第九十七話
<大工のあんちゃん最終章 死闘!!エルサレム神殿編!!>
さて、読者の皆さんは、あのパウロを覚えているだろうか?カヤパの手下で、大工のあんちゃん撲滅陰謀計画を企てていたファリサイレーベルの長。アニキ・ザ・ヨハネの導きで、やっとこ回心したはずも、呑気な漁師にダマスカスまで連れてかれちゃったパウロは、ようやくエルサレムに帰ってきたのです。
「待ってろよ!大工!ぐっはははは!」
ポカン!
突然パウロは後ろから杖で殴られました。
「痛ぇ!!誰だ俺の頭殴ったやつは!?」
そこには大手レーベル会社『サドカイ』の大社長カヤパが、顔を真っ赤にして立っていました。
「ゲ!?カヤパ様」
「パウロ!今まで何やってたザマスか!?」
「すみません、大社長」
「あんたがぶらついていた時期に、いまやエルサレム神殿は大変なことになっちるザマス!」
パウロが目を凝らしてよーく見てみると、大工のあんちゃんを慕うファンでいっぱいです。
「へへへ、敵ながらあっぱれな野郎だぜ!」
ポカン!
再びカヤパの杖で殴られるパウロ。
「パウロ!感心している暇があったら、なんとかするザマス!」
「はい、カヤパ様」
「このままじゃ、ローマから帰ってくるピラトゥス様も御冠ザマス!良いザマスか?奴を犯罪者に陥れて、処刑させるように仕向けるザマス!」
「わ、分かりました!!!!」
スタコラサッサ~!
パウロはすぐにファンを装い、あんちゃんの側へ向かいました。もはやあんちゃんを慕うファンの何かには、以前アニキのファンも取りこんで、まさにスーパースター!それなのにあんちゃんは、変わらず陽気に人々へ接し、愛のカイロプラクティックを施してます。パウロはようやく人混み掻き分け、あんちゃんに辿りつきました。
「あんたが、最近有名な救世主か!?」
「うん?誰だい?」
「俺は最近あんたのファンになった、マッカートニーさ」
「ほうほう、マッカートニー坊や。まぁ飲食系の営業許可書をもってねぇから飯屋じゃないけど、最近ちまたで有名な愛の伝道師の事だったら俺様のことよ。なんか痛い所でもあるのか?」
さっきカヤパに殴られた頭を摩っていると、うしろからカヤパの厳しい視線を感じました。
「いや、別に今日は痛い所は無い。ただ、あんたには今日聞きたい事があってやってきたんだ」
「ほう、どんな事よ?マッカートニー坊や。なんでも答えるぜ〜」
「聞けば人々はあんたを救世主という。でも、あんたの連れてる仲間はプータローやニートばっかりだ。人に慕われる存在の人間が、どうしてこんなゴロツキどもと一緒にいるんだ?」
すると周りにいたファン達に動揺が広がります。周りにいる人達は、すぐさま弟子達へ白い目を向け始めました。パウロはしてやったり!とドヤ顔です。
「わっはっはっはっはっはっはっは~!」
しかし、さすが天下の愛の伝道師あんちゃん!両手に手を添えて、腹から思いっきり笑いだしました。
「マッカートニー坊や、なーんだそんな事を聞きたかったのか?」
「な、なんだとぅ!?」
「マッカートニー坊やは、ギリシャの医学の父ヒポクラテスを知っているか?」
「ああ、知っているさ!」
「ヒポクラテスさんという人は、医師にとって大切な『ヒポクラテスの誓い』というのを宣言した人なんだ。その中に、こんなフレーズがある」
するとあんちゃんは両手を広げ、目を閉じながら『ヒポクラテスの誓い』を発しました。
「『汝、どんな家を訪れる時も、そこの自由人と奴隷の相違を問わず、不正を犯すことなく、医術を行うべし』」
「そ、それが何と関係あるんだよ?」
「医者に必要なのは患者であって、健康な人ではないだろう?俺は心を治療する医者。だから人生を彷徨い、未来に不安を抱え、心に闇を抱えているこいつらこそ、必要な存在なのさ!」
ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
側にいた人々は、一斉にあんちゃんへ雄たけびを上げました。そしてあんちゃんは、愛の宣言をします。
「俺もヒポクラテスさんと同じように!王だろうが奴隷だろうが、子犬だろがカブトムシだろうが!分け隔てなく誰だって救うさ!」
ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
多くの人々からの雄たけびに、弟子達も安堵しています。すると弟子の一人マタイが号泣しながら、突然立ちあがって告解を始めました。
「みんな聞いてくれ!俺はその昔、お前達からみかじめ料を取っていたローマ帝国の税収人だった!捲き上げた金をちょろまかし、引き籠って生きていたんだ!」
ザワザワザワザワ、ザワザワザワザワ、ザワザワザワザワ。
「でもこの先生は、そんな醜い心を持った俺にも、『一緒に人類の愛ってやつを徴収しねぇか?』っと言ってくれたんだ!」
ザワザワザワザワ、ザワザワザワザワ、ザワザワザワザワ。
「それまで誰にも!そんな事は言われた事が無かったんだ!だから俺はその仕事を辞めた!先生が心の医者、愛の伝道師だってことは本当だ!」
ウォオオオオオオオオオオオ!!!!ウォオオオオオオオオオオオ!!!!ウォオオオオオオオオオオオ!!!!
過去の過ちを素直に告解したマタイに、人々から多くの惨事と拍手が送られます。マタイへ続くように、他の弟子達も次から次と告解を始めました。ますますその人気に拍車が掛り、もはやパウロは太刀打ちできませんでした。
「くっそ!覚えておけ!」
スタコラサッサー!パウロは逃げるようにしてその場を去りました。
「ウィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイイイ!」
あんちゃんはスタン・ハンセン宜しく、人差し指と小指を立てたジェスチャー『テキサス・ロングホーン』サインで勝利宣言します。周りの人々もそんなあんちゃんに同調して雄叫びです。逃げ帰ったパウロが、再びカヤパの元に戻ると、さらにカヤパは真っ赤に激怒していました。
「このバカチンが!」
ポカン!
おもいっきり頭を殴られたパウロ。
「す、すいやせんでした!カヤパ様!」
「キー〜ーー!元大工め!今のうち勝利に酔いしれるがよいザマス!いずれ、貴様らを必ず!ゴルゴダの丘の上で十字架の磔にしてやるザマス!!」
カヤパの両目に宿る憎しみは、大工のあんちゃんをしっかり捉えていたのでした。
続く




