103.メイラード反応とカラメル化。パン生地を茶色く変え、香ばしい匂いで包む。150度のマジック。
150度。一気にヒートアップしました。衣を熱した油に入れて、一度沈んでからふわりと浮かんでくるのが150度。衣は衣でも、これは揚げ衣。てんぷらやフライの話ですね。揚げ物の場合、150度は低温にあたるそうです。野菜を色よく揚げたい、根菜類にじっくり火を通したい時はこの150度前後で揚げると良いそうです。
余熱でなくて余談ですが、我が家のオーブンレンジは上下に配置された電熱線がヒーターとなっています。加えて、庫内の奥の壁に送風ファンがはめ込まれていて、熱風を循環させる仕組みとなっています。回転皿に載せられたパン生地はクルクルしながら熱風を浴びるので、焼き色がムラなく付いて焼き上がってくれます。
さて、生地の温度が150度を超えるあたりから表面がキツネ色を帯び出します。これは、糖とタンパク質を含む物質を加熱したときに起きる褐変反応、そう、あのメイラード反応です。このパン連載の41話「砂糖は水分を抱え込みデンプンに取り込まれます」~47話「それは、まさに一目惚れだった。アマドリ転位…天鳥?」で紹介させていただきました。
メイラード反応では、生地が茶色くなるのと時を同じくして、香ばしい匂いが発生します。ああパンを焼いているんだなあ~~幸せだなあ~~と感じるあの香りです。こんな風に浸っているのは、私だけかなぁ……
パンの生地が加熱されると熱風が当たる表面に多くの熱が加わります。220度設定で予熱し、調理をはじめてから数分経つと、白く瑞々しい肌理の細やかな生地の所々に茶色のシミが発生します。なんだかイヤな表現でスミマセン。一方で、生地内部にはなかなか熱が伝わりません。特に中心部にいたっては、加熱スタートから10分位経っても100度には達していません。
表面はメイラード反応を起こしながら、水分が蒸発し、茶色くて固い層が形成されます。この固くなった部分をクラストと呼びます。クラストと言うと何だかかっこいいですが……慣れ親しんだ言葉で言えば「パンのみみ」のことです。内側に比べて温度が高くなる皮の部分は、このようにして茶色く固い「みみ」が出来上がります。
さてさて、ここでお砂糖の話です。お鍋に砂糖をこんもりと盛ります。それに水をちょびっと加えて加熱すると……白い粒子の状態だった砂糖は溶け出して、水のように透明な液体になります。さらに熱を加えてゆくと、徐々に茶色く変色しはじめます。これまた甘く香ばしい、魅惑的な匂いが立ち込めます。この加熱によって砂糖が茶色くなる反応のことをカラメル化といいます。メイラード反応と同様に、カラメル化も150度位で発生します。
メイラード反応とカラメル化。いずれもパン生地を茶色く変え、かつ、香ばしい匂いで包み込みます。生地が150度を超えたあたりで、パン独特の豊かで深い風味が生まれるといえるでしょう。180度位まではこの2つの反応が穏やかに続くようです。そこからさらに加熱して、200度を大きく超えてしまうと……今度は生地が黒ずんできます。これは褐変反応でなく生地の炭化、つまり焦げた状態となってしまいます。