97.デンプンの老化について考えるべく簡単な実験を行いました。
会社から帰ってきたパン大好き。なにやら怪しい動きをしています。
手には青いプリントが映える包装の鮮やかな直方体の物体。
よく見ると漢字2文字が……
「超熟」
デジタル量りをテーブルに置き、一眼レフのデジカメもその横に並べて置きました。ゴトリと重量を感じさせる音が台所に響きます。
おもむろに「超熟」の袋を破り、その中から、白くて四角くてフワフワしていて厚みが数センチあって周囲が褐色でやや固くなっていて香ばしい香りのする物体を取り出しました。
いつもの儀式のように、その物体に鼻を近づけ、深く息を吸い込み匂いを確認した後、デジタル量りにそっと載せています。
表示された数値をメモした直後、くるりと背を向けたパン大好き。いきなり冷凍庫を開けて、四角い物体を放り込みました………
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いきなり思い立ち、デンプンの老化について考えるべく簡単な実験を行いました。
まずは、コンビニにて食パンをチョイス。なるべく添加物の少ないものを……ということで「小麦本来のおいしさ。」をうたっているパスコさんの「超熟」を購入しました。
5枚切りのパンを1枚ずつデジタル量りに載せ、重さを記録します。そして、
①45度に保たれたオーブン庫内=約45度
②室温である台所のテーブルの上=約15度
③冷蔵庫内=約5度
④冷凍庫=約マイナス15度
の4カ所にそれぞれ放置してどれくらい乾燥するか、すなわち、水分を放出するかをチェックしてみました。
2時間半、放置した後再び重さを計測します。以下に結果を書き出します。
①オーブン 78.3→67.8グラム 86.59%(▲13.41%)
②室温卓上 71.6→69.2グラム 96.65%(▲ 3.35%)
③冷蔵庫内 72.2→69.9グラム 96.81%(▲ 3.19%)
④冷凍庫内 72.0→71.2グラム 98.88%(▲ 1.12%)
数字は前から実験開始時の重さ、終了時の重さ、終了時/開始時の重さ、です。
45度という高温状態では重量比で13%分の水分が減少していました。一方、冷凍庫のパンはわずか1%の減少に留まりました。②の室温と③の冷蔵庫内はほぼ同じの3%減でした。
生地の手触りに関しては、①は両面ともに表面が固くなりザラザラとした感触に、②は上面の表面のみがザラザラ、③は上面のみザラザラに加えて全体的にパンが固く締まった感じに、④は全体的にコチコチ、といった具合でした。
予想では③がもっと激しく水分を放出してしまうと思っていたのですが、意外と室温の②と同じでした。オーブンの環境(45度)はパンにとって過酷なようで、一気に老化が進んでしまいました。
一方で、冷凍庫の④。わずか1%しか減っていません。パンのパサつきの原因となるデンプンの老化はデンプン内から水分が放出されることで起きます。冷凍庫、それも急速冷凍トレーに載せられたパンは一気に0度以下に冷やされ、放出されるはずの水分がそのまま凍ってしまった形となっています。
実験のまとめをしますと、パンは温蔵はご法度。そして室温・冷蔵ではなく冷凍で保存するのがよいことが示されました。冷凍パンは一見コチコチですが、トースターなどで解凍しながら焼き上げると、再びふんわり感が戻ります。ただし、水の分子が凍結により凝縮することでデンプンの組織が傷ついてしまうので、元の完全な焼きたて感が再現される訳ではありません。