第九十一話
春の過越祭!!
エルサレム神殿では、大いに人が賑わっています。そんな中、大工のあんちゃん一行も、早速エルサレム入城に向けて、色々と準備をしていました。
「見ろ!元大工。なかなかいい馬だろ?」
「おおペテロすごいな!」
「それにしてもペテロ。こんな馬、どこで手に入れたんだ?」
「それがよ、ユダの野郎がローマ軍から拝借してきたんだよと」
「マジか?ユダ、大丈夫なのか?」
しかしユダは手を腰にのせ、鼻をこすって大威張です。
「ブラザー!此処まで来てローマ軍なんかビビってどうすんのYo?いまやブラザーは世界でビッグな愛の伝道師!」
「うんうん!」
「こなりゃ周りを圧倒して、決めてやんなきゃYo!」
「そうだな!そうだな!」
「このシルバー号と共にだな、がちっとかましてきてくれYo!!」
パチン!っと、ユダは馬のシルバー号のケツをひっぱたきました。
「ヒヒーーーーーーーンン!!!」
するとシルバー号は目を真っ赤にして、突然暴れ出しました。
「おお??ど、どうしたんだシルバー号!落ち着くんだ!?」
「ヒヒーーーーーーーンン!!!ヒヒーーーーーーーンン!!!」
「うわーー!ブラザー!シルバー号が襲ってくる!!」
「ヒヒーーーーーーーンン!!!ヒヒーーーーーーーンン!!!」
「ユダ!逃げろ!逃げるんだ!俺がなんとかする!」
「ヒヒーーーーーーーンン!!!ヒヒーーーーーーーンン!!!」
あんちゃんはなんとかしがみ付いていますが、ケツをひっぱたかれたシルバー号は、怒りまくってユダを追いかけています。
「ヒヒーーーーーーーンン!!!ヒヒーーーーーーーンン!!!」
「うぎゃ!!!」
ユダはあっという間にシルバー号の後ろ足で蹴り上げられました。それでも暴れているので、あんちゃんは必死に宥めようとします。しかしシルバー号は全く言うこと聞きません。いい加減に頭にきたあんちゃん。
「ヒヒーーーーーーーンン!!!ヒヒーーーーーーーンン!!!」
「こんのやろう!言うことききやがれ!!!」
ゴツン!!
必殺技の頭突きを食らわしました!
「フンギャ!!!ヒヒヒヒーーーーーーーンン!!」
大きなタンコブを作ったシルバー号は、今度はその痛さに耐えきれず、さらに暴れ出しました!もはやアウトオブコントロール!
「ヒヒーーーーーーーンン!!!ヒヒーーーーーーーンン!!!」
「うぎゃ!!」
ついにあんちゃんも、シルバー号の後ろ足で蹴られて放り投げられました。大きなタンコブをつくったシルバー号は、そのまま走りさってどっかに消えてしまいます。
「元大工!暴れている馬に頭突きしてどうすんだよ!逃げちまったじゃねーか」
「痛っ、くっそう~!シルバー号め!頭突きなら言うこと聞くかと思ってよ」
「ったく、お前は馬鹿だろう?最近はなんでも頭突きで解決しているだろう?」
「すまない。。。よ、よーし!こうなったら、ぜひシルバー2号を!」
「そんなものあるか!!」
そんな時、ペテロの弟アンデレがロバに餌をやってました。
「おい元大工、あれなんてどうだ?」
「え!?」
動きがのろくて眠たそうな眼をした、雌の子供ロバでした。
「おい、ペテロ~。あれってロバの子供じゃねーかよ」
「そうだ。馬が駄目な人は仕方ないから、雌の子供ロバに乗って慣れるしか無いだろ」
「だ、だけどさぁ?俺は愛の救世主だぜぇ?やっぱり雌の子供ロバでエルサレム入城っていうのは、こう、物語的にギャグ漫画にならねかな~?」
「しょうがねーだろ。どっかのバカが馬に頭突きして、逃がしちゃったんだから」
「ま、そりゃそうだけどよ~(ポリポリ)」
それを言われると痛いあんちゃんです。
「ぶつぶつ。これじゃ、アルプス越えのナポレオンじゃねーか。ぶつぶつ」
「そんなに文句言うなら、歩いて入城しやがれ!」
「わ、分かったよペテロっち。そんな青筋立てなくたっていいじゃん」
結局、あんちゃんはしぶしぶ雌の子供ロバに乗る事にしました。今度はすんなり乗れました。弟子もみーんな大喜びです。あんちゃんは声高らかに、かっちょいいセリフを唄い上げるのです。
「"世の中に『愛』を伝えるべく生まれた男!ここに見参!!ハイヨー、シルバー2号!行けぇええいい!"」
し~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん。
しかしシルバー2号は、まるっきり動きません。
「"ハイヨー、シルバー2号!行けぇええいい!"」
それでも全く動きません。仕方ないので、あんちゃんはわざわざシルバー2号から降りて、なんとか進もうとけしかけますが、それでも一向に動きません。
「はぁ、はぁ、くっそう。なんという強情なシルバー2号!」
すると突然、シルバー2号が動きました。
「お、おお???こ、こら!ちょっと待て!どこへ行く!くっそう!」
なんと!リンゴを食べていた、タダイを追いかけ始めたのです。
「うわーなんだ?!先輩、こっちにロバが追いかけてきたよ~」
「な、なんだ?こいつは!」
「うわーーーどうしよう!!!先輩!なんとかして!」
「む!?そっか!タダイ!そのリンゴだ!そのリンゴをよこせ!」
「リ、リンゴ!?」
タダイはリンゴをあんちゃんに投げると、それをキャッチしたあんちゃん。それを見ていたシルバー2号は突然急ブレーキ!!!
キキキキキキーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!
必死にあんちゃんへリンゴを欲しがりはじめました。
「へっへっへっへ~。そうだそうだ、そうやって最初から俺の言うこと聞いていればいいんだよ」
結局あんちゃんは、ペテロから借りた釣り竿でリンゴを垂らして、シルバー2号を前へ進める事に成功したのでした。というわけで、もう一回、かっちょいいセリフからやり直しです。
「"世の中に『愛』を伝えるべく生まれた男!ここに見参!!ハイヨー、シルバー2号!行けぇええいい!"」
ひょいひょいっとシルバー2号の顔先に、釣り竿でリンゴを動かすあんちゃん。それにつられて歩き出したシルバー2号。その間抜けな様子に、マタイとシモンはがっかりです。
「こんなことなら、最初からゴンドラとかのほうがよかったのにな?マタイ」
「いやー、バルーンの方がバシッときまってただろうぜ、シモン」
こうして、エルサレム神殿で行われる春の過越祭りに向けて、あんちゃんは雌の子供ロバに跨り、意気揚々と行ったのでありました。
続く




