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第三十五話

アル・アカバ村で突然インチキと非難された大工のあんちゃん達。マグダラのマリヤちゃんが誤解を解こうとしたその時、昔からの知り合いであったハガルおばあちゃんと再会します。


「マリヤはねぇ、家族に不幸があって、あたしが引き取った事があったんじゃよ」

「へぇ~。それでうちの家族がナザレに戻ってきたときに、マリヤの奴はいなかったんだ」


あんちゃんはハガルお婆さんと話をしています。話している二人の眼の先には、村人の女性達と和やかに話しているマリヤちゃんの姿がありました。


「木登りばっかりしてたマリヤが、あんなにも綺麗になって、しかも話題沸騰中のあんたと、無償で多くの人達の治療の手伝いをしているだなんてね」

「まぁ、あいつは殆ど洗濯と掃除ばっかりですけどね」

「ひぇ~。あのマリヤが掃除と洗濯をしているだなんて」


すると、村人からインチキ伝道師の聞き込みを終えたペトロとトマスが、あんちゃんの処へ戻って報告してきます。


「おい、大工。ここにやってきた伝道師とやらは、胡散臭いったらありゃしなかったよ」

「ああ、元ヤン。容姿は確かに似ているけど、青い瞳で、肌も浅黒くて、とにかく喋り方が。。。」


それ以上はトマスは口を閉ざしてしまいました。


「喋り方がどうした?トマス」

「語尾にYo!をつけるらしいんだ」

「。。。」

「大工、そいつって、まさか、あの。。。」

「ペテロ、それ以上は言わなくていい」


大工のあんちゃんはすごく真剣な横顔を見せてました。そして、ハガルおばあさんにはとても優しそうな笑みを浮かべるあんちゃん。


「ハガルばあさん」

「なんじゃい?」

「どうだろ?そのインチキな奴に騙された女性のみなさんに、俺達が代わりに無償で治療するってのは?」


ペトロとトマスはあんちゃんの発言にびっくりします。もちろん誤解が解けたとはいえ、ハガルおばあさんも、あんちゃんのその心意気に惚れぼれしました。


「本当かい?!それはとっても嬉しい事だねぇ~」

「不名誉な噂が流されたとあっちゃぁ、自分の股間に関わるってもんよ」

「フオッフォッフォフォ、面白い事をいう御方じゃ。気に入った!あんさんに任せよう!」

「そうこなくっちゃ!ハガルばあさん」

「じゃが、それを言うなら『自分の沽券に関わる』じゃろ?」

「あは、はははは。そうだった!」


ハガルばあさんと大工のあんちゃんは、ガシっと!両手で握手をします。こうして、アル・アカバ村での治療は大工のあんちゃん達に任されました。しかし、またもや無償で治療をすると言い出したあんちゃんに対し、ペテロとトマスは懐疑的な気分でした。


「おい、大工。なんだって、そんな無駄な約束をしやがるんだよ?」

「無駄?」

「そうだよ、元ヤン。もともとあのユダがお前に変装して、インチキな事をして金を巻き上げたんだろ?あいつをとっ捕まえてきてくりゃいい話しじゃんか」


するとあんちゃんは二人の襟首を両腕で掴み、二人を持ち上げて睨みました。二人はあんちゃんの腕力に慄きます。


「おい、ペテロ、トマス。この世に無駄なんてもんはねぇんだよ。それに、まだそのインチキ野郎が、俺達の仲間のユダかどうかも分かってねぇだろ?」

「だ、だけどよ、大工。そんなに無償無償でやってたら、俺達の金が無くなっちまうぜ」

「そ、そうだよ、元ヤン。それであんたはユダと揉めて、ユダを追い出したんじゃんか」

「うるせぇ!これは全部俺の問題で、俺のポリシーなんだ。いいか?ギリシャの哲学者ソクラテスのおやっさんも、こう言っているだろう?『人は誰ひとりとて、自ら進みて悪事を行う者なし』そして、『生きることでなく、よく生きることこそ、何よりも大切にしなければならない』ってよ」


ペテロとトマスの二人は、すっかりあんちゃんの言葉に説得されて、何も言い返せませんでした。ようやく二人を地面に下ろしてあげるあんちゃん。


「お前らも、金の事や他人を疑う事ばっかりに人生を費やすんじゃなくて、もっとソクラテスのおっさんが言っている事を勉強しろ!」

「わ、わかったよ、大工」

「反省したぜ、元ヤン」


二人は反省をしています。すると再び満面の笑みを浮かべて、二人の両肩に手を乗せるあんちゃん。


「よし!そうなったら、さっそくカイロプラクティックを始めようじゃないの!」

「も、もうかよ!?」

「ああ、おれは待ちきれなくて堪らないのさ。見てみろ?ここの村人はみーんな女性ばっかりなんだぜぇ」


確かに、あんちゃんの言うとおり。村人はみーんな女性ばっかりです。ペテロとトマスの二人は、お互いに目を合わせ、なんとなく、あんちゃんのエロい企みが分かったような気がしました。


バコン!


「いってぇーな!何すんだよ!?ペテロ!」

「このエロ・チェリー野郎め!てっきり偉そうなことを言うと思ったら、お前は、そういうエロい目的がありやがったんだな??」

「な、何を馬鹿な勘違いを!ち、ちがうって!お前達は、海よりも深く、山よりも高く、俺の事を誤解しているぜ!」

「うるせー元ヤン!お陰ですっかり騙されるところだったじゃねぇか!」

「お、おい!トマス。いいか?チェリーかも知れないこの俺が、治療と題して、お医者さんごっこをしながらイチャイチャしてやろうだなんて、これっぽっちも考えてねぇって!」

「しっかり企んでるじゃねぇか!!!大工!!」

「このエロボケ童貞野郎が!!!AVの見過ぎだ!!!」


あーあ。途中まではすっかり格好良かったんですけどね。結局、ペテロとトマスからボコボコにされたあんちゃん。弟子達があんちゃんの代わりに、真面目に村人へ治療している間、あんちゃんは縄で縛られ木の上から吊るされてました。


「おーーーい、ペテロ。そろそろ降ろしてくれよ」


するとそこへ洗濯帰りのマリヤが、洗濯ものを抱えて通りかかります。


「あんた、独りで何やってるの?」

「おお、マリヤ!良いところにやってきた!助けてくれ!縄をほどいてくれ!」

「べーっだ!どうせ、エッチなことを企んでしょ?」

「な、何故その事を!!?」

「やっぱし。しばらくそこで、お灸をすえられてなさい!」


結局、マリヤはそのまま歩いてどっかヘ行ってしまいました。


「あああああ!!もおおおお!こんなお灸は嫌だ!!!っていうか、俺はブッダじゃねぇっつの!!!」


こうして、結局真夜中まであんちゃんは縄で縛られていましたとさ。


続く

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