「発明スクランブル」
「博士!ついに完成しました!」
「やかましい!ワシはまだまだ20歳代なんじゃから
耳元で大声張り上げなくても聞こえるわい。」
「いやー。ついつい興奮してしまいました。てへっ」
「てへっ、じゃないわい。可愛いけども。コホン、それで何が完成したんじゃ?」
「これです。ついに完成したんです。じゃーん!」
「なんだ?これは?ただの棒にしか見えんのじゃが・・・」
「博士!棒とはなんて酷いこと言うんですか!」
「痛い!殴るなよ。棒と言ったことが暴言というのなら謝る。ほれ、この通り。」
「もー許すのは今回だけですよ。」
「それでこいつは、どう凄いんじゃ?」
「これは水クラスターに合わせて反応して・・・。
固定させる事ができる貴重な機材なんですよ!」
「すまん、もっと解りやすく言ってくれまいか?」
「やって見せた方が早いですかね。水の入ったフラスコの中に、この棒を入れると。」
「おい!人に怒っておいて自分で”棒”って言うな!」
「もー、細かい事は気にしない!ほら見て下さい。」
「なんだこりゃ!棒の周りに水が付いとるな。まるでアイスキャンディみたいじゃの。」
「でしょ?これが水を円柱型に固定する事ができる魔法の様な機材なんです。
名付けて”ウォーター・バー”です。」
「お前。安直だし、”バー”って日本語で主に”棒”のことじゃからな?
機材って言い直しておいて自ら墓穴を迂回ルートで掘りにいくな。」
「だから細かいなー。いちいち、つっかかてくる性格直した方がいいですよー。」
「お主に言われたくないわい!それで?こいつはどう使用するのじゃ?」
「へ?」
「いや、だから。使い道は何なのかと聞いてるのじゃ。」
「そんなの今から考えるに決まってるじゃないですか!」
「なぬ!?」
「いやはやー。私も作って完成したけど、何の役に立つのかさっぱり謎で。
でも、きっと大丈夫ですよ。今は当たり前に使用しているプラスチックも
発見された時は用途が分からなかった、って有名な話じゃないですか。」
「素材の発見と、発明は別問題じゃ。」
「えーん。博士も一緒に考えて下さい。」
「泣き真似をするな。可愛いけども。
そうじゃな・・・。
例えば災害時に海水や雨水に付けると
真水だけ取り出せて便利なんじゃないか?」
「いや、博士。実はこれ真水のみ取り出すとかは無理なんです。
海水に付けたら海水が
雨水に付けたら雨水が棒に引っ付きます。」
「もう開き直って”棒”で押し切る気じゃな・・・。
では、傘はどうじゃ?
最近、風力で雨を弾く傘ってのが実用化になるとかならんとか
話を聞いた事があるんじゃが。
傘の骨部分に、この棒を。。。ぐふっ!
なぜ殴る!?お主が棒って散々言っておったのにワシが棒と言えば殴るのは
どうゆう見解じゃ!?」
「私は良いけど博士に言われるとムカつく!
そう、例えるなら。
自分からは『私の彼氏こんなに酷い奴なの~』って友人に話すけど、
その友人から彼氏の悪口は聞きたくない!みたいな
微妙な女心。分かります!?」
「いや、理解できないし、分かりたくもない!」
「そうそう。博士のせいで話が脱線しましたが、
傘の骨に使用してはどうか?ですよね。」
「人のせいにするな。」
「傘の代用品として使用する場合なんですが
これは触れた場合のみ水分子を引き留めるので
傘の膜の部分も全て棒にしないといけないです。
しかも上から落ちてくる水を吸着させるので
総重量はえらい事になると思われます。
押し潰される危険性があります。」
「なるほどのう。触れた時にのみ定着させる、か。難儀だのう。」
「博士。何か他に良い使用方法ないです?」
「いや。お前は何かないのか?発明した張本人じゃろう?」
「そうですね。39㎝ほどの棒を2本用意してー。ほら!じゃーん、ライ○セーバー!」
「出た!おバカ発言!」
「でも気になりません?通常の竹刀や木刀と違って
この水でできたライト○ーバーで打ち合いをしたらどうなるんだろう?って」
「まあ確かに・・・。気にならんでもないな。」
「じゃあさっそく打ち合ってみましょう!」
「ちょ、バっ・・・やめろ!」
「ありゃりゃ。結局、水しぶきが飛び散るだけでしたね。」
「そうだが、なぜお前はそんな濡れてないのにワシだけ濡れてるんじゃ!」
「さあ?私の持つ棒に付いた水が
慣性の法則に従っただけではないでしょうか?」
「さてはお前。結果が、こうなると分かって仕掛けてきたな?」
「なんのことだか!さて次の使用方法を考えましょ。
色々試したい考えがあるんですよ。」
「もう嫌な予感しかせんな。」
数か月後・・・
「ほら、博士今日はパーッと呑みましょ!今日は私の奢りですよ。」
「そうだな・・・。」
「もう!せっかく居酒屋にきているのに辛気臭いなー。
さては、また細かい事気にしてるんでしょ?」
「いや、細かいってか、目の前のこれは何じゃ?」
「え?何って生ビールじゃないですか?」
「ワシの目の錯覚じゃなければいいのだが。
グラスが無いのは気のせいか?」
「ええ!以前の発明品が、こんな事に使用されるとは思いませんでしたよ!
棒の周りに生ビールを付ける!あのグラスにつく嫌な水滴も解消!
棒から冷気も出しているので保冷効果も抜群!
ちなみに取っ手は底辺の土台に固定されてます。」
「凄いのは分かるんだが、これ非常に飲みにくくないか?」
「あっ!博士。まだ乾杯してないのに飲んだらダメですよ!!
いやー。正直、私もジョッキグラスで呑む方が
しっくりくるんですけどね。
世の中珍しいものが万人受けしたりするじゃないですか?
最近、巷の居酒屋で流行ってるらしいですよ。
お蔭様で私の収入は、うなぎのぼりです。」
「ちなみに、こいつの名前はなんていうのだ?」
「もちろん、生ビールバーです!」
「また、安直な・・・。もしかしてだが
ジュースだったらジュースバーっていうのか?」
「もちろん!」
「ファミレスで流行ったら、ややこしそうじゃの。」
「ん?どうしてです?」
「これが流行ったら、ドリンクバーのドリンクバーって
訳のわからんことにならんか?」
「わあ!博士、上手いこと言いますね。
私はその展開を大いに待ち望みます。」
「お前に初めて褒められた気がする。
しかもそんな上手いこと言った感覚ないのに褒められると釈然とせん。
馬鹿にされた気さえする。」
「もう、また!細かい事は気にしなーい。とりあえず博士、乾杯しましょう!」
「そうだな。喉も乾いたし腹も空いた。
お言葉に甘えて今宵は、盛り上がるとするか!」
「そうですよ!こうして無事に発明品が売れに売れたお祝いなんですから!
では!乾杯ーーー!!」
「ちょ、待て!なんだその勢いは!?デジャブか。何か嫌な予感が・・・。」
今回のテーマは
「ドリンクバー」。
ファミレスで何となく考えただけの
会話形式なので
作画担当からは
「解り辛い」との声が。