第五十四話
「救世主ユダ様!おめぇは何をしているんだ!?」
「バ、バラバか!?」
キャンプファイヤーの炎にリベカを押し出しているユダの姿を見て、バラバは怒り心頭です。
「リベカを離せ!!」
「お、おい。何を怒っているんだよ~」
バラバは今にもユダを殴りかかる勢いでした。さすがに脅威を感じたユダは、リベカを離してあげます。リベカは泣きながらバラバに抱きつき、バラバの腕の中で震えだしました。
「おめぇは救世主のくせに、なんて酷い事をするんだ!」
「冗談じゃねぇか、冗談♪それにしても、バラバ、おめぇまさかそんなロリコンが趣味だったとはな」
「なんだと!?」
「冗談だって。火も消してやっからよ」
ユダは飲んでる酒をぶっきらぼうに、キャンプファイヤーの中へ放り投げました。すると炎は一段と大きくなり、畑はさらに燃え広がりだしたのです。
「や、やべ!スピリタスだった!」
ユダはスタコラサッサと逃げ出してしまいました。
「あ!逃げた!バラバ、追いかけないと!」
「ダメだ!先ずは、ベトエルの大切な畑を守るのが先だ!」
「え!?でもどうやって?」
「おらに任せろ!」
するとバラバは全身に水を被って、大きくジャンプしながら、燃え上がる炎の上からへ突っ込んだのです。
ズドーーーーーーーーーーン!!!
大きな地響きとともに、バラバは自分の全身をバタバタと動かしながら、火傷することを我慢しながら全ての炎を消そうと努力しています。
「うぐぐぐぐ!」
「バ、バラバ。。。」
なかなか消えない炎を、バラバは何度も地面を叩いて消そうと努力しています。その涙ぐましい姿に、リベカも両手を口に添えて心配しています。するとシナゴーグから駆けつけたベトエルや村長達がやってきました。
「リベカ!大丈夫か!」
「お父ちゃん!」
ベトエルは妻と一緒に耕してきた畑が、炎で燃やされてしまう事に怒りを感じ、村長はバラバの姿を見て、ますます嫌悪感を示します。
「バラバめ!俺の大切な畑を!!!」
「くっそ!!やっぱり、あの大男が火事を起こしたのか!!許せん!!!」
村人達はバラバに敵意と殺意を抱きはじめました。しかし、リベカは彼らの前に立ちはだかり、両手を大きく広げて制止します。
「違うのお父ちゃん!」
「どけ!リベカ!もう許せん!」
「そうじゃ!おぬしの父親は、この畑を大切に耕してきたのじゃ!それなのにあのバラバは!」
「違わう!バラバは畑に火を付けたんじゃないの。今、炎を一生懸命消しているのよ!」
「な、なんじゃと?」
良く見ると、だんだん炎は弱まってきました。真っ黒焦げになりながらも、バラバは小さい火の粉まで、丁寧に消しています。しかし全身を使った消火活動は思いのほか火傷を被ってしまい、全ての火を消した後、バラバは倒れてしまいました。
「バラバーーーーー!!!?」
リベカはそんなバラバの元へ、一心不乱で駆け寄りました。
「おらは全部火を消せたか?」
「うん、全部消せたよ!」
「そっか、よかったよかった」
「わーーーん!バラバ、死んじゃ嫌だー!嫌だよー!」
気を失ったバラバの傍で泣きじゃくるリベカ。彼女の父ベトエルは倒れたバラバの様子を伺い、まだ生きている事を確かめます。
「大丈夫だ、リベカ。安心しろ」
「本当に?父ちゃん本当に?」
「ああ、さすが怪力バラバだ。火傷はしているけど立派なもんだ」
「良かったーーーーー!」
今度は嬉し泣きで父ベトエルに抱きつくリベカ。周りにいた村人達も、火事の犯人としてバラバを疑ってしまって事を後悔している様子でした。
「村長さん」
「なんじゃ、ベトエル?」
「バラバの手当てをしてもいいかい?」
「うむ。。。そうじゃな」
「悪いけど、俺一人では持ちあげられないから、みんな手伝ってくれ」
こうして村人達は協力して、火傷だらけのバラバを運んでいきます。それらの姿を一人見ている村長は、燃えクズやカスの様子を調べていました。するとそこには、あのユダに捧げたコップがありました。
「やはり、あやつが犯人か。。。」
沸々と湧きあがる疑惑は確信へと変わり、村長は眉間に皺を寄せながら、犯人に対して激しい怒りを燃えたぎらせていたのでした。
続く




