第六十一話
今まさに、ヘロディア皇妃と娘のサロメちゃんが、ピラトゥス総督の刃によって殺されそうな時でした!
「まてぇーい!」
「!?」
二人の浮浪者が、エルサレム神殿の扉をバタン!と足蹴りで開けたのです。
ドーーーーーーン!!!
「だ、誰ザマス!?そこの汚い浮浪者達は!?」
「フッフッフッフッフ、カヤパにピラトゥス!まさかこの俺を!忘れたとは言わせないぞ!!」
「ま、まさか!?その声は!」
ガバッと脱ぎ捨てたその衣服から現れたのは、あのアニキ・ザ・ヨハネと愛弟子ヘロデだったのです。
「あ、あなた?」
「あああ!洗礼者ヨハネ様!!」
アニキとヘロデはなぜかプロレスラーの格好で両腕を組み、ニンマリとしながら仁王立ちしています。すかさずアニキとヘロデの存在に気が付いたピラトゥスは、卑怯にもヘロディアとサロメを捕まえました。
「きゃぁ!何をするのよ!このガマガエル!」
「いやーーん!スーパーダークにキモい!!」
ジタバタする二人ですが、しかしピラトゥスは離す様子も無く、いやらしいヨダレを垂らしながら笑っています。
「くっそ!ピラトゥス!その二人を直ぐに離すんだ!」
「ヘロデ!貴様、誰に向かって偉そうに指図をしているんだ!?」
「クッ!」
「仮にもこの国は、我らローマ帝国に支配されているんだ!そしてこの国の総督は、このワシなのだぞ!」
しかしヘロデは腕を天高く掲げ、48の殺人技であるダブル・ラリアットで勝負に挑もうと駈け出しました。しかしピラトゥスは、捕まえた二人の喉元に半月刀を突き付けたのです。
「おーーーっとヘロデよ!それ以上、こちらにくれば、こいつらの命は無いぞ!ゲヘゲヘゲヘ~!」
「汚いぞ!ピラトゥス!」
「汚いのはどちらだ?!宴会と称してこのワシを暗殺しようとしたメス豚共の方か、それとも重罪の二人を始末しようとするこのワシか?!ゲヘゲヘゲヘ~!」
するとカヤパも便乗して口を開き、ヘロデを非難し始めます。
「ヘロデ!今まで散々ローマ帝国の恩恵に預かっていたくせに、今更身内の謀反人を救おうだなんて虫が良過ぎるザマス!」
「だからと言って!!」
「ローマ帝国の総督への暗殺未遂は死刑ザマス!」
「。。。」
カヤパの指摘は的を得ており、ヘロデはグーの音も出ず立ちふさがるしかありません。しかし横にいたアニキは、まるで高揚感を楽しんでる様子でした。
「ぐわっはっはっはっは!!ヘロデ、奴らに言われっぱなしで情けないな〜」
「ア、アニキ?!」
「ヘロディア!サロメ!貴様らもピラトゥスの暗殺計画を企てたんなら、命懸けだったはずだぞ!」
ピラトゥスに捕まってるヘロディアもサロメちゃんも焦ってます。
「お前ら二人の命と引き換えに、ピラトゥスの圧政が無くなるんだ!むしろ光栄と思いやがれ!ぐわっはっはっはっは!」
「ちょ、ちょっと!アニキ?!何を言ってるんですか?!」
「大体、あの置き手紙には、捜さないでくださいって、書いてあったじゃねぇーか!それなのに、今更俺やヘロデに助けてもらおうなんて、カヤパの言うようにムシが良過ぎるな!この際、そんな恥をかいて生き続けるなら、堂々と死んじまったほうがマシじゃねぇか!?二人とも!」
アニキの心無い言葉に、サロメちゃんは横でショックを受けて蒼ざめてます。しかし、流石にそれを聞いたヘロディアは、カーーっと頭に血が上って、アニキに怒り出しました。
「ヨハネ!さっきから黙って聞いてれば、随分な言い方じゃない!それでもあんたはユダヤ司祭の息子なの?!」
「あーその通りだ!」
「血も涙もないじゃないよ!」
「誰が助けてやるか!だからどーした!?」
サロメちゃんは、愛しのヨハネ様に突き放され、ショック過ぎて俯いてしまいました。しかしアニキは鼻くそほじくってます。その挑発的な態度に、さらに怒り出すヘロディアさん。
「だ、だからどーしたですって!?仮にもあたしはこの国の皇妃よ!こんな危機だっていうのに、呑気に鼻くそほじくってるんじゃないわよ!今すぐ助けなさい!」
「ケッ!偉そうに助けなさい、だなんて抜かしやがって!それが人に助けを求める人間の態度かよ!?」
「態度とか関係ないじゃないの!大体、無職のプロレスラー崩れが、パンクなんて偉そうな事を抜かしてる割には、女の二人も助けられないだなんてお笑い種ね!」
「ウルへー、ヘロディア!大体、俺はおめぇーみてーな高慢チキのビッチが、昔っから大っ嫌れぇーだったのさ!
言葉の猛襲を続けるこの二人の言い合いに、ピラトゥスもカヤパも、そして夫のヘロデさえも入る余地はありません。間髪いれずアニキとヘロディアは、互いを罵り合っていました。すると、ショックを受けて蒼ざめてたサロメちゃんが、とうとうふるえだしまし。
「ひ、ひどい。。。洗礼者ヨハネ様が、私を見捨てるなんて。。。」
「そうよ!サロメちゃん言う通りだわ!筋肉バカヨハネ!あんたの方こそ死んじまえ!」
「ひどいよ、ひどいよ。。。」
「そうよ!そうよ!」
そしてとうとうサロメちゃんは泣き出しました。
「ウワァアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンン!!!!!」
「な、なんザマス!?」
「ウワァアアアアアアアァァァアアアアーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンン!!!!!」
「グヘグヘ!!何という泣き声だ!」
「ウワァアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンン!!!!!」
「サ、サロメちゃん??ちょ、ちょっと、今泣かなくても!」
「ウワァアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンン!!!!!」
「キィー!うるさいザマス!」
「ウワァアアアアアアアァァァアアアアーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンン!!!!!」
「カヤパ!この娘を泣きやめさせろ!」
しかしサロメちゃんは泣き止むどころか、ますます声を張り上げて大泣きです。そんな様子を、まるで待ってましたかのように、アニキは瞬時の速さでピラトゥスに駆け出しました!
「し、しまった!!!」
「遅いぜガマガエル!」
サロメとヘロディアを捕まえていたピラトゥスの両腕を、アニキは思いっきりドロップキックで弾き飛ばし、二人を救うとすぐにヘロデに放り投げます。
「ヘロデ!二人をキャッチしろ!」
「流石、アニキ!!」
アニキに助けられて放り出された二人を、ガッチリとしっかり捕まえるヘロデ。そして、アニキはすぐさまピラトゥスの前に回り、彼の両腕をしっかり掴みました。
「喰らえ!これが俺様ヨハネ流48のプロレス殺人技の一つ!」
「何だと!?」
「サンダーヴォルトニング・スーパー・ダブルアーム・スープレックス!!!」
続く




