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第四話

閉じこもったマタイをおびき出す作戦を考える、大工のあんちゃんと弟子達。フィリポは喋りますが、バルトロマイの会話はいつもTwitterで呟きます。


「やっぱり扉の前に、マタイの好きそうな何かを置いとけば、ネズミみたいに引っ掛るかな?」

「お、フィリポ。そのアイディア、イイねぇ!」

「(呟き)あ、リーダー。それなら、きっとエロゲの方が引っ掛るかも、なう」

「(呟き)ふむふむ。よくそんなこと思いついたな?フィリポ」

「はい、僕も元引きこもりだったので、何となくマタイの気持ちが分かるんで」

「フィリポは優しい奴だ。よし、その作戦でいこう!」


しかし、漁師連中は、チェリー軍団の妙案に呆れてました。


「ペテロ兄ちゃん。あの人達って、真剣に考えてるのかな?」

「いや、完全に中二病だな」


次の日、エサのエロゲをたくさん抱えた大工のあんちゃんは、弟子達を連れて、意気揚々とマタイの家へ向かいます。すると、一人の老人が待ってました。


「あんたが昨日、マタイに構ってた大工のあんちゃんか?」

「おう、その通り!爺さんどうした?」

「そっか。お前さん、マタイと関わるのはやめておけ」

「どうしてだ?」

「あいつは口ばっかりで、俺たちから取った税金を、ちょろまかしてやがったんだ」

「それは本当か?!」


それを聞いた弟子達一行は、昨日のマタイの言葉に騙された気分でした。特に彼の境遇を自分と重ねていた、元引きこもりのバルトロマイとフィリポは怒りが収まりません。


「ケッ!何が『お前達を護るために、この仕事をやってるんだ!』だよ!」

「(呟き)ふざけるんじゃねぇよ!お前んところのブログ炎上させてやっかんな!」


周りにいたユダヤ人も、マタイの家へ罵声を浴びせ始め、しまいに彼らは家の扉に投石を始めます。みんながみんな、マタイへ集中攻撃。しかし、ただ一人だけ、そんなみんなに怒った人がいました。そう、大工のあんちゃんです。


「ふんがーーーーー!てめえら、調子に乗るんじゃねぇ!」

「?!」

「そんな一人をイジメてお前ら愉しいのかよ?!あん?!」

「リ、リーダー。。。」

「今まで陰口叩いてたくせに立場が逆転すれば、皆で寄って集って投石までして!赤信号、皆で渡れば怖くないかよ?!」


しかし、フィリポは、リーダーに反論します。


「でも、リーダー。マタイは俺たちの金をちょろまかしてやがったんだ!許せるはずがないだろ?!」

「それじゃ、フィリポ。お前は、マタイが本当にちょろまかしてたか、ちゃんと本人に確かめたのかよ?!」

「いや、まだです……」

「だったら勝手に決めつけてるだけじゃねぇか」


大工のあんちゃんの言葉に、皆が聞き入ってます。すると、今度は閉じこもるマタイへあんちゃんが問いかけました。


「おい、マタイ!お前もちょろまかしてないんだったら、自信を持って胸を張って出て来い!」

「嫌だね、誰が出るもんか!」

「みんなは、お前がちょろまかしたって言ってるぞ?このままでいいのか?」


すると、殆どやけっぱちになったマタイの声が聞こえてきました。


「ああ!その通りだ!どうせそいつらは、自分の代わりに俺にこんな仕事させてるんだ!ちょろまかされて当然だ!」


やっぱりそうか。

そんな空気がマタイの家を囲み、投石をしていた人々は、バカらしくなって帰って行きました。しかし、大工のあんちゃん一行は帰りません。


「マタイ!お前いつまでそうやっているつもりなんだ?」

「ふん!どうせ誰にも信用されない嫌われ者なんだからよ!もう、俺の事なんか放っておいてくれ。」

「馬鹿野郎!放っておけるか!?お前みたいに正義感が強くて、優しい奴こそ、この腐った世の中を変えるのに必要なんだよ!」

「?!」


決して見捨てようとしない大工のあんちゃん。そんな熱血漢の言葉に弟子達や、そしてマタイまでもグサっと感動します。


「よーくその目をかっぽじって世の中を見てみろ!年寄りは邪魔者扱いされるわ、中年連中は嘘ばっかりだ!」

「……」

「おまけに若い連中なんか、闇を抱えたままでヤル気無くしてるし、子供達なんかランドセルにGPS付けられてるし、お政りは消費税を突然上げようとするし、女の子達の総選挙はガンガン報道されるわ、ダウンロードは全面禁止されるわで、こんなんで、お前満足かよ?」


しかし弟子達は、あんちゃんの語る腐った世の中の意味がピンときてません。


「アンデレ、あの大工は、どこの国の話をしているんだ?」

「さぁ?」


そして愛の伝道師お決まりのキャッチが始まります。


「いいか?!今こそお前が自分を変えるチャンスなんだ!リア充になりたきゃ、お前が自分自身でこの扉を開けるんだ!どんな引きこもりでもな、俺が立っている扉を開けてくれる奴は、みーんな俺の仲間なんだからよ!」


弟子達は涙を感動しています。大工のあんちゃんも自分自身に陶酔してます。さらに調子に乗って、目を閉じ両手を広げ、優しい笑顔を浮かべたまま扉の前で待ってます。心打たれたマタイは、涙を流しながら決意して、思いっきり扉を開けました。


ゴン!!!


「痛っ!」

「あ……」


マタイの開けた扉に、思いっきり頭をぶつけられた大工のあんちゃん。頭を抑えて蹲ってます。


「あ、ゴメン。俺んちの扉、外に開くんだった」

「マタイ!痛ぇじゃねぇか!こんの引きこもり野郎め!!!」


なんと!大工のあんちゃんの鼻から、とんでもない量の鼻血が流れていました。


「ゲッ!流血?!あ、いや、本当に。そんなに近くに立ってるなんて知らなかったからさ!」

「だから!?」

「いや、本当に誤解なんだって!」

「待ちやがれ、マタイ!てめえだけはぶっ殺してやる!」


大工のあんちゃんとマタイは、日が暮れるまで、ずっと追いかけっこを繰り広げてました。


「まぁ大工は、基本、根がいい奴なんだよな」

「そうでもないよ、ペテロ兄ちゃん。マタイを本気で殺そうと、投石してるもん」

「ったく、しょうがねぇな……」


その後二人は一応仲直りし、マタイの家で飲み会が繰り広げられました。こうして、マタイも引きこもりとヤクザの下っ端を卒業し、『愛の伝道師チェリー・ボーイ』こと大工のあんちゃんの弟子になるのでした。


続く

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