第三十話
大工のあんちゃん達が住む、ここユダヤ王国では、預言者モーゼが遺した十戒という、それは厳しい厳しいルールがあります。
『モーゼおっさんの十戒』
一、神様はたった一人じゃ!
二、神様のフィギュアとか、版権問題があるから作っちゃならぬぜよ!
三、神様の名前も、著作権問題があるから勝手に口ずさんじゃダメぜよ!
四、日曜日は休む為にあるのじゃ!仕事しちゃあかん!
五、父ちゃん母ちゃんは大切にするのじゃ!
六、人殺しはもちろん絶対にダメ
七、むやみやたらにエッチも、絶対に禁止じゃ!
八、嘘つきは泥棒の始まり
九、だから盗みもあかんでー!
十、隣人の家にニートとか、もう少し自分わきまえないと!
さて、大工のあんちゃんを陥れようと追いかけてきたパウロ。老人の村長から、とんでもない話を聞きます。
「な、なに!?なんだと!」
「ああ。わしは確かにこの目で見たんじゃ。あの愛の伝道師とか自称する不届き者が、へんてこな呪術を使って、悪魔シェディムに呪われた子供を生き返らせたんじゃ!」
パウロはあんちゃんの起こしたミラクルに、正直、驚きを隠せません。
「そ、そんな馬鹿な!?」
「何ともへんちくりんな技を使っておった。子供を逆さまに吊るし上げたり、接吻をし出したりして」
「接吻!?この児童ポルノ規制が厳しい時世に、なんてハレンチな事を!」
「ザクロの実を吐き出した子供は、何とも不憫で苦しそうに咳こんでたのぉ~」
「どうやら児童への暴行も考えられるな」
「ところがじゃ!、子供が生き返ったんで、村人はすっかりメシアと祭り立てたんじゃ」
「なに!?」
パウロはその話を聞いて耳を疑いました。正にチャンス到来!
「爺さん、それはいつの話だ?」
「ついこの間じゃ」
メシアとは救世主の事で、神様の代理人みたいなものです。モーゼおっさんの十戒にもあったように、神様の代理人なんて呼ばれたり、当然名乗ることも御法度。
「待ってろよ~大工の息子!貴様の化けの皮を剥がしてやるからな!」
さて、その頃ヘロデとアニキは。やっぱりプロレス技の研究に打ち込んでました。
「そうだーーー!そこからジャーマン・スープレックスをかませぇえ!」
「うりゃーーーー!」
「うげぇ!」
ヘロデのプロレス技は、マニアのアニキも唸らせるほどに上達していたのです。輝く汗にまみれながら、二人はがっちり手を結んで笑顔です。
「ヘロデ、お前は本当に生まれ変わったぜ!」
「本当かい?アニキ!」
「ああ!48の殺人技をマスターしたお前に、もう、教える事はないかもしれん」
「うう!アニキ!ありがとうだぜ!」
「いいって事よ。さぁ!次はパンク・ロックを伝授する時間だ!!」
「おう!アニキ!」
ヘロデはすっかり武闘派になり、グータラ息子と言われていた面影はありません。さて、その頃大工のあんちゃん一行はというと。
「おい、大工」
「なんだ?ペテロ」
「やっぱり、先日のメシアはまずかったんじゃねぇか?」
「ああ。確かに、あそこの村の飯屋は不味かったな~」
「違うって!メシアと呼ばれた事だ」
ペテロは心配していました。あんちゃんがギリシャの医学で治療した事がきっかけで、ミラクルと勘違いされてしまい、更に救世主=メシアとまで呼ばれてしまったからです。
「まぁ、ペテロ。俺は料理人じゃねぇ。元大工で今はロックで愛の伝道師だぜ。誰が好き好んで飯屋なんかやるかよ」
「いや、だから!お前は勘違いしているんだって!このままだと、モーゼの十戒を破った事になるぞ!」
横を歩いていた疑い深いトマスは、そうは思いません。
「果たしてそうかな?元ヤン」
「どういう意味だよ?トマス」
「あれを見てみろよ」
なんと、あんちゃん一行を待ち望んでいた次の村人達が、怪我人や病人を引き連れて、みんなあんちゃんに拝んでいます。
「ど、どうしよう?ペテロ」
「だから言ったろう、俺は知らん!」
続く




