112.ミミを澄ませば、パンの声が聞こえる。
パンを切れば……あとは食べるだけですね。「96.パサパサのパンも水を加えてトーストすれば、再びふわりとします。」で紹介させていただいたように、パンのデンプンは水分をどんどん放出してしまう(デンプンの老化)ので、霧吹きなどで水分を補給してから焼くとふっくらしておいしいトーストとなります。
2、3日で食べきれないなら、保存は冷凍がベターです。デンプンが水分を保持したままの状態で冷凍されるので、解凍しながら焼き上げると、それらの水分がデンプンの隙間に戻って、程よくふっくら香ばしい焼きたてパンのような状態となります。パンが乾燥しきってから冷凍するよりは、新鮮(?)なうちに冷凍した方が焼きあがり状態もよくなります。
さて、ちょっと話が横道に逸れるのですが……パンの耳についてこれまでに書いたような、書いていないような。ざっと調べてみたのですが記述を見つけられませんでした。連載の大詰めですが紹介しておきましょう。
王様のミミはロバのミミ。パンのミミは……?
みみ【耳】 出典:デジタル大辞泉
1 頭部の左右にあり、聴覚および平衡感覚をつかさどる器官。
……(中略)……
3 耳のように器物の両側についている部分。取っ手。「鍋の耳」「水差しの耳」
4 紙や食パンなどのふち・へり。……(後略)……
「みみ」をネットの辞書で調べてみますと、上記のような内容でした。
オラオラ、パンさんよお!
今日こそ両耳そろえて借金、キチンと払ってもらおうかぁ~!
などの場面で使われる(もちのろんで実体験とは異なりますが)耳は、お金などの端っこを指していて、お金の両端をキチンと揃えて数えることからきています。
さてこのパンのミミ、英語では身体のどの部分として表現されるでしょうか? 4択問題です。
①つめ(nail)
②はな(nose)
③ひじ(elbow)
④かかと(heel)
正解は……ジャラジャラジャラジャン!
④のかかとでした。パンのミミは英語では「heel of bread」と表記するそうです。耳もかかとも体の端という意味と、ちょっと出っ張っている部分という意味合いを持っているようです。
パンのミミは、本連載で何度も書きましたが、生地の焦げ目ではなくて焼き目となります。タンパク質と糖分を含んだ生地を加熱することで起きるメイラード反応によって生地が茶色に変わり、同時にさまざまな香ばしさを持つ芳香が発生します。150度以上の高温では、このメイラード反応に加えて加熱された砂糖によるカラメル化反応が起き、これまた良き香りと味わいが加わります。パンのミミはこれらの反応が凝縮されたパンの風味・風合い・うまみの源といえます。
固いしパサパサしているしチョッと苦いし。
でも、ミミをかみ締めて、そっと耳をすましてください。
そこにはきっと、豊かなパンの世界が広がっていますよ。
お読みいただきありがとうございます。次回で本連載も完結となります。1年と半年足らず、パンを書き続けて20万字超。時々脱線(いやほとんど脱線?)していましたが……みなさまのお支えがあってこその連載でした。ありがとうございます。
次回は最終回となります。登場人物(一部「人物」でないキャラクターもいますが)オールキャストで「おいしいパン作り」をお伝えします。投稿は5月18日午前5時です。
まだ最後ではないですが、言わせてください。
感謝、感謝、感謝! パン大好き!




