第四十四話
さて、ヘロデ国王が不在中のヘロデのお城では。
ダークファンタジー大好きでゴスロリな小娘サロメちゃんが、ワイルドでパンキッシュなアニキ・ザ・ヨハネにぞっこんでした。彼女はしつこいほど、毎日毎晩付きまとっています。
「(FACEBOOK近況)洗礼者ヨハネ様ーーー?ヨハネ様ーーーったら?」
「ああん?」
「(FACEBOOK近況)洗礼者ヨハネ様ーーー?どちらにおられるんですかーーーったら?」
「ったく、毎日毎日、面倒くせぇな~。何だぁーーー?」
牢屋で寝っ転がって鼻くそほじくってたアニキが、面倒くさそうに答えます。
「(FACEBOOK近況)あら、こんなところにいらしたのですね?」
<本日のゴスロリ小娘サロメちゃん ファッションチェッーーーク!>
なんと今日は全て真っ赤で彩っております。熱情な赤のレース、優美な赤のフリル、これでもかって壮麗な赤のリボンに飾られ、パニエで脹らませた深紅のスカートと、深紅のワンストラップ厚底シューズ。髪は縦ロールで長く結び、リボンやヘッドドレスで装飾し、頬紅も微かに塗ってコケティッシュでキュートな自分を演出しております。
「何なんだその格好は!!??」
「(FACEBOOK近況)え?何がですか?」
「何がって、お前、その恥ずかしげもなく真っ赤な格好なんだよ!!?」
頬を赤らめたサロメちゃんは、モジモジしながら答えます。
「(FACEBOOK近況)恋い慕う洗礼者ヨハネ様へ、わたくしの愛情を表しました」
「何たる全くもって贅沢極まりない格好だな?おい!」
「(FACEBOOK近況)まぁ、嬉しい。わたくしのドレスが可愛くて、褒めて頂いたのですね?」
「バカヤロ!誰がお前の服なんか褒めるか!俺は、そんなケバケバしい格好はファッキン大嫌いなんだ!」
きょとんとするサロメちゃん。寝っ転がって、再び鼻糞をほじくってシカトを決め込むアニキ。全く自分が相手にされてない様子を見たサロメちゃんは、あんまりにも寂しくなって、突然しゃがんで大泣きを始めました。
「ウワァアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンン!!!!!」
「な、なんだ!?」
「ウワァアアアアアアアァァァアアアアーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンン!!!!!」
「おい!何だって泣きはじめたんだ!?」
普段はiPad2のFACEBOOKでしかコミュニケーションを取らないサロメちゃんも、自分が悲しい時は大声で周りに関係なく泣きはじめるのでした。さすがにアニキもうるさくて、シカトできません。両耳を抑えながら、なんとか宥めようとします。
「ウワァアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンン!!!!!」
「わかった!わかったーーー!頼むから泣きやんでくれ!」
「ウワァアアアアアアアァァァアアアアーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンン!!!!!」
「畜生!どうしたら泣きやむんだ!?」
「ウワァアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンン!!!!!」
「くそお!頼むからよ!泣かないでくれ!!!」
「ウワァアアアアアアアァァァアアアアーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンン!!!!!」
「分かった、分かった!そのドレスはお似合いだ。可愛いよ!」
ピタ!
するとサロメちゃんは、突然泣きやみました。
「ヒクッ、ヒクッ。本当に?」
「あ、ああ。本当だって。まるで監獄デスマッチでレスラーが流血したかと思うくらい、びっくり可愛いぜぇ」
「監獄デスマッチ!??あたくしの格好が、レスラーが流血ですって!????
「ああ!サロメ、お前の格好には、地獄の大悪魔もびっくり仰天だ!」
「イヤァアアァァアアアアーーーーーーーンンンンンン!!!!!」
再びサロメちゃんは大声で泣きはじめました。プロレスやパンキッシュなライブでは男気溢れるアニキでも、今時のゴスロリ小娘サロメちゃんを褒める事には、さすがに慣れていないようです。
「ああ!また泣きやがって!ちがう!違うって!」
「ウワァアアアアアアアァァァアアアアーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンン!!!!!」
「だからーー!あのな!つまり、うーーーんと、あれだ!」
「ウワァアアアアアアアァァァアアアアーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンン!!!!!」
「まるで夕焼け小焼けのように、可愛いって事だ」
「ウワァアアアアアアアァァァアアアアーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンン!!!!!」
アニキはあくまでもパンキッシュ・シンガーです。体勢に反抗したアナーキー・アンセムや、現世の風潮を批判した歌詞はおてのものですが、褒める言葉は苦手でした。
「だーーーー!!!面倒くせぇ!!!もう、可愛いったら、可愛いんだよ」
ピタ!
するとサロメちゃんは、突然泣きやみました。
「ヒクッ、ヒクッ。本当に?」
「あ、ああ本当だ。だから泣くんじゃねぇぞ」
「ヒクッ、ヒクッ。うん、洗礼者ヨハネ様、ありがとございますぅ~♪ランラ、ランラ、ラーン♪」
さっきまで泣いてたサロメちゃんは、アニキに褒められて嬉しくなり、フリルの深紅スカートのすそを両手で振りながら、スキップして嬉しさを表現しております。
「ったく、ちゃんと喋れるじゃねぇか」
すると再びサロメちゃんはiPad2を手に取って、アニキに話しかけます。
「(FACEBOOK近況)洗礼者ヨハネ様?」
「なんだよ?」
「(FACEBOOK近況)わたくしのドレスを褒めて頂いたお礼がしたいのですが」
「お礼?そんなもの要らんって」
「(FACEBOOK近況)いいえ、そんなわけにはまいりません。恋い慕う殿方には常に誠意を尽くすこと、これ即ち、わたくしの心情でございます」
「あー、別にお礼を貰うようなことはしてないから、気にしなくっていいって」
「(FACEBOOK近況)そうは言わずに。あ、お腹は空かれませんですか?洗礼者ヨハネ様」
「飯か~。まぁ確かに腹減ってきたな」
「(FACEBOOK近況)ではわたくし、今から腕によりをかけて、スープを作りますね?」
「好きにしろ」
「(FACEBOOK近況)はーーーい!好きにします!」
アニキはようやく解放されたと、寝っ転がって鼻糞をほじくりながら昼寝を始めました。早速準備を始めるサロメちゃん。火の付いたかまどの上に、水をいっぱいはった大なべを用意し、ぐつぐつと沸騰させます。その間に料理本に書かれているレシピを見ながら、用意した材料を切り刻んでました。
「(FACEBOOK近況)えっと、先ずはこれを3匹に、これを50本、エイエイ♪」
ポイポイっとそれらを大鍋に放り込み、ポトッポトッっと鍋の中に沈んでいきます。
「(FACEBOOK近況)次はこれを4枚に、これらを2本、エイエイ♪」
さらに、ポイポイっとそれらを大鍋に放り込み、ポトッポトッっと鍋の中に沈んでいきます。
「(FACEBOOK近況)極めつけはを瓶いっぱい入ったこれを注いで、さらに刻んだこれらを20本、エイエイ♪」
さらにさらに、ポイポイっとそれらを大鍋に放り込み、ポトッポトッっと鍋の中に沈んでいきます。そして、極めつけは、お得意の奇妙な魔法の杖を取り出して、床に魔法円を描きだして悪魔呪文を唱え出しました。
「(FACEBOOK近況)エロエロエッサイム~♪エロエロエッサイム~♪」
チラっとサロメちゃんはアニキの様子を伺います。どうやらアニキは大きないびきをかきながら、全然起きる様子はありません。今がチャンス!と、サロメちゃんはシャキーンと出刃庖丁を取り出し、抜き足、差し足、忍び足でアニキの側に近づいていきました。それでもアニキは大きないびきをかいて寝てます。サロメちゃんは大きく出刃包丁を振りかぶったのです。
「せぇーーーの!」
ガシッ!
「ゴラッ!」
「え!??」
昼寝しているはずのアニキは、すかさずサロメちゃんが振り上げた包丁を止めました。
「なんで???なんで???」
「なんでじゃねぇ!お前は寝ている俺様に何をしようと企んだ!?」
ジーーーっと疑いの眼差しで見ています。
「いやーーーん!た、企んでいるなんて、滅相もございません事よ。オホホホホホ~」
「なんだ、このレシピ本は?」
「(FACEBOOK近況)あ!ダメ!それを見ちゃ!」
【10分クッキング。意中の人を虜にさせる、悪魔料理のレシピ全集】
正反対の性格でも、バッチシ貴方の愛の虜になる悪魔料理のレシピを紹介しよう!
①大鍋にめいいっぱいの水を張り、強火でぐつぐつ煮えたぎるまで沸騰させます。
②その後に以下の材料を入れて、よくかき混ぜます。
<材料>
毒蜘蛛 3匹
トカゲのしっぽ 50本
ヒキガエルの舌 4枚
牛の角 2本
蝙蝠の生き血 瓶いっぱい
毒蛇の牙 20本
相手の心臓 1個
③床に魔法の杖で魔法円を書き、悪魔召喚の呪文を三回唱えます。
④最後に意中の人の心臓をスープに投げ込みます。
⑤これで貴方に相手も夢中!二人の愛は、ソロモン72人の悪魔によって永遠に結ばれます。
「こんの小娘ぇえええーーーーー!!やっぱり変なもんを作ってやがったな!?」
「(FACEBOOK近況)洗礼者ヨハネ様、違うんですぅ~」
「なにが違うだバカたれ!ここを見てみろ!最後には俺の心臓を奪う気だったじゃねぇか」
「(FACEBOOK近況)このスープが完成すれば、私達は永遠の愛で結ばれるんですぅ~」
「完成したら俺様が死んじまうだろうが!!!!」
瞳をパチクリしながら、きょとんとしたサロメちゃんは、舌をペロって出して謝ります。
「(FACEBOOK近況)ばれちった、てへ♪」
続く




