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第四十一話

"ポク、ポク、ポク、ポク!チ~ン"

坊主のヅラを被った大工のあんちゃんは、正座しながらまるで和尚さんのように木魚と鈴が鳴らしてます。そこへ浮浪者爺さんの格好をしたヘロデが、ゆっくりやってきました。


"ポク、ポク、ポク、ポク!チ~ン"


「あ、あの~。おぬしは一体、な、何をしてるのじゃ?」


"ポク、ポク、ポク、ポク!チ~ン"


「読経でございます。過去、性欲という煩悩に悩まされてた私は、今迄愚かな人間以下でございました。しかし、これからは身も心も改心する所存でございます」


"ポク、ポク、ポク、ポク!チ~ン"


「は、はぁ~。それにしても、随分とけったいな楽器を鳴らしてますな~。特にその魚の形をした、木の太鼓というか」


"ポク、ポク、ポク、ポク!チ~ン"


「旅人よ。この魚の形をしている楽器は、木魚というものでございまする。魚は日夜を問わず目を閉じないことから、寝る間を惜しんで修行に精進しなさいという意味があるのです」


"ポク、ポク、ポク、ポク!チ~ン"


「へぇ~。なるほど~」


"ポク、ポク、ポク、ポク!チ~ン"


「うううう、私も魚から学ぶべきことがあったとわ」


"ポク、ポク、ポク、ポク!チ~ン"


一方は浮浪者の爺さんの格好をしたヘロデ国王、他方はぶっ飛んだ時代考証と宗派を超えて、坊主ヅラを被って読経をする大工のあんちゃん。これが世にも奇妙な、二人の初めての出会いでした。


「だぁ~!!!やってられっか!こんな事」


ガラガラガッシャーーン!

あ~あ、あんちゃんは結局飽きちゃって、木魚も鈴もぶちまけました。


「こんなのはブッダの野郎に任せたぜ!大体、俺には坊主が似あわねぇーんだっちゅーの!」


被らされた坊主のズラを脱ぎ捨てて、地面に放り投げました。しかし、マリヤちゃんとの正座でいる約束だけは守っています。ヘロデはそんなぶっちゃけた大工のあんちゃんの姿を見て、どこかでアニキと似ているような気がしました。


「ほっほっほっほ、面白い御方じゃの」

「いやー、それほどでも」


きちんと正座をしながら、頭を掻くあんちゃん。褒められる事が、何よりも大好きなのです。そこで、ヘロデはアニキの言いつけ通り、救世主メシアと呼ばれて慢心しているのかを確かめる事にしました。


「おぬしは、近頃有名な『愛の伝道師』なんじゃろ?」

「たははは~、わかっちゃいましたか。いやー僕って、一度見かけられると、顔を覚えられやすいというか、気さくな奴って直ぐに言われるんすよ」

「はははは(なんともおだてに乗りやすい奴め。。。)それで、多くの人々から救世主メシアと呼ばれているそうじゃな?」


すると大工のあんちゃんは、突然険しい顔をしました。


「冗談じゃない!なんだって、俺が飲食業界の救世主にならなきゃいけないんだ!?」

「え?飲食業界の救世主??」

「そうさ。俺は世界でビッグな男になる為に、ロックと愛を武器にしている『愛の伝道師』だぜ?それなのに、最近、ちょこっとギリシャの医学を使ったら、みんな俺の事を『飯屋』『飯屋』だの言いやがって」

「『飯屋』??ちょっと待て、おぬし。何か、勘違いをしていないか?」


ヘロデは救世主メシアと飯屋を勘違いしている大工のあんちゃんに、突っ込みを入れました。


「勘違い?」

「そうじゃ。みんながおぬしの事を『メシア』と呼んどるのは、この国を再建して、世界に平和をもたらす救世主メシアの事じゃ」

「だから~。飲食業界が革命を起こすわけだろ?ローマ帝国にも勝る美味しい食材を手に入れて、ガリア人よりも旨いフォアグラを作って」

「ちがうわい!何を聞いとるんじゃ。良いか?あのゴリアテを倒したダビデを知っているだろう?」

「ああ、あのミケランジェロが作った、ポコチンのあるダビデの像ね」


ヘロデは呆れました。しかし、既に大工のあんちゃんは、鼻糞をほじくってました。


「まぁ、いい。。。とにかくだ、ミケランジェロの作ったダビデの像っていうのは、我々ユダヤ人にとって英雄なわけだ」

「へぇ~!そうなんだ。おれはてっきり、ギリシャ神話の英雄かとばっかり。。。」

「読者の代弁をありがとう。まぁ、大抵はそう思うわな。聖闘士星矢でもよく使われていたから。とにかく、『メシア』というのは、そのダビデの子孫をも意味し、国を救う英雄で、神にも匹敵する者ともいえるわけだ」

「ふーん、爺さんは詳しいんだな、色々と」

「へへーん。(両腕を組んで)これでもわしはユダヤ国の国王。。」


ついヘロデは、口を滑らしてしまいました。その時、アニキから身分を隠して探る言いつけが、ヘロデの頭の中に巡ります。


「国王?」

「あ、いいや、国王の曾孫の御世話をした事があっての~」

「へぇ~。そっか」

「それで、おぬしが民からメシアと呼ばれる意味がわかったか?」

「うーん」


正座をしたままの大工のあんちゃんは、両腕を組みながら考え込んでしまいました。


「爺さん、ダメだ!」

「どうしたのじゃ?」

「やっぱり、俺には『飯屋』にしか聴こえない」

「なんと!?」

「いやー、なんちゅうか。例えば、救世主サイクロンZとか、救世主レッツゴータイフーンとか、もっと強そうな名前なら、俺もその気になるけど」

「ホッホッホッホッホ、そうか。そうか」

「それにやっぱり、俺には『愛の伝道師』という方が、一番フィットしてると思うんだよ~」


無邪気に瞳を輝かせるあんちゃんの笑顔を見て、ヘロデは素直に、この事をアニキへ報告しようと思いました。そんな時、弟子のひとりであるジェイコブが、焦りながら走ってやってきたのです。


「た、大変だ~!!!!」

「うん??」

「リーダー!大変だ。荷物を馬車に乗せようとしたマタイ兄ちゃんが、馬車の下敷きになっちまった!!!」

「な、なんだって!?」


続く


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