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第八十四話

蒼き彗星『蒼夜叉』によって、完膚なきまで叩きのめされたユダ。トマスとタダイはユダを猿ぐつわと身体を縄で縛った状態で、ベタニア村にいるあんちゃんの元へ、連れ帰ってきました。


「よう、元ヤン。ユダを連れ帰ってきたぜ」

「トマス、タダイ。ありがとう」

「この村でこいつがやった悪さを、ちゃんと吐かせてやってくれ」


あんちゃんはユダを厳しい目で見つめています。しかしユダはそれでも諦めきれず、首を横に振って否認しました。ベタニア村の村人達は、あんちゃんとユダの姿を見つけて近寄ってきます。するとあんちゃんはユダの猿ぐつわを外したのです。


「ブラザー!ち、違う!俺がやったんじゃない!バラバってやつだ」

「バラバ?」

「ああ!俺は大巨漢で恐ろしい悪人さ!ブラザーの格好をしろと奴は俺を脅したんだ!」


ユダの声を聞いた村人達は、ユダが犯人であることに気が付きました。そして叫び出したのです。


「嘘つけ!貴様は最初っから、俺達を騙したじゃないか!」

「石ころしか入っていない袋を、ローマ金貨が入っていると嘘をつきやがったんだ!」

「それだけじゃない!リベカを人質にして、崖から放り投げようとして!」


ロボスは腕を組み、口元を歪ませながらあんちゃんの動向を見守っています。村人達の声を聞いたあんちゃんは、いきなり立ち上がって、彼らにとんでもない提案をしだしました。


「俺が肩代わりしようじゃないか」

「!?」


ざわ、ざわざわざわ。

村人達はざわめき始めました。あんちゃんの弟子達も動揺が広がっています。トマスは地面に唾を吐いて、さすがにイラついて胸ぐらをつかみます。


「いい加減にしろよ!元ヤン!てめぇーはどこまでお人よしなんだ!?」

「トマス、離せ」

「なんでお前がこいつの肩代わりをするんだよ!ツケはこいつが払えばいいんだ!」

「それは違う、トマス。このままユダをベタニア村の人達に突きだしたら、その後ユダはどうなる?」

「ああん?当然フルボッコだろう」

「そしたら村人はどうなる?」

「はぁ!?」

「ユダも村人も、みんながハッピーになる事を考えないといけないんだって」


あんちゃんは右腕で、胸ぐらを掴むトマスの腕を払い除けました。すると、右腕には最近できた擦り傷がありました。トマスはそれを見て、何かを思い出した様子で口を開けました。


「その擦り傷は?」

「こ、これか?最近、ちょっと転んでよ」

「ユダを救うためだろ?」

「そうそう、あの野郎ゼッツーで攻め込んでくるから」

「やっぱり、元ヤン。あんたがあの、蒼き彗星。。。」

「ヤベ!?」


ドゴ!

あんちゃんはトマスの腹部にパンチを入れ、ぐったりと眠らせます。その様子を見ていたユダも、あの自分を救ってくれた蒼夜叉と同じ擦り傷が、あんちゃんの右腕にある事に気が付きました。あんちゃんはユダに無言で、ここは俺に任せろとウィンクし、そしてあんちゃんは陽気な声でベタニア村の村人達へ語りかけます。


「村人の皆さーん。ここはどうかこのユダを許してくれませんでしょうか?」

「な、なんだと!?」

「こいつが行った事は、確かに皆さんに多大な迷惑を掛けたかもしれません。その分の償いは、俺達が一生懸命時間を掛けて償いますんで、俺に免じてユダを許してくれませんか?」

「俺に免じてだぁ!?あ、あんた上目線で!何様のつもりだぁ!?」

「へ?」


しかし村人達の怒りは収まりません。今度はユダを庇うあんちゃんに憎しみをぶつけてきたのです。


「冗談じゃない!さっきから好き勝手な事言いやがって!そいつは我々が処分する!」

「あんたが言っていることは、あんたが犯罪者をかくまっている事なんだぞ!」

「そうだ!モーゼの十戒にも、『八、嘘つきは泥棒の始まり、九、だから盗みもあかんでー!』って書いてあるじゃないか!」

「絶対に許さない!そのクズ野郎には罰が必要なんだ!」


するとあんちゃんは青筋立てて怒り出しました!


「誰だぁああああああああああああああ!!!?今クズ野郎って言ったのは!?」


村人はあんちゃんの恐ろしい声に、みんな慄きました。


「いいか!?世の中にクズ野郎なんて、一人もいねーンだよ!」

「。。。」

「あんたらが、ユダを憎んでいるのはよーく分かる!こいつがモーゼおっさんの十戒を破って、あんた達に迷惑を掛けたのも分かっている!だがな、結局あんたらがしたい事って、ストレス発散してるだけじゃねーか!?」

「なんじゃと!?大体そいつのせいで、村人全員が嫌な思いをしたんだ!だから俺達はその男を罰す権利があるんだ!」

「ったく分かってねーな!だから俺が肩代わりしてやるって、言ってんじゃねーか!」

「冗談じゃねぇ!そんなんで気持ちが収まるものか!犯罪者は罰しないといけねーんだ!」


するとあんちゃんは天に人差し指を突きだして、大声で叫びました。


「いいか!?村人達、あの空を見てみろ!太陽だってな、悪い奴にも良い奴にも昇るんだ!みんな平等なんだ!」

「何を言ってやがる!」

「へ?」

「どこに太陽があるんだ!?」


村人との指摘通り、辺りは曇りでした。


「く、くっそう!!こんな時に限って」


ポツポツ!ポツ!

すると突然!雨が降ってきました。

ザーーーーーー!ザーーーーーー!ザーーーーーー!ザーーーーーー!

しかも結構大降で、村人や弟子達、そしてあんちゃんもびちょびちょに濡れ始めました。


「うわー雨だ!」


ザーーーーーー!ザーーーーーー!ザーーーーーー!ザーーーーーー!

しかしあんちゃんはさすが屁理屈大魔王なのでヘコタレません。両手を腰に乗せて、胸を張って大笑いしております。


「ガッハッハッハッハ!ほーれ俺が言ったとおりだろう!?悪い奴にも正しい奴にも、みーんなに雨が降ってきただろう?みんな平等なんだ!ざまーみろ!!」


ピカーーーーーッ!!

ゴロゴロゴロゴロ!!!!ゴロゴロゴロゴロ!!!!

ザーーーーーー!ザーーーーーー!ザーーーーーー!ザーーーーーー!

今度はなんと雷です!さすがにこれには村人も弟子達も避難し始めましたが、あんちゃんに殴られたトマスと、縄で縛られたユダは逃げられません。当然あんちゃんも、空威張りで両腕組んでます。


「ブ、ブラザー!やべーって!早く逃げねーと!」

「ユダ!村人にあんだけ偉そうに言った以上に、このまま逃げるわけにはいかねーだろ?」

「な、何馬鹿なこと言ってやがんだよ!」

「ここはひとつ、ゼウスと一騎打ちしてだな、ミラクルを起こすしかねー!」


ピカーーーーーッ!!

ゴロゴロゴロゴロ!!!!ゴロゴロゴロゴロ!!!!

さらに凄まじい稲光が、あんちゃん達の周りを襲い始めます。肝をひやひやさせるあんちゃんは、脂汗をかきながらも、必死に空威張りです。


「ヒュ~!い、今のはヤバかったぜ!さすがスーパーゼウス!迫力あるじゃねーかよ!」

「な、何がスーパーゼウスだ!ビックリマンのシールじゃねーんだからよ!」

「お、そういや~俺って、ビックリマンのくじ運だけは昔から悪かったんだよな~」

「は、はぁ!?何をわけわからない事を!?」

「くっそう、死ぬ前に一回ぐらい、ビックリマンでスーパゼウスを当てたかったぜぇ」

「だぁ!!!!!ブラザー!巻き込み自殺だけは勘弁してくれ!」


ピカーーーーーッ!!

ゴロゴロゴロゴロ!!!!ゴロゴロゴロゴロ!!!!

ドガガガッガガガガガガガガ!!!!!!!

ビリビリビリビリ!ビリビリビリビリ!


「ウガウン!ガウン!ガウン!ガウン!ガウン!ガウン!」

「ウガグン!ガグン!ガグン!ガグン!ガグン!ガグン!」


ついにあんちゃん達に落雷!なぜかあんちゃんとユダだけ、めちゃくちゃ感電しまくり。レントゲンのようにホネホネロック。さらに真っ黒コゲで、あんちゃんの髪の毛はアフロヘアになっちゃいました。


プスプスプス~!プスプスプス~!


「ユ、ユダ、平気か?」

「平気なもんか!」

「見ろユダ、ナイスなアフロヘアになっちまったぜ」

「ブ、ブラザー。お、おめぇは、ぜってぇーに馬鹿だ」


ついに力尽きて、ユダはそのまま気を失いました。あんちゃんは必死にこらえながら、またもや陽気な笑顔で、今度はロボットダンスを披露します。


「というわけで、まぁーその~。良い奴にも悪い奴にも平等に、スーパーゼウスの怒りは来るってことでっさ」

「。。。」

「ザッツウェイアッハアッハ!アラーイキ♪ザッツウェイアッハアッハ!アラーイキ♪」


コテン!ついにあんちゃんも、気を失って地面に転がって倒れてしまいました。ようやく目が覚めたトマスは、黒コゲになっている二人の姿にびっくりしています。辺りをキョロキョロしてますが、自体が掴めていません。さっきまで怒ってた村人達は、あんまりのあんちゃんのおバカぶりに、開いた口が塞がらない状態でした。


数日後。。。

結局身体を張ってスーパーゼウスの怒りに遭ったあんちゃんに免じて、ユダには一カ月の無償労働ということでなんとか許してもらいました。当然そばには、アフロヘアのあんちゃんが嬉しそうに手伝っているのは言うまでもありません。


「ブラザー。あんた、なんだって俺の為に命まで賭けて」

「別に、命なんて賭けてはいねーぜ」

「でもよ、あの蒼夜叉の時だって、それに昨日だって」

「俺は、お前が勘違いされるのだけがむかつくんだ」

「お、俺が勘違い?」


あんちゃんは真剣なまなざしで、アフロヘアのまま、ユダの両肩に手を添えます。


「ああ。お前、本当は良い奴で、悪ぶってるヤンキーみたいなもんじゃんか」

「ブ、ブラザー」

「人は迷える子羊みたいなもんさ。高校でデビューしたヤンキーも、髪染めるので迷うだろ?」

「。。。」

「お前も迷ってた。あんまりにも俺がキャーキャー言われるもんだから、羨ましかっただけなんだろ?」


それは当たってました。ユダがこの村で悪さしたのも、あんちゃんが羨ましくて、その弱みをパウロに唆されて行ったのです。でも正直になれないユダは、またもや空威張りでごまかします。


「ケッ!だ、誰が、ブラザーみてーなアフロヘアを羨ましがるか!」

「あ!このヤロウ!俺が好きで、このアフロヘアしてると思ってるのか!?」

「しらねぇよ!大体チェリーなんか羨ましいわけねーだろーが!」

「て!てんめーー!触れちゃなんねことを!ユダ!テメーだってツるっぱげじゃねーか!」

「ツるっぱげなんかじゃねー!」

「ケケケケケ、ユダ。お前は本当に嘘つきだな~。それってハゲ隠しだろ?」

「これは自分で剃ってるんだ!ブラザーは、暗殺されたラッパーの2パックとかしらねーのかよ!?」

「フ、甘いな。ティーパックなら俺だって履いてるぜ」

「それはTバックだろーが!ってか、そもそもパンツじゃねーし!」


結局、スーパーゼウスの怒りによって、この二人の仲の良さだけが証明されたようなものでした。


続く

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