第八十五話
さて、その頃エルサレム神殿では、大変な事が起こっていました。
「ピラトゥス!カヤパ!俺たちをエルサレム神殿の中に入れやがれ!!」
「そうだ!アニキの弔いをさせろ!!!!」
「俺達アニキのファンを入れないなんて許せねーぞ!」
ヨハネ・ザ・アニキのファン達は、アニキの魂を弔う為にエルサレムの神殿に入れろと抗議をしてきたのです。カヤパはパジャマのまま、キリキリしながら起きてきました。
「きーーーー!朝から騒々しい!なんザマスか!?」
「カヤパ様大変です!ヨハネの信奉者達が、暴徒と化して神殿を取り囲んでいるのです!」
「なんですって!?」
カヤパは焦って窓から外を見ると、なんと何十万のアニキファンが神殿を取り囲んでいました。これにはすっかりビビっているカヤパ。定例報告会の為にローマ帝国へ行ってるピラトゥスが、もしこの事を知って戻ってきたら、カヤパは監督不行き届きで処刑されてしまいます。
「ヒョエーーーーーーー!!!」
「殉教したヨハネに祈りを捧げたいらしく、神殿に入れさせろっと抗議しているんです」
「アワアワアワアワ~。このままではマズイザマス!こんなことがピラトゥス様に知られたら、大変ザマス!!今すぐあやつらを抑えるザマス!!」
「し、しかし抑えるにしたって、この余りにも多いファンは無理です!どうしましょう!?」
彼らをエルサレム神殿に入れれば、ヤクザ・ローマ帝国から大目玉を食らいます。かといって彼らをこのまま野放しにしていれば、いずれ暴徒と化してめちゃくちゃになるのは目に見えてます。カヤパはパジャマのまま、焦って色々と考え始めました。逆立ちしても、綾跳びしても、オママゴトしても、なかなかいい案が思いつきません。
「参ったザマス!やばい事になったザマス!なんとかしなければいけないザマス!」
ドカ!
「アイタ!痛いザマス!」
ザザザザ~!
壁にぶつかったカヤパは、棚からアイドルのグッズに埋もれてしまいました。
「カ、カヤパ様?大丈夫でございますか?」
「きーーーー!!!誰ザマスか?こんなところに売れ残りのアイドル・グッズを。。。」
それらを眺めているカヤパは、突然笑い出しました。
「キャッキャッキャッキャ!ザマーーーーーーーーーーーーーーーーッス!」
「ど、どうしたんですか!カヤパ様?」
「良い事を思いついたザマス!グッズ販売ザマス!」
「グ、グッズ販売ですか!?」
「そうザマス!ヨハネのグッズを販売して、それを買った者だけが神殿に入れるようにするザマス!」
さすが商売っ気にあくどいカヤパの考えそうな事です。そういう時だけは素早い行動で、さっさとアニキのグッズをいとも簡単に作ってしまったのです。そして司祭正装に着替え、杖を持ち、カヤパはアニキのファン達に訴えかけました。
「殉教者ヨハネの信奉者達よ!乱暴な行動にとってはならぬザマス!」
「なんだ?なんだ!?あれはカヤパじゃねーか!」
「ヘロデ王からも聞かされたはずザマス!ヨハネの最後は、実に鮮やかなであったザマス!」
「チ!自分達が殺したくせに!」
「忘れるでないザマス!ヨハネは自ら斬首したザマス!だが、お前達信奉者が暴徒と化す事を、ヨハネは望んでいると思うザマスか?」
「。。。」
それまで叫んでいたアニキのファン達は、一瞬にして黙ってしまいました。
「しかし!このままお前達が家に帰るのは忍びないザマス!そこで特別に、本日はエルサレム神殿を解放するザマス!」
「えええ!??マジかよ!!!」
アニキのファン達は、カヤパの意外な反応にびっくりしました。
「ここで約束をして欲しいザマス!先ずチケットを買うザマス!そして一人一人、順序良く入るザマス!決して暴れないザマス!」
「チ、チケットを買うのかよ?」
「安心するザマス!今ならヨハネグッズももらえちゃうザマス!」
ウオオオオオオオオオオオ!!!ウオオオオオオオオオオオ!!!ウオオオオオオオオオオオ!!!
まんまと騙されたアニキのファン達は雄たけびを上げます。
「入場チケットはたったのローマ銀貨一枚ザマス!」
ウオオオオオオオオオオオ!!!ウオオオオオオオオオオオ!!!ウオオオオオオオオオオオ!!!
結構高いけど、アニキのファンは気にしません。
「さらに抽選1000名には、ヨハネが最後まで着ていた、貴重な服の切れ端が当たるザマス!!」
ウオオオオオオオオオオオ!!!ウオオオオオオオオオオオ!!!ウオオオオオオオオオオオ!!!
これも嘘っぱちですが、アニキを信奉する彼らには分からなかったのです。その腹黒さは世界一ですが、商売のうまさも世界一のカヤパ!ファンの購買意欲を見事にくすぐり、見事彼らを上手く宥めたのでした。
「キッキッキッキ!馬鹿どもザマス!ものの見事にヨハネのグッズだと思って買っているザマス!」
カヤパには次々と、ローマ銀貨が収入として入ってきました。さらに便乗したエルサレムの的屋商人達は、すぐにアニキグッズの露店を出し始めました。アニキまんじゅう、アニキカレンダー、アニキ鶏、アニキおでん、アニキパン、アニキワイン、アニキアイス、アニキテーブルセット等など、日々の食料品さえも、全てアニキの関連グッズで埋め尽くしてしまったのです。
「生きているときのヨハネは、何とも忌々しい奴だったザマスが、死んでからこんなに儲かるとは!笑いが止まらないザマス!」
一方、定例報告会の為、ローマ帝国へ戻っていたピラトゥス。
「そ、それは本当でゲフか?セイヤヌス様??」
「ああ、ピラトゥス。突然ティベリウスのジジイが、執政官を辞任しやがったんだ!」
この男こそピラトゥスのボスで、そしてローマ皇帝ティベリウスの右腕であり、皇帝親衛隊の長官でもあるセイヤヌスなのです。ピラトゥスがユダヤ属州で好き放題できていたのも、セイヤヌスがローマ皇帝と共に執政官に就任できたからでした。
「そ、それではセイヤヌス様も、一緒に辞任でゲフか?」
「当然だ!俺も辞任しなければいけない」
「よ、よかったでゲフ~」
「馬鹿野郎!むしろその逆だ!!最悪なんだよ!!」
「えええええええええ!??」
セイヤヌスは脂汗を流して、ピラトゥスに情勢の悪さを説明し始めました。
「こんな事は前代未聞だ!ひょっとしたら、あのジジイは俺達の『ローマ征服計画』を知ったのかもしれない!いやそうに違いない!そうなれば、カプリ島の引き籠りジジイが、急に執政官を辞任するわけがない!」
「ま、まずいでゲフ!」
「まずいってもんじゃない!俺達はどんどん情勢も厳しくなっていく!とりあえず、ほとぼりが収まるまで、ユダヤとは仲良くしているよ!」
「そこは全然大丈夫でゲフ、セイヤヌス様〜」
あまりにも呑気な答えをするピラトゥスに、慎重なセイヤヌスは心配になってきました。
「おい、ピラトゥス。。。お前まさか、奴らの反感を食らうような事してないだろうな!?」
「へ?」
「ただでさえ、奴らの税金着服で目を付けられているんだからな!今この時期に不祥事でも起こしてみろ!それこそ斬首か死刑だぞ!」
「ざ、斬首か死刑!!????」
「ピラトゥ〜ス!!!本当にしてないだろうな!?」
「そ、それは、あああゲフーーーーーー。。。」
余りにも思い当たる節がありすぎて、ピラトゥスは泡を吹いて青ざめてぶっ倒れてしまったのでした。
続く




