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第四十二話

急いで事故現場に向かう大工のあんちゃんとヘロデ。力持ちのシモンやトマス、そしてペテロが、一生懸命馬車を持ち上げているので、かろうじてマタイは馬車の下敷きになっておりませんでした。しかし、右肩が車輪に引っ掛かっている状態で抜けられません。


「うーむ、正にフォーシュルヴァン爺さんだな」

「なんじゃ?それは」

「あれ、爺さんは読んだ事ないの?『レ・ミゼラブル(ああ、無情)』で、馬車の下敷きになった爺さんだ」

「??」

「リーダ!そんな事はいいから!何とかしないと!」

「うっし!」


するとあんちゃんは袖を巻くって、一緒に馬車を持ち上げようとしました。


「おい!マタイ。どうだ?出れそうか?」

「だ、ダメです。先生、どうしても右肩が車輪に引っ掛かって」


側では心配そうに見つめるマリヤちゃん。再び四人はいっせーのせで、馬車を持ち上げようとします。しかし、馬車はまるっきり動く様子がありませんでした。


「くっそう!しぶとい馬車だぜ」

「お、おい、どうする大工?!もう、お、俺達は、限界だぜぇ」

「だめだ、元ヤン!もう、腕が、つ、吊りそうだ」

「先生!なんとかミラクルを!」


馬車を必死に持ち上げているペテロとトマス、それにシモンは、既に顔も真っ赤になって限界です。あんちゃんは顎に手をやって考え込んでしまいました。


「おい!大工!何を呑気に考え込んでやがんだ!」

「そうだ!元ヤン。お前は嵐も吹き飛ばして、水もワインに変えたミラクルがあるだろうが!」

「そうですぞ、先生!真冬の湖の上も歩いてきたではありませんか!」


しかしあんちゃんはまるっきり目を瞑ったまま、耳を貸す様子がありません。ヘロデは弟子達から聞かされたミラクルの数々に驚き、側にいたジェイコブに確認をしました。


「あのナザレの坊主が起こすミラクルって、本当なのか?」

「ええ、爺さん。うちのリーダーのミラクルはすごいのなんのって。この間なんか、歩けなかった人の足に、延髄蹴りみたいなのを入れたら、びっくらこいて歩けるようになっちゃったんですから」

「なんと!ほっほ~」


カーーーーーーッ!!!!

あんちゃんは目を見開きました。とっても真面目な顔つきで馬車には背を向け、何かを念じながら両拳を腰の側に持ってきます。そして側にいたマリヤちゃんを呼び寄せました。


「マリヤ、ちょっと来い」

「え?何?」

「いいから、マリヤ。俺の目の前に立てって」

「はい」

「はぁ~!!!!!!」


あんちゃんの全身に闘気が満ち溢れているようでした。いつになく真剣な表情で、誰もが固唾を飲んでいる状態です。そしてあんちゃん腰元に置いた両手を、目の前にいるマリヤちゃんへ突きだしました。


「えい♪」


プル~ン♪


「ヒヤッ!」


なんと!このバカたれ!エロ・チェリーあんちゃんは、突然マリヤちゃんのおっぱいにタッチしやがったのです。


「な、何やってるんだ!?アホタレ大工!」

「元ヤンのばかたれーー!!!マリヤのおっぱいを触っている場合か!」

「先生!あんたは場の空気を読んでないでしょ!?」

「いやー、たははは。なんちゅうの?重たい馬車を持ち上げようとしたら、手が痛くなっちゃって。マリヤの胸で、なんちゅうの?痛みを和らげようかと思ってさ。。。」


だが、しかしです。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ~!


怒りに満ち溢れたマリヤちゃんの全身に、今度は本物を闘気が集まってきました。弟子達はあまりにも恐ろしい形相に変わったマリヤちゃんに慄いています。しかし、ただ一人、その様子を見ていないバカたれ大工のあんちゃんが、呑気にマリヤちゃんのおっぱいの柔らかさを論じてました。


「え?」

「こぉおおおのぉおおおお、エロぼけチェリー野郎がぁあああああああ!!!!」


マリヤちゃんは勢いよくローリング・ソバットを、大工のあんちゃんの顔面にめがけてかましました!ヘロデは堪らず両手を振りかぶって、興奮して叫び出します!


「出た!アニキ直伝48のプロレス殺人技の一つ!『竜巻ローリング・ソバット』じゃ!」

「爺さん?アニキ直伝って何??」


ガッツーーーーーン!!


「うげええええええ!!!」


見事マリヤちゃんの蹴りがあんちゃんの顔面にさく裂!その勢いであんちゃんは馬車に命中!さらに!マタイを下敷きにしていた馬車は、あんちゃん共々木っ端みじん!


ドッカーーーーン、ガシャーーーン!ガラガラガラ~。


車輪は辺りに転がり、積んでいた荷物は吹き飛び、馬車を持ち上げていた弟子達の手元には、何も残っていません。マリヤちゃんのローリング・ソバットをまともに顔面で受け止めたあんちゃんは、地面ですっかり気を失ってのびてます。しかし怒りまくったマリヤちゃんは、気を失ったあんちゃんの首を絞めながらら、何度もどなり始めました。


「ごぉおらあ!最悪最低エロ小僧!!こんな非常時にあたしの胸を触るなんて!あんた、本当にバカでしょ!!!?」


しかし、馬車の下敷きになっていたマタイは、一体何が起きたのか信じられない様子。馬車を持ち上げてたトマス、弟子達は、すっかり木っ端みじんになった馬車を、驚きの表情で見ています。


「エロ・チェリー!あんただけは、絶対に許さない!!」

「あの、マリヤちゃん?」


マリヤちゃんの怒りに恐縮しているジェイコブは、事情を説明しようと話しかけてます。しかし、怒りに駆られたマリヤちゃんは、全然気がつかない様子。


「マタイが死にそうな時に!!」

「あの、マリヤちゃんったら」

「ああああん!?何よ!?ジェイコブ!さっきから、うっさいわねぇ」

「マリヤちゃんのさっきの蹴りで、馬車は木っ端みじんに。。。」

「え?」


弟子達は粉々になっていた馬車を片づけてます。マリヤちゃんは自分の蹴りで、まさか馬車が粉々になっているなど思ってもいなかったのでした。ようやく事態を理解したマリヤちゃん。


「あ、あははははは。そ、それで、ジェイコブ。マ、マタイは平気なの?」

「う、うん。少し右肩を痛めているみたいだけど、大丈夫みたい」

「あははははは。そ、そう」


みーんな苦笑しながら、マリヤちゃんから微妙に距離を置いてます。


「ち、ちょっと!みんな何よ!?なんで離れているわけ??」


すると大工のあんちゃんようやく気を取り戻した。顔面にでっかいタンコブを作りながら。勿論鼻血もドバドバ。


「いてててて、さすがアニキ直伝のマリヤの蹴りは利くな~」

「え?!」

「すまんな、マリヤ。悪気はなかったんだよ。でも、これで馬車を持ち上げる必要が無くなったろ?」

「ちょ、え?どういう事?」

「あのままじゃ、本当にマタイが馬車の下敷きになって死ぬところだったんだ」


キョトンとしているマリヤ。でも、あんちゃんの言っている事は本当でした。


「おい、ジェイコブ。鼻血が止まらないから、ティッシュ持ってきてくれ」

「はーい、リーダー」


近くにいたジェイコブからティッシュを貰い、小さく丸めて鼻に突っ込むあんちゃん。その後、首をポキポキ鳴らし、ひょいっと立ちあがってマタイの側に近付きます。


「おい、マタイ。痛めている右肩を見せてみろ」

「あ、はい。先生」

「なるほど、少し脱臼しているな。我慢しろよ~」

「はい」


今度は本当に真剣な目つきのあんちゃんは、マタイの脱臼した右肩をギリシャ医学の治療法を用いて、いとも簡単に治してしまいました。


「どうだ?マタイ」

「ええ、だいぶ肩が軽くなりました」

「そっか、よかったな~。がっははははは」


その様子を見ていたヘロデは、心から大工のあんちゃんに尊敬の念を持ち始めます。横にいたジェイコブも、ニコニコしながら浮浪者の格好をしたヘロデに話しかけました。


「爺さん、リーダーって普段はバカちんで、だっさい名前を考えるし、童貞臭いし、エロDVDをコレクションに持っている愚か者だけど、なんというか、憎めないところがあるんだよねぇ~」

「たしかにそうじゃな」

「結局最後は、都合がいいハリウッド映画みたいに、解決しちゃうんだから」

「自分を犠牲にして、他人を救う。正に救世主メシアと呼ばれてふさわしい、ミラクルを行う者じゃな」

「えへへへ、本人は俺を『飯屋』と呼ぶなって、馬鹿だから気付いてないみたいだけど」

「そうかのぉ?ジェイコブくん。おぬしのリーダーは、きっと既に気が付いてるぞ」

「え?」


ヘロデは清々しい気分で、大工のあんちゃんの様子を見守っています。あんちゃんは、マタイからタンコブを心配されていました。


「それよりも、先生。そのタンコブ平気ですか?」

「ああ、これか?マタイ、平気だ平気だ、このくらい」


少し見直したマリヤちゃんは、モジモジしながら大工のあんちゃんに近づきます。


「あ、あの。。。」

「おー、マリヤ!」

「いや、そのあたし、なんていうか」

「まぁいいって事よ」

「そこまで、まさか計算していたなんて。。。」

「まぁな。お前がいたからこそ、マタイは生き延びたんだ。みんな、お前のプロレス殺人技に感謝しているよ」


するとマリヤちゃんは、頬を赤らめながら照れています。


「それにしても、マリヤ。お前のおっぱいは、弾力性に迫力があるな~」

「え、ええ??」

「昔はぺったんこだったのに。どうした?何食ってそんなに大きくなった?」


プニュプニュ~♪

またもや大工のあんちゃんは、再びマリヤちゃんのおっぱいにタッチングです。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ~!

再び怒りに満ち溢れたマリヤちゃんの全身に闘気が集まります。


「懲りてない奴ぇめえええええええ!!!」

「ひぃいいいいい!じょ、冗談だって!マリヤちゅわーーーーーーんん!マイケル・ジョーダンだって!」


しかし、時は既に遅し。

マリヤちゃんつま先で地面をけり上げ、クルクルと二回転をして、大きく右足を振り上げます。


「出た!アニキ直伝48のプロレス殺人技の一つ!『旋風踵落し蹴り』じゃ!」

「爺さん~。だからさっきから、アニキ直伝って何なのさぁ???」


ドカ!


「ウゲ!!」


見事マリヤちゃんの踵落しは、大工のあんちゃんの脳天直撃で決まりました!


ワン!ツー!スリー!

カン!カン!カン!カーン!


「いいか!このエロチェリー野郎!またやったら、セクハラで訴えるからね!」


あんちゃんの顔は踵落しで地面に埋まってしまい、プシューっと煙を吹いて気絶していたのでした。


続く

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