第三十八話
【サロメ(ヘロディア娘)!!】
悪名高いヘロディアのじゃじゃ馬娘である。普段の彼女は自由奔放でワガママなゴスロリ少女として有名。しかしその一方で、メソポタミア古来から伝わる舞踊に長けており、神秘的で魅惑的な彼女の踊りは、それを一見した誰もが魅了されたという。因みにサロメとは通称の名前で「平和」という意味がある。
<フラウィウス・ヨセフス著作『古代ユダヤのトンデモ風俗誌』73ページより>
ヘロデ国王が不在中。
ついに!アニキ・ザ・ヨハネを斬首すべく、パウロとヘロディアの悪巧み計画が実行されることになりました。パウロは首都ローマから高官連中をに招き寄せ、ヘロディアは自分のじゃじゃ馬娘である、ゴスロリ少女サロメを呼び出しました。
「サロメちゃーーーん!!!!待ってたわよ!」
華美な黒のレース、優美な黒のフリル、これでもかって壮麗な黒のリボンに飾られ、パニエで脹らませたスカートを履き、黒のワンストラップ厚底シューズ。髪は縦ロールで長く結び、リボンやヘッドドレスで飾っております。過保護なヘロディアは、サロメちゃんへほおずりを何度もします。
「もう!会いたくて会いたくて堪らなかったわーーーー!」
「。。。。」
メイクはもちろんファンデーションが必要以上に色白で、目元の周りに分厚いアイライナーで塗りたくっております。しかし、彼女は一切喋りません。彼女はWi-Fi接続されている黒のiPad2の、FACEBOOKのチャットからしか会話をしないのです。
「それにしても、こんな荒野の近くなのに、相変わらずの格好で、暑くないの?サロメちゃん」
「(FACEBOOK近況)全然ダークに暑くない。ところで、一体、何の用なの?ママ」
「あなたメソポタミアの舞踊が旨かったじゃない?」
「(FACEBOOK近況)ネガティブに違うわよ、ママ。あたしのはラクス・シャルキー」
「ああ、そうだったわね。実はね、これから首都ローマ帝国から、偉い高官の方々がいらっしゃるの。そこで、宴会を開いて、サロメちゃんにラクス・シャルキーを踊ってほしいの」
「(FACEBOOK近況)やだ。っつぅか、だるいからネガティブ!」
「そ、そんな事言わないで?サロメちゃん」
「(FACEBOOK近況)あたしはもうゴスロリ一筋だから踊りたくないの。それに暑いし、息切れるし、面倒だからネガティブ」
「お願い、サロメちゃん。お母さんの一生のお願いだから」
「(FACEBOOK近況)パス!ラクス・シャルキーなんか踊ったら、フレンドから叩かれるからネガティブ!」
「あああ、あーっそ!ネガティブ!ネガティブってうるさい小娘だわねぇ!」
ヘロディアは青筋を立てながら、すかさずWi-Fiのパスワードを変えてしまいました。一切喋らないサロメちゃんにとって、ネットワークに繋げられないことは死活問題です。すかさず焦りながら、メモ帳アプリを開いて、母ヘロディアに助けを求めます。
「(メモ帳アプリ)お母様!それは ネガティブでダークに卑怯な手口ですわ!」
「フン!知るもんですか!」
「(メモ帳アプリ)今すぐWi-Fiの新しいパスワードを、スーパーダークで教えてください!」
「フン!こっちが下手に出てればいい気になって。あんたは実の母親である私に向かって、生意気な口調で偉そうに言える立場なの?」
「(メモ帳アプリ)だって、ネガティブな本音を言ったまでですもの!」
「ああそう!?だったら、その黒のiPad2もあんたの服も!一切取り上げるわよ!?」
「(メモ帳アプリ)お、お母様?!そんな殺生でございまする」
「そんなに調子に乗るんだったら、分割も基本料金も、ぜーんぶ止めますからね!」
「(メモ帳アプリ)ママ!それだけは!勘弁してください!ネガティブだった私が、ダークに悪いのでした。ごめんなさいませ。。。」
するとヘロディアはニコーっと急に笑顔になって、サロメちゃんへ再びほおずりを始めました。
「もう!サロメちゃんったら~、わかってんじゃないの~。そしたらお母さんの言う事は聞いてくれるわよね?」
「(メモ帳アプリ)ダークで了解です!」
「それじゃ、パスワード戻してあげるわ」
「(FACEBOOK近況)ママ!あたし頑張って、ママの為にラクス・シャルキー踊るからね!」
「もーーーーん、サロメちゃんたら~。本当に可愛いんだから!!!」
ルンルンルンとスキップしなながら胸を躍らせるヘロディア。その姿を笑顔で見守りながら、母親がいなくなった途端に、眉間にしわを寄せて、しっかり中指を立てるサロメちゃん。彼女もなかなか反抗児です。
「ガッハッハッハ!なっちゃいねぇな、貴様のファック・サインは」
「(FACEBOOK近況)だ、誰!?」
「お前の中指の伸ばし方には、ポリシーが感じられねぇーんだな」
「(FACEBOOK近況)な、なんですって!?一体、誰なの!?」
そこには、牢屋の中で寝そべりながら、中指で鼻糞をほじくっているアニキ・ザ・ヨハネがいました。
「(FACEBOOK近況)あ、あなたは!?アニキ・ザ・ヨハネ!?」
「如何にも」
「(Wikipediaを調べながら)たしか、ヨルダン河の泥水をオーディエンスにぶっかける、野蛮でいやらしい、あの悪名高いパンキッシュね!?」
「ッケ!そのままコピペすんじゃねぇよ、ゴスロリ小娘!」
「(FACEBOOK近況)こ、小娘ですって!?」
するとアニキはおもむろに、牢屋の中にある黒板を立てて、突然ファックサイン歴史の講釈をたれやがりました。当然サロメちゃんも目をまん丸にしてびっくり。しかしその熱意あふれる指導ぶりに、サロメちゃんも次第に頷き、思わず体育座りをしながら聞き入ってしまいました。
「だからな、ゴスロリ小娘。いいか?掌に指を丸めるて、中指だけを立てるのは女性用なんだよ。お前のは掌に指を丸めていないから男性用になっちまってるんだ。これだけでも、いきり立った中指の美しさが、随分とかわるんだ」
「(FACEBOOK近況)すっごーいいですわ!ファックサインにも美学があったなんて!」
「それに、ゴスロリ。お前は親指さえも丸めないで、外に出しているだろ?ありゃ、南部の田舎者仕様だ」
「(FACEBOOK近況)まぁ!そうなんでしたの?知らなかったわ」
「たかがファックサイン、されどファックサイン。その歴史とスタイルには、譲れないものがあるのさ!」
「(FACEBOOK近況)スゴイスゴイ!他にも色々と聞かせてくださいまし!」
体育座りしたサロメちゃんは、目を輝かせて拍手喝采です。しかし、アニキはよーく考えてみると、小娘相手に何だか自分が恥ずかしくなってきました。
「もう、いいや。とっとと帰れ」
「(FACEBOOK近況)嫌ですわ!もっと聞かせてほしいのです、洗礼者ヨハネ様」
「せ、洗礼者ヨハネ様だ!?」
「(FACEBOOK近況)ええ貴方こそ、まさしく洗礼者ヨハネ様。そしてこの世に啓示をもたらす、預かりし者を導くために生まれた御方!」
「そんな仰々しい言い方はやめろ!虫唾が走るぜ。。。」
しかし跪いたサロメちゃんは、胸で十字をクロスさせ、ヨハネに向かって祈りを捧げ出しました。まだ誰も死んでないのに。。。もうここまでくると時代考証もめちゃくちゃです。
「(FACEBOOK近況)ねぇ?洗礼者ヨハネ様。私のFACEBOOK友達も、ぜひ参加させても良いかしら?」
「友達だ!?」
「(FACEBOOK近況)そうなの。彼らは非リアだから、リア充の私が羨ましいって」
するとサロメちゃんは、突然胸元から奇妙な魔法の杖を取り出して、床に魔法円を描きだして、悪魔呪文を唱え出しました。
「(FACEBOOK近況)エロエロエッサイム~♪エロエロエッサイム~♪」
「コラコラコラ!!ゴスロリ小娘!お前は、なんて事をしているんだ!?」
「(FACEBOOK近況)だって、どうせなら彼ら達も呼んだ方が楽しいでしょう?」
「まさかお前のFACEBOOKの友達って。。。」
するとサロメちゃんはiPad2をアニキに見せました。アニキはスライドしながらサロメちゃんのFACEBOOK友達を見ると、ソロモン王が封じたとされる、72人の悪魔ばっかりでした。
続く




