雑踏の中で感じる孤独
高石区のマスコットのスパラくんは、区民による区民の為のキャラクターにしようと、一般公募でデザインを募って、それを投票で決めて作った筈。しかし実際作られたものは束になったアスパラガスに顔がついただけというなんとも微妙な雰囲気のマスコットだった。リアル過ぎるわけでもないけど、ファンシーでもない。見てアスパラガスだなとは思うけど、それ以上の感情を湧き起こすこともない。色は全体的に緑という事もあり、地味で人込みに紛れて目立たない。しかもあまり子供は近づいてこないし、犬には吠えられる。
まあ区のお祭りに参加すると住民にはそれなりの知名度が上がってきた為に人からも囲まれてマスコットらしいちょっとした人気者な扱いを楽しめるのだが、区外でのイベントに招待された時はかなりつらい。マスコットとして参加しているのに、一人ただポツリと立っているだけの状態で放置されるって、かなり寂しい事なのだ。横では可愛かったり、人気あったりするマスコットは、あんだけ人に囲まれチヤホヤされているのに、スパラくんの事は目を合わせても首を傾げてそのままスルーしていくのだ。
今日も『きゃ~♪ 写真いいですか~』『そのポーズもカワイイ~♪』といった楽しそうな声を聞きながら俺はスパラくんの中で溜息をついている。いつもならもう少し人は来てくれるのだが、今日は困った事にハロウィン。同じ街の別の場所では仮装パレードも行われていたようで街に仮装のままの人が溢れている。そしてマスコットと仮装が混在するというとんでもないカオスな状況が作り上げられていた。しかも最近の仮装はゴミ袋を被っただけなんて粗末なものではなく、とんでもなくクォリティーが高い。魔女やゾンビだけでなく、それぞれ創意工夫された様々な恰好をしている。今さっき横をとんでもなくリアルなブロッコリーとジャガイモが歩いていった。そしてハロウィンらしくカボチャな人も多い。そんな状況だとスパラくんは逆にしっくりしすぎて、マスコットに見てもらえない。仮装だと勘違いされてしまうから余計に放置されているようだ。なんでマスコットが一般人にインパクトで負けてしまっているのか?
これは由々しき事態である。ハロウィン恐るべし。誰だ! こんなとんでもないイベントを日本に持ち込んだのは!
俺はキッと隣の俺より華やかで目立って写真を求められているピザの格好している男を睨みつける。俺の中で何かが弾ける。
「高石区のマスコットスパラくんでスパラ~。美味しそうなピザなスパラ~!」
今まで喋った事はなかったが、ピザの男に裏声で話しかけて、PRしつつ共に写真を撮る。そのままアテンダーが呆然としているのも構わず積極的にマスコット・仮装も関係なく話しかけて行き直で触れ合いをすることにした。
俺のそんな行動のせいでハロウィンの日は職場では「スパラくん覚醒の日」と呼ばれる事になる。俺のせいでスパラくんのマニュアルに会話術が組み込まれ、スパラくんに入る人は裏声でのスパラくん喋りの練習が必要になってしまった。申し訳ないとは思うものの、あの人混みの中で人恋しさに震えるあの辛さを分かって欲しい。人気マスコットも大変だと思うけど、知名度低く、可愛さのないマスコットをやるのも大変なのだ。だからもし街を歩いていて、なんかマスコットがいたら、みんな構ってやって欲しい!
スパラくん
高石区のマスコット。
名産のアスパラガスの姿をしています。
名前はスバラシイと、アスパラガスの両方の意味をもっています。
地元ではそれなりに人気はあるキャラクターのようです




