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第四十六話

「だ、誰だ!?」


窮地に立たされていた女王ヘロディアを悪徳総督ピラトゥスから救ったのは、なんと女王が敵対していたはずのアニキ・ザ・ヨハネでした。


「ヨハネ!?貴方、何故?!」

「何!ヨハネだと?!」


ピラトゥスは、自分の手を払った不届き者が、最近巷を騒がせてるパンク野郎であることに気がつきます。


「ど、どうして貴方が私を?!」

「ヘロディア。いいから、娘のところに行くんだ」


ピラトゥスに対して不敵な笑みを浮かべたまま、ヘロディアにこの場を離れるよう指示します。助けられたヘロディアはすぐさまその場を離れ、奥で呆然と立っている娘のサロメちゃんを駆け寄りました。母の腕の中で、サロメちゃんも、突然来訪してきた、ピラトゥスの存在に震えております。


「き、貴様が、あの有名な浮浪者のパンク野郎か~。ゲヘゲヘゲヘ~」

「そういう貴様は、悪徳総督のピラトゥスだろう?」


ピラトゥスがイヤらしい目つきで辺りを見渡すと、国王の玉座にヘロデの姿は無く、ポカーンと口と両目をあけたままのダッチワイフ・シェリーさん(20才)が居座ってます。そして、その横で怯えるヘロディアとサロメ。


「ゲヘゲヘゲヘゲヘ〜。どうやら貴様らユダヤ人は、ローマ帝国を舐め切っているようだな?」

「何?」

「ユダヤ国王は逃亡中だわ、玉座にはダッチワイフだわ、女王はワシの目を盗んでローマ高官と宴会を目論むわ、そして!貴様のような囚人ごときが、このワシの手を払うなどとわな!」


それでもアニキの不敵な笑みが、ピラトゥスを苛つかせていました。


「それがどうした?デブゴン野郎」

「な?!デブゴンだと?!」

「おおかたその肥えた腹には、たっぷりえげつないものを抱え込んでいるんだろうよ?」

「言わせておけば、きさまぁ!!!!!!」


ピラトゥスの怒りは頂点に達し、取り出した短刀を振り上げます。しかしアニキは短刀を避ける事もせず、右手を思いっきり開き、ピラトゥスの眼前擦れ擦れに突きだしました。


「例えばよ、ローマ帝国も知らない徴税とかな?」


その瞬間、ピラトゥスは振り上げた短刀を止め、一瞬だけアニキから退いたようでした。


「な、何ぜそれを!?」


慌てたピラトゥスは、滑らせた口を手で閉ざします。マヌケなピラトゥスに対し、得意げに答えるアニキ。


「初代皇帝アウグストゥスは、腐敗した税制度を改革し、属州地域の直接税は収入の一割、穀物税は収穫の一割以下にして、不当な税率を引下げたはずだ」

「うぐぐぐ!」

「ところが、ここユダヤ属州では、未だに税率が三割以上だ。それは何故だ?」

「何を戯言を!!!」

「目の下に大きなクマがある悪玉ってぇのは、大抵、不動産バブル絡みが相場だ」

「こ、この浮浪者のくせに!」

「フフフフフ、その浮浪者でさえ、知っている事が一つある」


するとアニキは開いた手を握り締め、側にいたローマ兵の百人隊長をジッと見つめながら、ピラトゥスをアウト・オブ・眼中状態で話しだしました。


「貴様らのローマ帝国というのは、常に名誉と誇りを重んじる国だと聞いた」

「……」


百人隊長は瞬き一つせず、覆い被った兜から鋭い眼光を光らせ、アニキの話を聞いています。


「不正に私腹を肥やし、帝国の名を汚す様な人間を、貴様らはいつから許すようになったんだ?」


アニキの指摘は見事でした。言い任されたピラトゥスの動揺する姿に、厳粛なローマ軍団の百人隊長は、ピラトゥスに不信を抱きはじめます。そしてようやく、アニキはピラトゥスに視線を向けました。


「英雄シーザーでさえも暗殺する国家だ。貴様のような帝国の面汚しデブゴンを、誰がそのままにしておくんだ?ガッハッハッハッハッハ!」


さすがパンキッシュのカリスマ、アニキ・ザ・ヨハネです。一瞬にして、場の雰囲気を自分のものにしました。うろたえるピラトゥスの姿に、一人、また一人と、ローマ兵士達が、鋭い疑いの眼差しを向けていきます。


「だぁあまれぇええ!身分をわきまえろ!!」


ピラトゥスの張り上げた大声に、ローマ兵士達は自分の立場を思い出しました。


「忠誠心を忘れたローマ兵もまた!我がローマ帝国には存在しない!そうだな、百人隊長?!!」

「はっ!!」


百人隊長は、すぐさま総督の身分を思い出し、胸に右手の拳を当てます。百人隊長の行動に従ったローマ兵士達も、一斉に右手を胸に当て、総督ピラトゥスに敬礼をしました。


「ほう……。なかなかの役者だな?ピラトゥス」


アニキは首をポキポキ、手首をコリコリ鳴らし、準備運動を始めます。青筋を立てて、怒り心頭に発するピラトゥスは、アニキに飛び掛かりました。


「調子に乗るなよぉ〜!!!ヨルダン川の浮浪者ごときがぁあああ!!」


アニキもプロレスの組手の格好で、デブゴン悪玉総督を待ち構えます。


「ふん!ロープ無しデスマッチといこうか?!」


その時でした!対峙する二人の間を、一人の人影が割きます。


「お待ちください!ピラトゥス様!」

「ひ、百人隊長?!」


何と先ほどの、ローマ軍団の百人隊長でした。


「ローマ帝国では、属州住民に総督のリコール権があることを、お忘れですか!!!」

「なっ、何?!」

「今、この男殺せば、ユダヤの民達は此奴を殉教者と崇め、反乱が必ずや起きます!そうなれば、ピラトゥス様のユダヤ属州総督の任も罷免となり、此奴はそれを計算して、挑発しておるのです!!」


組手の構えのまま、スタン・ハンセン並みに挑発を繰り返すアニキ。ピラトゥスは全く手出しができません。


「グッ!オノレぇえええ!貴様は死までも覚悟して!このピラトゥスに喧嘩を売るつもりか?!」


ヘロディアもサロメも、そしてピラトゥスにボコボコにされたパウロでさえも、アニキの高い志しに驚愕しており、その勇姿が彼らの心に、深く刻み込まれました。


「あったり前田のクラッカー!ギャフンと言わせてやるぜぇ!」


続く

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