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中に人など、おりません!  作者: 白い黒猫
地方マスコット
17/23

努力の結果、垢抜けただけです!!

 今の世の中、マスコットが多過ぎてマスコット本人? としても大変な時代になってしまった。

 雨後の筍のように大量発生したポッと出のマスコットとは違って、円山市のマスコットのマルヤンくんは十年前からいて頑張っている。注目もされない日々も変わらずっと活動を続けてきていた。 

 マルヤンくんは名物の長ネギをマフラー代わりに巻き、名産品の円山織りの半纏を着たウリボー。しかしデザインが微妙な為かブタかクマかイヌかと悩まれる事が多い。多くの人に『顔色の悪いブタ』と思われているようだ。

 テレビにも普通のタレントのようにマスコットが出てくる時代。マスコットの社会的地位も上がりマルヤンくんで仕事すると子供は集まり喜んでくれるのは嬉しいものの、今までの努力を考えるともう少し評価されても良いかと思う。

 文字通りすり減り色も褪せるほど頑張ってきたのだから! そしてその褪せた色のせいで、色もよく分からずウリボーの特徴である縞が見えなくなりブタと間違えられる結果になっているようだ。

 その状態もどうしたものかと思っていたが、今年やっと予算が降りて新調され新しいマスコットで仕事が出来るようになった。


 俺は新しくやってきたマルヤンくんに感動する。目も少しつぶらになり黒く輝き、老朽化に伴い痩せてだらしないフォルムになってきていた身体も美しく魅力ある洋梨型に。何よりも汚れ一つないベージュにシッカリした縞模様が描かれているボディーカラーにも感動する。首に巻いたネギのマフラーも瑞々しい緑色で、また眩しい。


「お前、実はかわいかったんだな~」


 思わずそんな声も出て、その顔部分を抱きしめてしまった。今迄は一体が引くほど汚れでいた為に一体体制で頑張ってきたが、これからは三体体制! 今まで以上に活躍の場も広げる事も出来る。俄然広報部のモチベーションは上がる。


 新しいマルヤンくんのお陰で市の広報も盛り上がる。しかも今迄よりも参加出来るイベントが増えた為に知名度も上がってくる。そして今迄千位以内にも入れなかったゆるキャラグランプリに満を持してエントリーする事にした。

 マルヤンくんにはグランプリにエントリー中のタスキをつけて、アテンダーにもエントリーの旨を宣伝してもらい選挙活動を頑張った。


 そして結果発表の日。マルヤンくんは七十八位という大健闘ぶりに市役所全体が沸いた。この位で喜ぶなといわれるかもしれないが、千九百七十六体が参加していて、この順位は奇跡である。今迄の下から調べた方が良い順位だった事思えば大躍進。ずっと長く頑張ってきた事が、ようやく評価されたのかと思うと、喜びもひとしおである。


 そして後日結果を元に書かれたグランプリサイトのコメントをワクワクしながら読んでいた。


『長く円山市で頑張ってきたものの、同じ市内のマ~ネくんのインパクトが強く影が薄かったマルヤンくん。今年はマ~ネくんには敵わなかったものの大躍進……』


 本当の事ではあるが、言っている事は結構キツイ……。


『しかし昨年末、整形手術をしたことで、市民に好印象与える事に成功!』


 セイケイシュジュツ……いえ、リニューアルしただけです。確かにその際多少可愛く変更した所はあるけれど……どうして大躍進が俺達の努力ではなく整形によるものとされているのか……。俺はガックリとした。



挿絵(By みてみん)

マルヤンくん

円山市の公式マスコット。

円山織りの半纏に長ネギのマフラーを巻いたウリボーの姿をしています。

見た目によらず、意外と背か高いので近づいてみるとビックリします。

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