第二十六話
妻ヘロディアは、周囲に妖しい魅力を振りまきながらアニキに近づいてきました。
「貴方がパンクで有名なアニキ・ザ・ヨハネ?」
「ああ、そうだ」
不敵な笑みを浮かべるアニキ。その姿を足元から舐めるように眺めるヘロディアは、ドレスの腹部をめくって、その美しいくびれをアニキに見せつけます。
「フフフ、私のどこがデベソですって?」
「あの落書きは俺が書いたんじゃない」
「あらそう?でも、あたしのこの豊満なボディに、あなたは逆らえるかしら?」
しかし、さすがはパンキッシュなアニキ。鼻をフンっと鳴らして大笑いです。
「ガッハハハハハハ!自分で言っちゃ世話ねぇぜ。酒ばっかり毎日かっ喰らって、男におべっかまでして、化粧も塗りたくり、まるでキャバクラのアゲハ嬢じゃねぇか」
「な、なんですって!?」
「フン!世の男共が自分の思い通りになると思ったら大間違いだぜぇ!大体、お前のような年増のメス豚なんて、こっちからファックオフだ!」
「と、年増のメス豚ですって!?キィーーーーーー!!!」
アニキは舌をベロンと突き出し、中指をズバっと突き立ててヘロディアを愚弄しました。
パチン!
「いってぇ~な!このメス豚ババァ!」
プッ!
「キャ!」
とことんパンキッシュなアニキは、なんと!ヘロディアに唾で応戦したのです。怒ったヘロディアは、アニキに何度も平手打ちをしますが、そのたびに、アニキもヘロディアに唾で対抗。
「わーーーん、あなた~!あの野蛮人が私に唾をひっかけたぁ~!」
ヘロディアは悔しくて泣きながら、旦那のヘロデに泣きつきます。
「こ、この!!不届き者のヨハネめぇ!僕ちんの妻になんたる侮辱をしゅるんでしゅか!?」
「ケッ!俺は調子乗った女が、でぇ嫌いなんだよ!」
「衛兵!奴を痛めつけるのでしゅ!」
ヘロデは衛兵に指示をして、アニキをボッコボコにしようとします。しかしアニキはまるで屈しません。それどころか楽しそうに笑みを浮かべます。
「この俺様にチェーン・デスマッチでハンデをつけるとは、ヘロデ!貴様もなかなか粋な計らいだぜ!」
もはやパンキッシュからプロレスマニアになりつつ古今のアニキは、またもや得意のプロレス技で応戦します。
「うりゃぁああ!ジャンボ鶴田直伝!ジャンピング・ニー・バットォオオオ!」
「ウゲェ!」
「これでも喰らえ!エルボー・スマッシュウウウウ!!!」
「いてぇ!!!」
「天龍式!!!延髄斬りじゃぁあああ!!!」
「ウゴォ!!」
「永眠したジャイアント馬場さんに捧げる、ネックブリーカーアアアアア!」
「ウガァアア!」
衛兵はアニキのプロレス技に次々とぶちのめされ、指示を出したヘロデも慄いて退くばかり。そして最後の一人がぶちのめされると、アニキの標的はいよいよヘロデに向けられます。
「さぁどうする?ヘロデ」
「く、くっそ!」
「そろそろ最終ラウンドといこうか?ヘロデさんよ!」
両手をアイアン・クローの構えで、一気にヘロデの元へ飛び出したアニキ。しかし、ヘロデも馬鹿じゃありません。右手に持ってたスイッチを押しました。
ズデーーーン!!!
「いててててて」
ヘロデの足元にあった床が真っ二つに開き、アニキは地下の牢屋へ落とされてしまったのです。地下牢に落されて尻を摩ってるアニキを、ヘロデとヘロディアは見下ろすように笑い上げます。
「ガッデム!てめぇ金網デスマッチなら最初からそう言え!」
「この筋肉馬鹿め!お前のプロレスごっこに付き合ってやれるほど、このヘロデ様は甘くはないのでしゅ。僕ちんの妻ヘロディアを愚弄した罰を、地下牢で思う存分味わうがいいでしゅ!!」
「てんめぇ!!!ヘロデ卑怯だぞ!!堂々と俺様と素手で勝負しろ!」
「ばかちん!誰が堂々と勝負しゅるでしゅか!そこで野たれ死ぬがいいでしゅ!」
ヨハネの叫び声が続く中、ゴゴゴゴゴっと床が閉まっていきます。こうして、アニキは見事にヘロデに捕まってしまいました。地下牢の真っ暗やみの中で、しかしアニキは決して落ち込む事も無く、プロレス技の練習に励みます。もはやパンキッシュという仕事をすっかり忘れているようです。
「さぁって、次のリターン・マッチはどうでるか?ヘロデさんよ」
一方、三話にわたって出番が全く無かった大工のあんちゃんはというと。ねっ転がって、せんべいをボリボリ食いながらテレビを見ています。
「おい、ユダ」
「はい?ブラザー」
「そこでお前、本を読むなって。テレビ見えねェだろ」
「あ、すみませんでした。。。」
それでもユダはずっと『マーシーの法則』にかぶり付いたまま、どこへ消えてしまいました。他の弟子達も、毎日どんどん様子が変わっていくユダに???です。
「おい、マタイ。ユダの奴はどうしたんだ?」
「はい先生。それが、ユダの奴は最近、へんちくりんな本なんか読み始めてるんです」
「ふーん。前は週刊中年ジャンプしか読んでなかったのになぁ。。。」
続く




