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第五十七話

「リベカァアアアアア!!!」


ベトエルは直ぐにリベカの元へ走り、ギリギリの処でリベカをキャッチして、崖から突き出た木を掴みます。


「父ちゃん!!」

「リベカ!怖かっただろう?」

「うん!怖かった!」


しかし安息もつかの間、崖から突き出た木が、バキバキと軋み始めました。すかさず駆けつけたバラバが、必死に手を差し伸べました。


「ベトエル!おらの手に掴まるんだ!」

「バラバ!先ずは、リベカを!リベカを先に引き上げてくれ!」

「分かった!」


ベトエルはおもいっきり片腕でリベカをバラバの手の方に投げ、バラバは必死にリベカを掴みました。


「やった!!」

「リベカ!!」

「ベトエル!リベカを掴んだぞ!」


バラバはリベカを安全な場所に避難させ、そして今度は必死にベトエルを救おうとします。しかし先ほど軋んだ木の枝が、更に軋み始め、眼下に広がる断崖は、まるで誰かを待ち構えているようでした。


「まずい!枝が軋み始めた!」

「ベトエル!おらの手にジャンプするんだ!」

「くっそ!!!」


だがその時でした、先ほどバラバがユダの怒りに地面を叩き壊した影響で、突然ガキにも亀裂が入り始めました。そしてその勢いでベトエルがしがみ付いてた枝も、根元から抜け出してしまい、さらに下へとずり落とされてしまいます。


「うわ!!!ぁ」

「ベトエル!!」


何とか腕一本で、崖の岩にしがみついているベトエルでしたが、とても助けに行けるような距離ではありません。


「村人のみんな!!ベトエルを助けるぞ!」

「おおおおお!!!」


バラバの掛け声とともに、村人が一致団結でベトエルの救出を始めます。それらの様子を鼻を鳴らして見ているユダ。


「ケ!そんな事やったって、あいつはどうせ死んじまうんだ!いや助けようとした全員が、巻き添えを喰らうことだってあるんだぜ!?止めとけ!止めとけ!」


だが、村人全員はユダの言葉など聞く耳を持ちません。老若楽男女、全てが強力を惜しまないで、ベトエル一人の命を救う為に死力を尽くしていました。


「バ、バカめ!俺のことなんかすっかり眼中に無いでやんの」


唾を地面に吐いたユダは、クルリと背を向いてベタニア村を去りました。そして一刻の時が経ち、ようやくベトエルが救われました。


「お父ちゃん!」

「リベカ!!!」


二人は涙ぐみながら、ガシっと抱き合います。村人達は、命辛々でリベカとベトエルを救ったバラバを称賛しました。


「バラバよ、おぬしはなんという勇気のある男じゃ!」

「そ、村長さん。おらはただ、二人を救いたくて」

「みなまで言うな。おぬしは清い心の持ち主じゃ。わしらベタニア村は、おぬしをゴリアテに立ち向かった英雄ダビデ様の生まれ変わりじゃ!なぁ村の衆?」


村人達はバラバを称賛します。


「おお!そうだ!そうだ!」

「バラバはダビデ様の生まれ変わだぜ!」

「その怪力は、困った人を救う為に、神様から預かったものだぜ!」

「バラバはベタニア村の誇りだ!ユダのクソ野郎に比べたら、天と地の差じゃねぇか!」

「そうだ!そうだ!ユダのゲス野郎は最低だ!」

「リベカを崖に投げやがって!そう言えばユダのクズ野郎は、どこ行った!?」


辺りを見渡しましたが、ユダの大馬鹿野郎はいませんでした。村長は真っ赤に膨れて激高しました。


「あの小僧!!逃げやがって!!今度という今度は、生かしてはおけん!!みんな!ユダを探すんじゃ!」

「おーーー!!!」


すると、ドドドドドドドとベタニア村の入り口に二頭の馬が訪れてきました。赤く長い鶏冠を持つ兜を被り、筋肉質な胸板と腹筋が刻まれた甲冑を装備し、深紅のマントを煌びやかに靡かせるローマ軍の百人隊長ロンギヌスと、その部下カッシウスがやってきたのです。


「ローマ軍だ!」

「な、なんじゃと!?」


続く

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