表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/147

第三十三話

ここはガリラヤ近くの荒野。

『ファリサイ』レーベルのパウロは、大工のあんちゃんを陥れる為、ラクダに乗って追いかけていました。


「フフフフ!調子乗った大工め!今に見てろよ!」


本人は気付いてないようですが?その割には、結構のんびり屋さんです。さて、暫く進むと、目の前に一人の男がぶっ倒れていました。


「うん?誰だ?」

「だ、だれか、水を。。。」


大工のあんちゃん一行から逃げ出して一週間、何も喰わず死にそうになってユダでした。パウロに救われて、何とか生き返えったユダくん。


「リスペクト!どこの誰だか知らないけどYo!マザファッキン助かったぜ!」

「その喋り方、貴様は大工の弟子のユダだな?」

「そういうお前は誰Yo!?」

「俺は『ファリサイ』レーベルのプロモーターしているパウロだ」

「え!あ!『ファリサイ』レーベルって言えば、あのインディーズ・ヒップホップ・レーベルで有名な!?」

「そうだ」

「リスペーーーーークト!!!あの『ファリサイ』の社長に会えるなんて!」


ユダが喜ぶのも無理はありません。ヒップホップ好きなガキンチョからすれば、『ファリサイ』レーベルは憧れの的なのです!


「ユダ。一体こんなところで野たれ死んで、何をやってたんだ?」

「いや、実はYo!ブラザーと喧嘩しちまって」

「喧嘩?」

「最近ブラザーは死にかけた子供を救って以来、メシアって崇められて爺や婆を相手に、接骨医みたいなのをやり始めたんだ」

「ああ、最近ちまたの噂では、その話で持ちきりだ」

「『愛の伝道師』が『愛のカイロプラクティッカー』なんて呼ばれちまってよ。ところが、ブラザーは浮かれるどころか、全部無償でやっちまうんだよ」

「な、なに!?全部無償だと!?」

「世の中がこうだからどうだとか、はっきり言って中学生日記よりも青臭い事言っちまってよ。だから俺はブラザーに金儲けをしようぜって持ちかけたのさ」

「そしたら断られたんだろ?」

「ああ。。。しかも、引っ叩かれて『お前は何もわかっちゃいない、帰れ』って!」


そんな 意気消沈しているユダを眺めながら、パウロはある事を閃きました。


「ユダ、お前は全然悪くないぞ」

「え?」

「お前があんな大工に殴られる筋合いが分からない!人の為に尽くして、その報酬として金を貰う。仕事ってそういうものだろう?それのどこが悪いんだ?」

「そ、そうだよな!さすが『ファリサイ』レーベルのパウロさんは違うぜ」

「『右頬を叩かれたら、左頬を突き出せ』と言ってたあの大工が、当たり前のことを言ったお前の頬を殴ったんだぞ!お前はそんな奴を信用するのか?!」

「くっそ!!!!」

「元々お前はラッパーを目指していたんだろ?それなのに、あんな古臭いロック・ライブの前座なんかで満足していいのか?!」

「そうだ!よく考えたら、俺があんなオールド・スクールのラッパーなんかに、ヒョコヒョコついていくこと自体が意味わかんねぇ!」


単純馬鹿なユダに対して、頃合いを見計らうようにパウロは甘言に乗せます。


「だったらよ、ユダ。お前、うちのレーベルからデビューしないか?」

「え!?えええええええええええええええ!???」


もう、ユダは目ん玉が転げ落ちそうなくらいに驚いています。何せ、憧れのインディーズ・レーベルからのデビューなのですから!


「ほ、本当ですか!?パウロさん!」

「ああ、ユダ。俺は有言実行な男だ!」

「リスペーーーーークト!!!うわーーーーーー!!!!すげぇええええええええ!!うれしいいいいっす!」

「お前なら、ビッグマネーを稼げる最高なラッパーになれる!パンキッシュなプロレスマニアよりも、インチキな愛の電動コケシよりも、世界中の人気独り占めだぜ!」


すっかりその気になってしまったユダ。まさかそれがパウロによる、大工のあんちゃんを陥れる企てとも知らずに。


「だがデビューの前に、先ずはネガティブ・キャンペーンだ!」

「ネガティブ・キャンペーン??」

「そうだ。お前があの大工の格好して、色んな街で悪さをするんだよ」


その案に、ユダは顔をしかめます。


「何だって、そんな事をわざわざ?」

「よーく考えてみろ、ユダ。大工の評価が下がった頃合いを見計らってだな、お前がみんなの前にメシアとして登場してみろ?誰もがお前に助けを求めるだろう?」


ユダはパウロの言葉に感激しました。


「おおおおおおお!!!!リスペーーーーークト!!!すげぇ!さすが超一流のプロモーター!パウロさんだぜ!!」

「いいか?レコード売るにもグラディエーターの試合をするにも、ただ買ってくれって叫んでも誰も見向きもしねぇ。ムーブメントを演出してこそ、ユダ!お前の価値は上がるんだぜ!!」

「リスペーーーーークト!!!もう、自分は『ファリサイ』のパウロさんに、一生ついてきやっす!!!!」

「その調子だ!ユダ。早速、これを持ってけ!」


パウロから渡されたのは、ドンキホーテで買ってきた『愛の伝道師変装グッズ三点セット』でした。早速ユダは、大工のあんちゃんのヅラを被り、白いトゥニカを着て、青いトーガを巻きました。


「ユダ、クリソツじゃねぇか」

「ま、マジっすか?!」

「誰もお前をハゲ坊主のラッパーとは思わね。バンバン大工の真似をして、ビッチとやりまくって、金巻き上げて来い!」

「マザファッキン、イエスメーーン!」


確かにユダが変装した姿は、大工のあんちゃんそっくり。ユダもその気になって、歌い出しましたが、とんでもなく音程がズレて音痴でした。耳を抑えたパウロは、汗をかきながら指導します。


「ユダ、お、お前は唄よりも、やっぱりラップが似合うぜ。。。」

「そうすか?」

「ああ。それにうちはヒップホップ専門だからよ、唄わなくて良いんだわ」

「カーーー!そいでヤンしたね」


そういうとユダは、颯爽と近くの村を目指して走り去りました。それらを眺めていたパウロは、ユダが居なくなった後にゲラゲラ笑い出したのです。


「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!!どうしてこうも、大工の弟子ってのはチョロイもんかねぇ。ユダ、お前なんかラッパーとしてデビューさせるわけねぇだろ、ボケ。せいぜい大工の悪い噂を広めてくれや、クックックック!!」


続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ