第二十七話
アニキ・ザ・ヨハネ、彼の格好は、いつもワイルドそのものです。らくだの皮衣を着て、腰に革の帯をしめ、ツンツン短髪金髪と長い髭。そしてぶ厚い胸板が特徴です。主な食べ物はイナゴや野蜜ばかりのベジタリアン。ヘロデの牢屋にぶち込まれてもなんのその、出された飯が贅沢過ぎると、突き返すほどなのです。
"うりゃーーーーーー!"
「あなた!?あのヨハネって男、一体なんなの?」
"うりゃーーーーーー!"
「そんなの分からないでしゅよ、ヘロディア」
"うりゃーーーーーー!"
「全然へこたれないのかしら!?」
"うりゃーーーーーー!"
「牢屋に入れれば諦めると思ったのでしゅが。。。」
床の地下牢からは、毎日毎晩プロレス技を練習する、ヨハネの叫び声が聞こえてきます。二人はうるさくて全く眠れません。
"うりゃーーーーーー!"
「もう、あなた!あの声をなんとかして頂戴!」
"うりゃーーーーーー!"
「そうは言われても。。。」
"うりゃーーーーーー!"
「こう毎晩続いてちゃ、全く眠れないじゃない!!」
"うりゃーーーーーー!"
「そんなこと言われたって、ヘロディア。これは全部君のためでしゅ」
"うりゃーーーーーー!"
「何言ってるの!?大体、あなたが勝手に連れてきたんでしょうが!」
"うりゃーーーーーー!"
「分かった、分かったでしゅ。直ぐに止めるよう、言ってくるでしゅ」
"うりゃーーーーーー!"
妻には頭が上がらないヘロデは、仕方なくトボトボとアニキがいる地下牢まで歩いて行きました。
"うりゃーーーーーー!"
案の定、力があり余っているアニキは、ドカンドカンとプロレスの必殺技を練習中です。
「こりゃ!ヨハネ。いい加減それをやめるのでしゅ!」
するとヘロデに気がついたアニキは、格子越しに不敵な笑顔を浮かべます。
「来たな!ヘロデ。待ってたぞ!さぁ、リターン・マッチを始めようぜ!」
「まぁ待て、そんなつもりはないでしゅ!」
「なんだと!?怖気づきやがって、てめぇ!それでも男か!?」
「なんでしゅと!?ヘヴィメタ大好きな僕ちんに向かって!」
「フン!ヘヴィメタ大好きな僕ちんってやつは、自分が赤ちゃん語になっているのも分からないみたいだな?」
ヘロデはびっくりして、目をまん丸に見開いてます。
「え?そ、そうなんでしゅか?」
「それだよそれ!その『しゅ』ってのが、腹立ってしょうがねぇ。おぼっちゃまじゃねぇんだからよ」
「き、気付かなかったでしゅ」
ヘロデは少しショックを受けていました。
「全く、貴様の親父はベツレヘムで二歳以下の男児を虐殺したくせに、お前にはちゃんとした教育を施さなかったようだな?」
「何を言ってるでしゅか!!パパしゃまは、そんな事をしてないでしゅ!」
「まーとにかくだ。お前も国王なら、男らしい話し方をしてみろってんだ!」
「う、うるさいでしゅ!」
「そんな事だから、あんな気の強いかみさんのケツに敷かれるんだ」
さらにショックを受けるヘロデ。
「お前はヤクザ・ローマ帝国から認められたユダヤの国王だろ!?」
「そのとおりでしゅ。。。(ーー;)」
「お前はヘヴェィでメタルな音楽が好きなんだろ!?」
「そのとおりでしゅ。。。(ーー;)」
「なのにその喋り方されたんじゃ、パンキッシュ代表の俺様が子供いじめの汚名を着せられぜ」
「こ、子供いじめ!?( ̄◇ ̄;)」
すっかり落ち込んでしまったヘロデは、アニキに背中を向けていじけてしまいました。当然背中にはネガティブな渦巻きが漂っています。
「僕ちんだって(うじうじ)。。。好きでユダヤの国王になったんじゃないでしゅ(うじうじ)。。。パパちゃまが言うから(うじうじ)。。。」
「だぁーーーー!!!ったく、お前の人生は、全部顔文字か誰かのいいなりじゃねぇか!」
「!?」
アニキのズバッとストレートな言葉に、ヘロデは心を打たれました。
「それでお前の人生は楽しいのかよ?!」
「た、楽しい?」
「そうだ。人生は一度っきりしかねぇんだ。俺だったら、そんな人生はなぁ、鼻糞丸めてオサラバだぜぇ!」
ストレートな言葉の響きに感動したヘロデは、アニキに心打たれています。
「ヨハネ!僕ちんはお前を誤解していたようでしゅ!」
「うんうん」
アニキは両腕を組んで、俯いて頷いてます。
「僕ちん、これからは男として生まれ変わるでしゅ!」
「うんうん、そうだ!その意気だ!」
格子に両手を掛けて応援するアニキ。
「僕ちん、男として話し方を変えるでしゅ!」
「いいぞ!志を大きく持て!」
両手を広げて絶賛するアニキ。
「僕ちん、ユダヤの国王として楽しむ人生と威厳を取りもどしゅでしゅ!」
「俺様の見込んだ敵ながら、あっぱれだぜ!」
人差し指でヘロデの心意気を絶賛するアニキ。
「よーし!その心意気で、この檻から俺を出してくれ」
「それはダメでしゅ」
「な、なんだと( ̄◇ ̄;)?!」
「これからヨハネは、僕ちんの家庭教師になるでしゅ」
「か、家庭教師(@◇@;)??」
一方、四話にわたって出番が少ない大工のあんちゃんはというと。弟子達とポコペンで遊んでいました。
コーーーーーン!
「あ、やべえ。空き缶蹴り過ぎた」
ポコン!
空き缶は『マーシーの法則2』をずっと読んでるユダの頭に当たりました。
「おーい!ユダ?大丈夫か?」
「。。。」
「スマねぇ。悪気は無かったんだ」
しかし、ユダは全く反応しません。他の弟子達も、ユダの無反応に???です。
「ペテロ。あいつ、本当に大丈夫か?」
「さぁ?YO!YO!うるさい奴が黙ってくれて、こっちはありがたいけどな」
「うーん」
続く




