第五十三話
ベタニア村で美女とベロベロチューしまくりのユダに対し、心優しいバラバは、少女リベカと温かい交流を育んでいました。
「ダメよ、バラバ。そんなに力を入れて牛を引っ張っちゃ」
「そうなのか?リベカ」
「そうよ。牛だってちゃんと生きているんだから、優しく扱ってあげないとね」
なかなかおませさんなリベカは、彼女の父ベトエルの農場で手伝いをするバラバに、色々と人間らしい事を教えてあげてます。最初は嫌悪感を示していたベトエルも、堅実で実直に農作業をするバラバの性格に、少しずつ心を開くようになっていきました。
「バラバ、あんたは本当に力持ちだな~」
「そっか?でも畑を耕すのは、なかなか難しーな」
「そんだけ力持ちなら十分さ。死んだうちの妻も喜んでるだろうさ」
「死んだ?おめぇの奥さんは死んじまったのか?」
するとベトエルは少し俯き加減に娘のリベカを眺め、バラバにそのいきさつを話し始めました。
「ここの畑はな、三年前に死んだ妻と一緒に丹精込めて耕してきたんだ。ところがリベカを産んだあいつは、その後病に倒れてな」
「そうだったのか。。。」
「リベカは殆ど母親の顔を覚えていないんだ。だから俺は男で一人でリベカを育てて、あいつと一緒に耕した畑を大切にしているんだ。それが、先に逝っちまったあいつの願いだと思ってな」
「その話を聞いたら、おら、ますます頑張って畑を耕したくなった!」
「そうか!それは嬉しいな!宜しく頼むよ」
「まかせろって!」
するとベタニア村の村長が、ベトエルの農場へやってきました。
「ベトエル、今大丈夫か?」
「村長、どうしました?」
「夕方くらいにシナゴーグへ来てくれ。話し合いがある」
「一体なんです?」
すると農作業を手伝うバラバの姿を見るなり、どこか不機嫌そうな態度でした。
「お前はあんな男に農作業を手伝わせているのか?」
「ああ、バラバの事ですか。最初は凶暴そうな輩だと思いましたが、これがなかなか真面目な男でして。うちのリベカも随分と心を開いておりますよ」
「気をつけろ、奴は食料を奪ったあのユダの仲間だ。また何をしでかすか分からんぞ」
「ですが」
「不用意に人を信用するんじゃない」
「分かりました」
ベトエルの見つめる先には、優しくリベカと接するバラバの姿がありました。さて、夕方になり、村の中心部にあるシナゴーグでは、村の男達が集まって話し合いを始めています。
「今日ここに集まったのは他でもない。あのユダという男についてだ」
ガヤガヤガヤガヤ、ざわざわざわ。
「奴は一週間分の食料を賭けと題して奪っただけでなく、次から次へと村の美女に手当たり次第手を掛けておる。これは由々しき事態だ」
「そうだ!昨日なんかうちの娘に手を付けやがって!お陰で娘は嫁入り前だというのに、めっきり元気がなくなっちまった!」
「あのくそったれは、うちのカカアにまでも手を出そうとしやがった!一体何様のつもりだ!」
「ただでさえローマに納める税金で圧迫しているのに、このままあいつらを村に置いては被害が増えるだけだ!」
「そうだ!そうだ!なんとか奴を追い出す手立てを考えなければ!」
すると村長はみんなの意見をまとめ、ユダとバラバを村から追放しようと投げかけたのです。
「しかし、村長。我々は奴との賭けに負けた。約束を破れば神からの怒りを買うかもしれない」
「それにあの大巨漢のバラバが暴れたら、我々はひとたまりもないぞ!」
「なんとか、あのユダを追い出す方法を考えなければ」
その時でした、ある村人が慌ててシナゴーグに入ってきました。
「た、大変だ!火事だ!火事だ!」
「なんじゃと!?どこでじゃ?」
「ベトエルの農場から、火の粉が上がってるんだ!」
「なに!!!!?」
村長を含めた村人達はシナゴーグの外に出ると、ベトエルの農場のある方角の夜空には、確かに火の粉が上がっておりました。
「リベカ!!!」
ベトエルは急いでリベカの元へ帰りました。さて、火の粉が上がっているベトエルの農場では、酒で悪酔いしたユダが美女を連れ立って、なんとキャンプファイヤーをしてやがりました。
「もーえろよ~、もえろーよー♪炎よ燃ーえーろ~♪ってか?ギャハハハハハ~!」
「ユダさーん、こんな事して大丈夫?」
「そうよ、ユダさーん。ここはベトエルの大切な農場よ」
するとユダは突然機嫌が悪くなって、怒り出します。
「ばっかやーろ!キャンプファイヤーぐらいなんてこたーねぇって!」
「でも。。。」
「大体、俺達は賭けに勝ったんだ~!一週間分の食料を食べようが燃やそうが、俺の勝手だ!ギャハハハハハ!」
家で寝ていたリベカは、畑から火の粉が上がっている事に気が付きました。
「あああ!畑から火が出てる!大変だ!」
リベカは急いで外に出ます。すると、案の定、そこにはキャンプファイヤーをして馬鹿騒ぎしているユダがいました。あまりにもけしかんらんユダに対して、リベカは怒り心頭でした。
「コーーーラーー!あんた!父ちゃんの大切にしている畑に、なんてことするのよ!?」
「ああん?」
「今すぐその火を消しなさい!」
「なーんだ?そこのミルク臭いガキは?」
千鳥足ながらも、ユダは酒をかっ喰らい、リベカを睨みつけました。
「俺達はキャンプファイヤーを楽しんでるんだ。ガキは引っ込んでな!」
「いいえ!今すぐ畑の火を消して!」
「ったく、苛つくガキだ!火の中にいれちまうぞ!」
「え!?」
ユダはリベカの首根っこを捕まえて、ズルズル引きずりながらキャンプファイヤーの傍まで連れて行きます。
「やめてーー!!いやだーーー!」
「ケッケッケッケ!怖がるくらいなら逆らうんじゃねぇよー!クソガキが!」
「やだーー!助けてーーー!バラバ!!!!」
「何???」
するとユダの後ろには、大きくユダを睨んだバラバが立っていたのでした。
続く




