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96.パサパサのパンも水を加えてトーストすれば、再びふわりとします。


 パン作りの話のはずが、小・中学校「生物」の授業のようになってきましたが……消化について、もう少しだけおさらいしておきます。


 そもそも、消化とは……いつもながら、goo辞書さまを引用させていただきます。



しょう‐か〔セウクワ〕【消化】 出典:デジタル大辞泉

[名](スル)

1 生体が体内で食物を吸収しやすい形に変化させること。また、その過程。(以下略)



 昨今は小学校? 中学校?で習うのでしょうか。パン大好きはいつ教えてもらったのかすら分からないくらい記憶が消化されているのですが。そんな、消化の工程をざっと挙げますと……


 まず、口での咀嚼そしゃくは食べ物を小さく細かく破砕。あわせて唾液だえきが分泌されます。唾液には消化を助けるエキスパートである「酵素」のアミラーゼが含まれています。アミラーゼは、食べ物中のデンプンを分解して麦芽糖(単糖)にします。


 食道を経て、胃で食べ物は揉まれます。胃では強力な消化酵素である胃酸(タンパク質分解酵素のペプシンを含んでいる)とともに混ぜられ、粥のような状態になります。次いで十二指腸では胆汁たんじゅう膵液すいえきが加えられます。いずれも食べ物をより小さな単位に分解して、体に取り込みやすくする働きがあります。そして、小腸で糖やアミノ酸、脂肪などが栄養として体内に吸収されます。


 α化(糊化)していない生のβデンプンは、組織の結合が強固すぎてアミラーゼなどが分解することができません。一方、加熱とともにデンプンの分子内に水分が入り込み構造が緩んだαデンプンはアミラーゼで分解、栄養として利用することができます。


 パンを焼くという根本的な理由は、小麦の主成分であるデンプンを消化・吸収するために、水分とともに加熱してα化させる必要があるから、ということになります。


 

 さて、糊化したデンプンについてです。パンは焼き上げた当日、ふっくら&モチモチしているのですが、翌日以降、急速にパサパサになってしまいます。どうでもいいのですが、我が家ではこの状態を「パッサーパッサー」と呼んでいます。


 水分を失ったパン生地はボソボソしていて、口当たりが悪く、元のおいしさが損なわれてしまいます。この生地のパサボソの主な原因は、デンプンの「老化」にあります。


 一度、水を含んでα化したデンプンは冷えて時間が経つうちに、今度は水分を手放し始めます。具体的にはデンプンの分子同士が再びくっつき合って、その間を満たしていた水分が押し出されてしまうのです。


 デンプン中の水分が失われることにより、パンはどんどん固さが増します。さすがにパンをそこまでパサパサにさせることはないと思いますが、最終的には元の「生」の小麦粉の状態、つまりβデンプンに近い固さに戻ってしまいます。これをデンプンの老化といいます。


 とはいえ、デンプンはゴムのような収縮性をもたないので、一旦水分を吸って大きく膨らんだ構造は伸びきった状態のまま縮んで固まります。こんな風にして再びβ化したデンプンに、水を加えて加熱するとまたα化してふっくらとなりますが、構造が崩れてしまっているので完全に元のふっくらさとなる訳ではありません。


 レンジでチンすればホカホカのご飯ができる、なぜか揃って赤色系統のビニールで包装されている真空パックのご飯は、一度炊き上げたご飯をβ化した状態で店頭に並んでいます。レンジ・湯煎ゆせんで加熱すると、水分を再び取り込んで糊化、モチモチのご飯が再現されます。


 これと同じように、パサパサになったパンも水分を添加して加熱すれば、再びふわりとした食感を取り戻すことができます。パンの表面に霧吹きで水をシュシュシュシュとかけてトーストすれば、かなりふっくら感が回復します。


 えっ、霧吹きがないって? その場合はさっと、水道水にパンをくぐらせてからトーストしてください。ビショビショになる位、水をつけてしまうとフワリを通り越して、ベタリとなってしまうのでご用心をば。



 本編とは関係ないのですが、消化に関する面白い話なので紹介します。

 2010年4月8日、AFP通信社の配信によるニュースです。

 以下に引用いたします。


【4月8日 AFP】日本人の腸が海草に含まれる多糖類を分解できるのは、分解酵素を作る遺伝子を腸内に住む細菌が海洋性の微生物から取り込んでいるためだとする論文が、8日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 フランスの海洋生物学と海洋学の研究・教育機関「ロスコフ生物学研究所(Station Biologique de Roscoff)」の研究チームは、ゾベリア・ガラクタニボラン(Zobellia galactanivorans)という海洋性バクテリアが、アマノリ属の海草に含まれる多糖類を分解する酵素を持っていることを発見した。

 公開されているDNAのデータベースを調べたところ、ヒトの腸内に住むバクテロイデス・プレビウス(Bacteroides plebeius)という微生物が、同じ酵素を作る遺伝子を持っていることが分かった。このバクテリアはこれまで、日本人の排泄物からしか見つかっていない。(以下略)


 海苔を消化できるのは日本人だけだった! この事実もさることながら、特定の腸内細菌(今回の場合はバクテロイデス・プレビウス)を日本人が集団的に受け継いでいるという考え方にも驚いています。


パン大好き



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