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第四十八話

悪徳総督ピラトゥスが去った後、暫くしてヘロデ国王が長い旅から帰って来ました。


「帰ってきたぞ~!」

「あなた~!!!」

「(FACEBOOK近況)ヘロデ叔父さ~ん!」


ヘロディアとサロメは泣きつくように、ヘロデ王へ駆け寄ってきます。満面の笑みを浮かべながら、両手を広げて二人を受け止めようとしました。


「いや~留守にしてて、本当に悪かった悪かった。お詫びとして、お土産に折詰弁当だな。。。」


ドカ!ボコ!ズカ!


しかし二人から袋叩きに合うヘロデ。怒りに震えたサロメちゃんなんか、ヘロデの腹部にナイフを突き立ててる始末です。


「痛いじゃないのぉ~、もう!ヘロディア、サロメ。いきなりな、何をするんのぉ~!?」

「冗談じゃないわよ!そんな、折詰弁当で私達を誤魔化そうだなんて、そうは問屋がおろさないわよ!」

「(FACEBOOK近況)そうです!ヘロデ叔父さん!かなりスーパーダークだったんです!」

「あなたがいない間、私達は大変な事に巻き込まれたのですから!」

「な、なんだと!?」

「あのピラトゥスがやって来たのよ!」


二人を落ち着かせたヘロデは、今迄にあった経緯を初めて聞きました。その横では、ピラトゥスにボコボコにされたパウロもつっ立てます。


「それでヘロディア、お前はこのパウロと共謀して、アニキを殺そうと企んだわけか?」

「はい。ですが計画に失敗したパウロは、途中でピラトゥスに見つかり。。。」

「馬鹿野郎!!!」


ヘロデの出した大声に、ヘロディア、サロメ、パウロはビクつきました。ヘロデにしては意外な怒りです。


「なんて身勝手な事を!お前達が殺そうとしていたアニキがもしいなかったら、とっくにピラトゥスに殺されてたじゃないか!」

「。。。」


自分の浅はかな企みに、何も口答えできないヘロディア。その横にいるパウロも、視線を床におろしながら反省をしておりました。


「それで?アニキはどうしているんだ?」

「ピラトゥスが去って以来、ずっと牢屋の中で筋トレしているわ」


アニキがいる地下牢屋に降りていくヘロデ。格子の中では、アニキがせっせと筋トレに励んでおりました。


「アニキ!」

「おお!ヘロデ!戻ってきたのか!?」

「はい!」

「それで、ナザレの坊主はどうだった?」

「彼はメシアと呼ばれておりましたが、自分は『愛の伝道師』でしかないと言ってました」

「そうか。やっぱりあいつらしいな」


アニキは両腕を組んで、うんうんと頷いています。しかし、ヘロデはそんなアニキを心配そうに眺めていました。


「アニキ、先ほどヘロディアから聞きましたが、ピラトゥスがやってきたそうですね?」

「ああ、悪徳デブゴン総督ガマガエルのピラトゥスがな、だが追い払ったわ!ガッハッハッハッハッハ!」

「アニキ!すみませんでした!!!!!」


ヘロデは土下座を突然して、アニキに頭を下げました。しかし、アニキは不思議そうにその様子を眺めています。


「おいおい、ヘロデ。どうしたんだ?いきなり土下座なんかして」

「ヘロディアから全てを吐かせました。あいつはパウロと共謀して、アニキを殺そうと企んだみたいです。ところがローマから高官を連れてこようとしたところ、パウロはピラトゥスに見つかったらしく。。。」

「なーんだ、そんな事か。ガッハッハッハッハ!」

「へ?」


アニキは大きく笑い出しました。


「お前を大工の坊主の元へ行かせた時、すでにお見通しだったわ!」

「なんと!」

「あのガマガエル総督のピラトゥスを呼び寄せてくれたのは、嬉しい誤算だったわ!罠に掛かった振りをして良かったぜ、ガッハッハッハッハッハ!」


さすがアニキ・ザ・ヨハネ!

エルボーアタックと見せかけてラリアットをかますように、対戦相手に裏をかく技の繰り出し方は超一流です。


「大体、ヘロデ。お前がそんな弱腰だから、いつまでもヤクザ・ローマ帝国に舐められっぱなしなんだよ」

「確かに、そうかもしれないっす。だが、ヤクザのローマ帝国相手に、どうやって太刀打ちすればいいですか?!」

「そんなのガツンと中指を立ててだな、ドロップキックをかましてやればいいのさ!ガッハッハッハ!」


しかし、ヘロデは浮かない顔を浮かべ、俯いてしまいました。


「どうした?ヘロデ」

「何でもないっす」

「嘘をつけ、何かあるって顔してるじゃねぇーか」

「羨ましいんですよ!!」


心配したアニキの目に映ったものは、ヘロデの頬を伝う悔し涙でした。


「親父がローマ帝国に媚びたばっかりに、ピラトゥスのような悪徳総督やカヤパのようながめつい連中のやりたい放題!僕だって、圧政に苦しむ民の為に、剣を取り立ち上がって、ローマ帝国をぶちのめしてやりたい!」


その屈辱感に耐えるヘロデの言葉を、たまたま通り掛かった妻ヘロディアが、扉の物陰から耳にしました。その後ろから、娘のサロメちゃんも聞いてます。


「でも、僕はユダヤの国王だ!守るべきものがありすぎるから、それは無理なんです!だから、自分の思うがままに生きてるアニキや、愛と自由を謳歌している大工の息子が、本当に心の底から羨ましいんですよ!!」


ヘロデの発した心の叫びは、パウロのいる場所にも響いていきました。そしてそれを全部受け止めたアニキは、片眉だけを上げて応えます。


「おい、ヘロデ。お前は、何か勘違いをしていないか?」

「え?」

「お前の偉大なる親父は、闇雲に喧嘩を売ってたハスモン連中を倒し、ローマ帝国と強調路線を取って、エルサレムの神殿を立て直したじゃねぇか」

「。。。」

「ローマ帝国に媚を売ったわけじゃない。守るべき民の為に立ち上がって、ギリギリの所で防いでくれてたんだ」

「アニキ。。。」

「それなのに、クソと文句ばっかり垂れ流し、毎日腐るように生きてる連中が多過ぎるんだ。昔のお前もそうだったろう?だから、俺や大工の坊主は啓発しているのさ」


アニキは人差し指を天高く上げました。


「いいか?ヘロデ!これだけは覚えておけ!」

「はい!」

「『豚となって楽しむより、人となって悲しむべし』だ!」


アニキもまた、大工のあんちゃんと同じように、ギリシャの哲学者ソクラテスの言葉を引用したのです。その言葉は、物陰で聞いていたヘロディアやサロメ、そしてパウロにも届きました。


「ピラトゥスのような豚になりたくなければ、自分の立場で為すべき事に励み、そして自分が出来る事に、最善を尽くすんだ!」


その言葉に感化されたヘロディアは、夫ヘロデの為に立ち上がるのでした。


続く



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