第四七話
アニキはプロレスの組み手のまま、両腕を上げてピラトゥスを待ち構えています。しかし、ローマ兵の百人隊長に促されたピラトゥスは、屈辱に嫌悪感を示しながらも、その場を去る事にしました。
「どうした?ピラトゥス?!」
「この屈辱は必ずや報いるぞ!」
「やれるもんなら、やってみろデブゴン!いつでも相手になってやる」
しかしピラトゥスは何かを思い出したように、突然勝ち誇って笑い出しました。
「ゲヘゲヘゲヘゲヘゲヘゲヘ~。それほど強気であるのなら、貴様のパンク・ファン達がどうなってもいい覚悟があるのだな?」
「なに?」
「このままオメオメとローマ帝国の我らが、引き下がると思ったら大間違いだ!」
「ガマガエル!!!貴様!何を考えてやがる!?」
「ゲヘゲヘゲヘゲヘゲヘゲヘ~。所詮貴様らは、我らローマ帝国の属州民である事には変わりない!浮浪者ヨハネ!あとで吠えづらかくなよ!」
再び嫌しい笑い声を上げながら、ローマ兵士達を率いるピラトゥスは、ヘロデの城を後にしました。後に残されたアニキ、ヘロディアとサロメ、そしてボコボコにされたパウロ。悪徳総督に与えられた、先行きの不安と嫌な予感が、彼らの胸中に忍び寄ってきたのです。さて、その頃、主人公である大工のあんちゃんはというと。。。
「フィリポ、やっぱりルパン三世の劇場版映画と言えば、マモーが出てくる第一作の『ルパンVS複製人間』が最高だよな~」
「いや、リーダー。やっぱり『カリオストロの城』でしょう?」
「かぁ~!お前は若い。いいか?ルパンと言えば、どんなに酷い目にあっても不二子ちゃん一筋なわけよ。そのルパンが、初めて不二子ちゃんから愛の告白をされるわけよ~。最高だろう??」
「ええ!そんなの、ラストシーンの銭型警部の名セリフの方が最高でしょ~」
「いやー、フィリポ。大体、そっちの不二子ちゃんには、男を誘う色気が無いんだよ~」
「いやいや、リーダー。それならそっちのルパンなんか、馬ヅラじゃん!」
横でそれらを聞いていたペテロと弟アンデレは、もう、すっかり日常茶飯事なので気にもしておらず、バルトロマイに、次に訪れる予定のベタニア村の行き先を尋ねていました。
「ペテロ兄ちゃん、なんだかバルトロマイは、さっきからiPhone5を持って、うろちょろしているけど、大丈夫かな?」
「しょうがねぇな、バルトロマイの奴。あいつ、またTwitterばっかりやってるんじゃねぇか?」
「おーい!バルトロマイ、ベタニア村はどっちなんだよー?」
しかしiPhone5を何度も確認しては分からず、両肩を上げてお手上げの状態です。
「ったく、なーにやってるんだよ。Twitterばっかりやらせるために、お前にiPhone5を買ったんじゃねぇんだぞ」
「(呟き)違う。地図が役に立たない」
「なに?それは本当か?」
「(呟き)ここを見てくれ、ペテロ。ベタニア村のはずなのに、ガンダム村になっちまってる」
確かに、iOS6から搭載されたAppleの地図には、なぜかベタニア村がガンダム村になっておりました。
「こりゃ、ひどいな、アンデレ」
「うん、兄ちゃん。ローマ帝国の兵士達が作った地図より酷いや」
「(呟き)ここは川のはずなので、中央線が通過しているんだ。どうすりゃいいて」
悩んでいる三人の後姿に、あんちゃんはようやく気が付いて近づきます。
「おう?どうした、三人衆」
「おお大工、良いところにやって来た。これを見てくれ」
「なんだ?なんだ?」
あんちゃんはiPhone5のめちゃくちゃな地図を見せられます。他の三人は深刻な顔して困ってましたが、なんと、あんちゃんだけが突然笑い出しました。
「ダハハハハハ~!なんだこれ、ガンダム村って。静岡県のガンプラ工場の事か?ダハハハハハハ~!」
「おいおい、笑い事じゃねぇだろ、大工」
「そうだよ、リーダー。僕ら道に迷ってるんだから」
「(呟き)それに、リーダーのライブ申請をする為に、ベタニア村に行く必要がある」
しかしあんちゃんは全く聞いてはおらず、地面を叩きながら、腹を抱えて笑い転げてます。
「ダハハハ、笑いがとまんねぇよ」
「おい、大工。どうするんだ?」
「え?そだな、ペテロ。とりあえず、指でも舐めて、風向きを考えながら、前に進んだら?」
「はぁ!?そんなんじゃ、いつまで経っても彷徨い続けるぞ」
するとあんちゃんは突然真顔に戻って、ペテロにある言葉を引用しました。
「はい問題です。『私は豚となって楽しむより、人となって悲しみたい』誰の言葉だ?」
「え?」
「チッチッチッチ、5秒~♪」
「え、えっと、だれだっけか」
「チッチッチッチ、10秒~♪」
「あああ!えっと。アンデレ、分かるか?」
「チッチッチッチ、15秒~♪」
「えーっと、えーと。バルトロマイ!」
「チッチッチッチ、20秒~♪」
「(呟き)リ、リーダ。ネット検索はダメっすよね?」
「ブッブ~!!!時間切れ~♪」
あんちゃんは楽しそうに両手でバッテンを作って、三人にダメ出しをしました。
「ギリシャの偉大なる哲学者、ソクラテス先生の御言葉だろうが」
「ああ~!」
「そっか、そうだ」
「(呟き)いきなり言われたから」
三人はあんちゃんの言葉に、ポンっと手を叩いて納得しています。しかしあんちゃんの視線だけは、とってもクールです。
「お前ら、俺がソクラテス先生の御言葉を、どうして引用したのか分かってるか?」
「へ?」
「うーん」
「(呟き)なんでだろう?」
「つまりお前らは豚となって楽しているってことよ」
あんちゃんは両手を大きく開いて、壮大な言葉をしゃべりました。
「お前らは何かあれば、困った困ったという。それで、直ぐに人のせいにしたり、努力もしないで助けを求めちまうんだ」
「.......」
「今回だってそうだ。iPhone5のマップが使い物にならないからって、道に迷っちまうとか言いやがって。マップが使い物にならないなら、なんで自分の足で探さない」
「た、確かに」
「悲しんで、苦労してやっと手に入れたものは、経験や知恵となって大きくお前達を成長してくれると思わないか?」
「はい。。。」
ペテロ、アンデレ、バルトロマイの三人は、あんちゃんから鋭く指摘され、大いに反省しました。こんな真面目なあんちゃんを見るのも、久しぶりな感じでした。
「いっぱい自分から色々な事を求めるんだ、ペテロ。そうすれば、経験を与えられるぜ」
「わかったぜ、大工」
「いっぱい自分からあらゆる馬車を探すんだ、アンデレ。そうすれば、思いがけないものが見つかるぜ」
「うん、リーダー」
「いっぱい自分から困難な門を叩くんだ、バルトロマイ。そうすれば、呟く暇もなく覚醒できるぜ」
「(呟き)イエッサー!」
ありがたーい、あんちゃんの言葉に、ジーンと心を震わせている弟子三人。向こうの方に見える夕焼けが沈みかけると、不思議な後光となってあんちゃんの全身を包みだしました。その不思議な光景に、ただ、ひたすら三人は眺めてるだけしかできません。
「どうした?三人とも」
「あ、いや」
「ねぇ」
「(呟き)夕日が」
「なんだ?バルトロマイ?夕日に向かって走りたいのか?」
しかっし、当の本人は全く気が付いておりません。三人はそんなあんちゃんの姿を見て、なんだか心が和んできました。
「さぁ!ガンプラ村に行って、本当にガンプラ作れるか試してこようぜ!」
「あ、リーダ。ガンプラ村じゃなくって、ガンダム村だった」
「ま~ピョンデレ、細かい事は気にするな!」
「まーたー!僕の名前間違っている。ねぇ、ワザとでしょう?ねぇ?ねぇ?」
こうしてあんちゃん一行は、iPhone5に誤記掲載された、ガンダム村へ行ったのでした。
続く




