第00話、序奏
(世界と言うものは、簡単に崩れてしまうなぁ……)
一人の少女が、興味がないように目の前の光景を見つめていた。
それは、炎。
辺りは炎に包まれ、人々の叫び、そして死に至るまでの光景を、少女は見つめ続けていた。
右手には、真っ黒い杖を持ち、地面に座りながら無表情で見つめ続けている。
「……この世界も、所詮は邪悪な塊だったという事か」
ふと、背後から声が聞こえる。
聞きなれた声なので、別に振り向いても意味がないと感じた少女は、振り向くことなく答える。
「『人間』と言うのは所詮そんなものだよ。僕はただ、この醜い世界を浄化してやっただけの事……『破壊』と言う文字を添えてね」
「……」
笑みを浮かばせながら答える少女に、背後に居た人物はため息をつくことしか出来なかった。
「……いいのか?気に入っている奴らも居たんだろう?」
「飽きちゃったから捨てたよ。それにその人たち僕を騙そうとしたんだ……自業自得だよ……さて、長話をしている場合ではないね、ルー」
少女は立ち上がる、後ろを振りむく。
そんな少女に声をかけていたのは、背の高い一人の男だった。
真っ黒い瞳に真っ黒い長髪の髪の男に手を伸ばし、手招きをする。
男はそっと少女の手を取り、握る。
「……で、次は何処に行くんだ?『破壊者』よ」
「……次は、もっと平和と言われている所」
少女と男の身体が黒い光に包み込まれる。
最後まで包まれた後、少女は答えた。
「『地球』へ」