよ。別に一緒に食べたい訳じゃないんだから、ね……」


ミズ「お姉ちゃん、クリアしたゲームばっかりしてないで一緒に塩パン食べようよぉ……」


赤装束の男(巨大な赤竜)「我がブレスでパンを焼けだと? ふん、寝息で十分だ!」


紺碧の海原で純白の小船に佇み水平線を見つめるクロワ「三日月のようなクロワッサンが、好き」


風の咆哮が渦巻く岩山の頂で目を閉じ構える白髪の老剣士のハパン「輪っかの形のライ麦パンじゃな」


乾きの大地で巨大剣を地面に突き立て天を仰ぐ戦士のミッシュ「ライ麦サイコー! あとワインな!」


巨鳥アマドリ「こんがり焼き色の付いた香ばしいトーストはどこだ!」


赤いソールのハイヒールの女性「ねぇマスター、このパンは何?」


バーEmのマスター「あちらの方からです」


山上さん「皮だけのメロンパンってバタさん知ってます?」


バタやん「皮しかない? そりゃカワってるね! って、あの娘にパン渡してどうする気だい?」


バタやんの奥さん(カスミさん?)「寒っ! オヤジギャクの寒波が……かんぱ、乾パン?」


村中先輩「おい鳥島! あのパンもこのパンもどのパンもぜんぶ食え!」


安田部長「ダメだ村中君! それはパンハラスメントだ!」


喫茶店のマスター「あんパンとあんパンとあんパンとあんパンでございます」


浜崎さん「薄皮あんパンね。マスター、どうもありがとう」


鳥島くん「えっ? 両端から一緒に食べようって? それは甘すぎるって……」


法事が苦手なき~ちゃん「誰にも話し掛けられないようにロールパンでも焼いていよう……」


法事によくいるおばさん「まぁき~ちゃん、ちょっと見ない間にこんなに焼き目がついちゃって!」


若き弁護士の牛岡「異議あり! 焼きそばパンに紅ショウガは必要でありますっ!」


国王「日清製粉さんの最強力粉『スーパーキング』。一度試したいものじゃな」


オ・アシス「愛するパンの記憶は消えないぜ!」


ロッド「ああ、私も一緒にパンが食べたいなぁ……」


レガート様「ならばロッドよ。これまでの働きに免じて、お前も人間に戻してやろうぞ」


クワードの姫のソラリス「この木の実のパン、習ってもいないのにレシピが分かるのはなぜかしら?」


ミーア「アシスさま、きょうもクルミパンの作り方を教えてくださいねっ!」


モムル「ミーアよ。たまには俺のためにもパンを焼いてくれ!」


イラードの村長「モムルよ、妬いてはいかんぞい!」


幼さを残す小さな兵士「炎の魔法で焼いたパンって、食べても大丈夫かなぁ」


闇の眷属アリュクス「そなたならパンの持つ意味が分かるであろう。何がパンでなく、何がパンなのか」


年若き兵士「いやいや、パンはパンでしょ」


きゅうり嫌いの俺「とりあえず、パン!」


岡崎「おいおい、まずはビールを頼めよ。パンはそれからやで」


彼女に告白しようとしている俺「ぼ、ぼ、僕はきっ、き、きみがす、す、す、スコーンっておいしいね」


山下「下を向くな。どすこい。きっと彼女もスコーン好きだって。ところでスコーンってパンだっけ?」



一同、起立。

一同、気をつけ。

一同、礼。


「ありがとうございました!」



 5月18日。そう、今日は誕生日。

 パン大好き


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