第六十六話
『死闘!金網ドーム有刺鉄線ロープファイヤー・デスマッチ in エルサレム宮殿!』
バラバに有刺鉄線を全身に巻きつけられ、リング外の炎に投げ込まれたアニキは、有刺鉄線の激痛と灼熱炎に悶え苦しんでます。その姿をリングの上から眺めているバラバ。
「バラバ!何を突っ立っているザマスか!?早くヨハネにとどめをさすザマス!」
「ゲヘヘヘヘ~!一気にヨハネを殺してしまえ!!!」
バラバはリングのポールを引っこ抜き、それに有刺鉄線を巻きつけ、アニキにめがけてそれを投げました。
「死ねぇ!アニキ!!!バラバ式、有刺鉄線ポール・ボンバーアターック!」
金網ドームの外にいるヘロデは、何もできませんでした。
「アニキ!!!!!避けてくれぇ!!!!!!!」
クルクルと回転する有刺鉄線ポールは、アニキにとどめをの元へ飛んでいきます。その時でした!アニキはハッ!っと目を覚まし、全身の力を振り絞って、両脚を使ってポールを蹴り撥ね退けたのです!
ガツーーーーン!
アニキの蹴りによってポール勢いよく元に戻り、ブーメランの如く見事バラバの腹部へ叩きこみました。
ドスーーーーン!!!
「ウガァアア!!!!」
避けられなかったバラバはリングに沈みます。リング外でようやく炎から脱したアニキは、全身に巻きつけられた有刺鉄線を外し、傷だらけのままリングへ上っていきました。しかし金網ドーム外にいるヘロデは、アニキを制止しようと試みます。
「もう無理だアニキ!!全身火傷と擦り傷に負わされているのに、これ以上の戦いは不利なだけだ!」
「ヘ、ヘロデよ。ここで、ここで諦めたら、俺たちはヤクザ・ローマ帝国の連中のいいなりだ」
「だが!アニキ!」
「そ、それに、バラバを挑発して、あ、あんな風にさせた俺にも責任がある。奴の魂を救わなければ」
「ア、アニキ。。。」
全身から流血し、火傷を負っているアニキだが、それでもその闘志だけは消えていません。リングに倒れたバラバですが、立ちあがります。
「バラバ、やっぱり、お前はクズだったな?」
「!?」
「何が、何が自分一人が犠牲になれば、村人が救われるだ!?何がリベカを救えるだ!?」
「な、なんだとおおお!」
「残虐ファイトに身を投じやがって!お前は外見だけでなく、心や魂までも腐っちまった、救いようのないクズだぜ!」
「こ、この野郎!!!!!ぶっ殺してやる!!!」
怒髪天に達したバラバは、再び自分の頭をアニキの腕の下に入れ、正面からアニキの腕を抱え込むように腰に手を回しました。
「喰らえ!!バラバ式スーパー・ノーザンライト・スープレックス!!!!!」
「教えただろう?バラバ!何度も同じ技が利くと思ったら、大間違いだぜ!!!!」
するとアニキは後ろ足でバラバの顔面を蹴り上げ、怯んだ隙にさらに体勢を低くし、バラバの腋の下から自分の首を差し入れ、肩の上でバラバを担ぎ上げました。
「あ、あれは!消防士が怪我人を運び出すために使われるファイヤーマンズ・キャリー!」
バラバを担ぎあげたままのアニキは、そのまま回転を加えながら大きくジャンプしました。するとリング中央には恐ろしい竜巻が巻き起こり、雷や嵐が吹き荒れたのです!その竜巻によってリング外にある燃えたぎる炎は、全て消し去れて行きました。
「喰らえバラバ!ヨハネ流48のプロレス殺人技の一つ!コークスクリュー・バーニングハンマー!!!!!」
「!!!!???」
【コークスクリュー・バーニングハンマー】
解説しよう!バーニングハンマーとは、相手をファイヤーマンズ・キャリーの状態から、自ら横に倒れこみながら、頭部からリングへ叩きつける技である!しかしコークスクリュー・バーニングハンマーの場合は、技全体に回転が加わり落下地点が予測不可な為、相手も受け身を取れないまま死に至らしめてしまう場合もあるのだ!
「ぐぉおおおおお!!!!さらにタイフーーーーン・バーニングハンマーアターーーック!!」
ズドーーーーーーンン!!!!!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーンン!!!
まるで地響きのような凄まじい音が辺りを揺らし、そしてその勢いで金網ドームもグラグラとバランスを崩し、なんと天井から壊れ始めたのです!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
「ま、まずいザマス!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
「ゲヘヘヘヘヘ!?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
「た、大変だ!!!金網ドームが崩れ始めたぞ!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
「キャーーーーーー!お母様!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
「キャーーーーーー!サロメちゃん!!!」
ヘロディアとサロメは、ヘロデの助けを借りて避難を始めました。ピラトゥスもカヤパも、金網ドームの崩壊からスタコラサッサっと逃げまくります。しかしリングでは、竜巻が治まる様子はありません。
ガラガラ!!ドガガガガガ!!ゴキャン!!バギャン!!グッシャン!
ドカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンン!!
そしてついに金網ドームは見事崩壊してしまいました。それと同時に、リングの中央で起きていた竜巻も、次第にその力が弱まっていきます。エルサレム神殿の宴会場辺り一帯には、崩壊した金網ドームの金具や鉄骨や破片が散らばり、ようやく静寂が全てを包みこみ始めます。
「ア、アニキ?」
「ヨハネ!?」
「洗礼者ヨハネ様!?」
避難したヘロデ、それにヘロディアとサロメは、心配になってリング中央を見ます。するとそこには、頭部からリングへ真っ逆さまに叩きつけられた、バラバの大巨漢が逆さに立っていました。その横には、息も絶え絶えなアニキが、かろうじて両膝に両手を付いて立ってました。
「やったーーーーーーー!!アニキーーーーー!!!!!」
「サロメちゃん!見た!?ヨハネが勝ったのよ!!!」
「あああ!洗礼者ヨハネ様!!!心よりお慕い申し上げます!!!」
敗北したバラバの姿を見つけたカヤパとピラトゥスは、唖然としながらも悔しがります。
「キィーーーーーーー!!!!バラバのできそこないめ!!」
「ゲヘヘヘヘヘヘ~!ヨハネを倒せないとは!使えない木偶の坊だ!」
勝利を確信したヘロデ、ヘロディア、サロメの三人は、リング中央に駆け寄ってアニキに祝福の言葉をかけ始めます。アニキは喜ぶ三人に親指を立て、ナイスなウィンクをかましました。しかし、さすがに体力のほとんどを竜巻に使ってしまったため、片膝を床に落としてしまいました。
「アニキ!?大丈夫っすか?」
「あ、ああ。さすがに巨漢のバラバを担ぎながらの。タイフーン・バーニングハンマーアタックは、自らの体力を消耗させたぜ」
その時でした!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
「!?」
「な、なに!?」
「お母様、怖いですわ!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
脳天から真っ逆さまに叩きつけられていたバラバが、なんと息を吹き返して立ちあがったのです!
「ウガァアアアアアアア!!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
なんとバラバは脳天から大量の血しぶきを出しながらも、リング中央に立ちあがったのです。しかもその目つきは異様な憎しみに侵食され、もはや野獣のような恐ろしい目つきになっていました。さらにバラバの体からは黒紫のような邪気が現れ、徐々に会場全体を覆い始めます。殆どの体力をコークスクリュー・バーニングハンマーに使いこなしたアニキでしたが、フゥーっと一つ溜息をつき、再び戦闘態勢に入ります。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
「ア、アニキ!?何のつもりですか!?」
「ヘロデ、ヘロディアとサロメを安全な場所へ避難させろ!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
「で、でもアニキ!今のままでは?」
「いいから!早くこの場から避難しろ!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
「そ、そんな!アニキ!」
「見てみろ!奴の目を!こいつはもう、あの優しきバラバではない!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
「!?」
「憎しみに自分の全て売り飛ばした魔物だ!こうなっては俺以外に、バラバを止めることはできん!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
「それならアニキ!俺も加勢します!」
「だめだ!すぐにこの場から離れるんだ!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
「でもアニキ!完全に力を使い果たしたのに、これ以上闘ったら完全にやられる!!」
「ヘロデ!これは俺とバラバとの戦いだ!関係のないお前が、巻き込まれる筋合いじゃない!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
「しかし!アニキ!」
「ヘロデ!よく聞け!お前は国を統べる国王だ!この国の民を生かすも殺すもお前のさじ次第!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
「そして万が一!この俺に何かがあった時!その時は、ナザレの元大工の小僧に任せるんだ!!」
「ナ、ナザレの元大工!?そ、それって!?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
「そうだ!あの、今巷で噂になっている、『愛の伝道師』の事だ!」
「愛の伝道師!?」
「奴ならきっと俺とは違う形で、この腐りきった世の中を救うはずだ。。。」
「ア、アニキ!!!!?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
「いいかヘロデ!ナザレの大工だけは!決して殺すんじゃないぞ!!!どんなことがあっても!お前が後世に笑われようとも!絶対に奴を生かしておくんだ!」
「わかりました!アニキ!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
「後は頼んだぞ、ヘロデ。。。」
「アニキ!!!!」
数回深呼吸したアニキはゆっくりと目を閉じ、一歩、そしてまた一歩と前へ歩いて行きます。バラバの邪気はまるで牙をむき出した獣のごとく、喰らいつくようにアニキの全身を取り込んでいきました。
「いやーーーーーーー!!!洗礼者ヨハネ様ァアアアアアア!!!」
「さぁサロメちゃん!逃げるのよ!」
「嫌です!お母様!私も洗礼者ヨハネ様とお供します!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
「ヘロディア!どうしたんだ?!」
「あなた!だめです!サロメが言うことを聞いてくれません!」
「サロメ!来るんだ!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
「嫌です!私は洗礼者ヨハネ様と一緒に、スーパーダークに死にます!」
「何を馬鹿なことを言っているんだ!伯父さんと一緒に外へ逃げるんだ!」
「スーパーネガティブです!サロメを置いて逃げてください!私はここでヨハネ様を思いながら、死にゆく者へ祈りを捧げます!」
パチン!
「!?」
ヘロデはサロメの頬を叩きました。
「ヘロディアの娘は俺の娘だ!お父さんの言うことを聞きなさい!」
「お、お父様。。。」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
そして、ヘロデはサロメを連れ、ヘロディアと共にエルサレムの神殿外へ逃げ出したのです。
「アニキ、どうかご無事で。。。」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
ゴギャーーーーーン!!!バキャーーーーーン!チュドーーーーーーーーンン!!!!
ついにバラバの邪気は大きなドームとなって、エルサレム神殿の全てを覆い囲んでしまったのでした。
続く




