第二十話
「なるほどねぇ~、リーダー。そんなことがあったんだ」
「ああ、フィリポ。それ以来、俺は誰かと競争するのは苦手になったのさ」
「なんだか微笑ましいね。結局そのマリヤちゃんとは、それからどうしたの?」
再び、昔を懐かしむように、優しい眼差しの大工のあんちゃん。
「それがなぁ、うちの家族はエジプトに引っ越すことになっちまって。ナザレに戻ってきたときには、もう、モンチッチもいなくなってたよ」
「そうなんだ。。。また会えるといいね?」
「まぁな」
さて、大工のあんちゃん一行は、塩漬け魚肉の生産地で有名な、ガリラヤ湖北西岸にある、マグダラ村へ到着しました。あちらこちらに大漁旗が風に揺られてます。まさにザ・漁師街!
「いやーペテロ。随分とふんどしが似合いそうな世界に迷い込んだな~」
「大工、お前な~。ここは硬派で頑固な漁師が多いんだから、くれぐれも調子に乗んなよ」
「なるほど、お前の同業者にはモーホーが多いのか?」
「だ・か・ら!そういうのが一番ヤバイんだって」
一方、彼らの後ろを一人の男が尾行していました。彼の名前は『ファリサイ』レーベルのパウロ。大手アイドル・レーベル『サドカイ』のザマス・カヤパ大社長から、あんちゃんのライブ妨害を頼まれていたのです。
「ここがお前の墓場だぜ、インチキ伝道師」
そんなパウロの尾行も全く知らない大工のあんちゃん。暫く歩いていると、どこかで見かけた後姿を発見します。
「おおおおお!?お前?ラザロかかぁ!!!?」
「ああああ、同志!」
セクシー女優である早川ツバキちゃんの大ファンである二人は、ファン感謝祭(童貞祭)で知り合った同志だったのです。
「ラザロー!お前、どうしてこんなところにいるんだよ?」
「いやー、同志。それがとんでもない噂を聞きつけたんでっさぁ」
「噂??」
するとラザロは大工のあんちゃんを物陰に誘い込み、二人っきりで内緒話をしました。
「おいおいラザロ。な、なんだよ?こんなところに連れてきて。おれにはそっちの趣味はねぇぞ」
「私だってないですよ、同志」
「それじゃ一体?」
「いえね、実はこのマグダラ村には、『パラダイス・モンチッチ』という大流行りのキャバクラがあるんです」
「大流行りのキャバクラだぁ?」
「ええ。もう、粒揃いの若い女の子達がミニスカートとハイソックスの、絶対領域装備でワンサカ!しかも、そこのトップキャバ嬢が、なんと!早川ツバキちゃん似なんすよ!」
「なにーーーー!!!!!!」
大声を出したあんちゃんでしたが、必死にラザロから口を押さえられます。
「シーーーーーー!」
「す、すまなかった、ラザロ」
「とにかく、そのトップ嬢とは、あるサインを出すと、一緒に大人の階段に昇ってくれるらしんです!」
「なにーーーー!!!!!!」
またまた大声を出したあんちゃんでしたが、必死にラザロから口を押さえられます。
「シーーーーーー!」
「ラ、ラザロ。はな、はな、鼻血が。。。」
「勝負はアフターに誘うことです!」
「ア、アフター!?」
「はい。指名して、忍ばせたコン○ームをチラッと見せるのがサインらしいです」
「コ!コ!!コン!!近藤さん!?」
「それで向こうがOKをしてくれれば、白百合を持ってきてくれるそうなんです」
その話を聞いたあんちゃんは、まさに天国への階段でした。ついに!ついに!男の子を卒業できる!しかも憧れだった、セクシー女優の早川ツバキちゃん似の子と、ちょっぴりうれし恥ずかしいような夢の初体験!二人のイカ臭い童貞は、互いに肩を叩き合いました。
「(ガシ!)ラザロー!」
「(ガシ!)同志ー!」
「ようやく、俺達(未だに童貞)にも花道が訪れてきたな。。。」
「はい!同志。私達(それでも童貞)は、世間に見放されても、天は見放してはいなかったのですね??」
二人は互いに両肩を抱きながら、熱く、きつく抱擁をし出しました。
「(感動して涙を流している)ラザロ!ううう~。苦節三十うん年。待ち望んでいた大人への階段が、まさか!訪れるなんて」
「(感動して涙を流している)同志!ううう~。僕達は雨にも負けず、風にも負けず、ひたすら早川ツバキちゃんに思い焦がれ、毎晩毎晩、汗の滲むような。。。」
「(感動して涙を流している)ラザロ~、みなまで言うな。ううう~。女性の読者も多い。それ以上の表現は18禁だ」
「(感動して涙を流している)でしたね?気をつけます、同志。後で、今夜の真夜中に、そこの店の前で会いましょう!」
「(感動して涙を流している)おう!」
すると心配になったペテロが、あんちゃんの様子を見にやってきました。
「おい、大工。ったく、お前はラザロと何をして。。」
「あ。。。」
ペテロの目に映ったのは、男二人が泣きながら、熱く抱きしめあってる姿でした。
「だーーーー!!!お前ら何やってるんだよ!?」
「いや、違う!ペテロ。これは、その、誤解だってぇ」
「こ、この野郎。お前は、そういった恥ずかしい趣味があったのか!?」
「ペテロ!違うんぞ!お前は海よりも深く、空よりも高く誤解しているぞ!」
さて、すっかりペテロの誤解も解けて、食事も終わった頃。大工のあんちゃんはモンモンしてました。夜更けまで起きようとするヨハネとヤコブにイライラしながら、とっとと寝ろ!っとしかりつける始末。ようやくみんながね静まってくれました。
"今夜の真夜中に、そこの店の前で会いましょう!"
モソモソ……。
ムクムクっと一人起き出す人影がありました。もちろんラザロの言葉に目をギラギラさせて、興奮しているあんちゃんです。
【第一のミッション!『自由への脱出』】
場所:寝室
指令:寝相の悪い弟子達を起こさずに、寝室から見事抜け出せ。
頭に被った布切れを鼻下辺りで結んだあんちゃん。準備はばっちしです。そして抜き足差し足忍び足で、こっそりと寝室から抜け出て行こうとしてます。
「むにゃむにゅむにゃ~」
「!?(小声で)なんだ、フィリポか。ビックリさせやがってぇ」
抜き足差し足忍び足。
「グガーーーーーーーーーゴオオオオオオ!」
「!?(小声で)シモンかよ~。うるせぇいびきだな?」
そして抜き足差し足忍び足……。
「ヒッヒッヒッヒ~」
「!?(小声で)怪しい奴め、トマス」
さらに抜き足差し足忍び足……。
「ワッツアップ!ザッツハウアイロール、メーーン!ビヤッチ!」
「!?(小声で)ユダ。。。お前ってやつは、スラングしか喋らんのか。もっと勉強しろ」
大工のあんちゃんは静かに静かに寝室の扉を開けて、だーれも起きていない事を確認してから、ゆっくりと扉を閉めようとしてます。
ムクッ!
「なに!?」
「(呟き)リーダーは、最高なう」
バルトロマイは寝ぼけたままTwitterで呟きだしました。いい加減うざい弟子達に苛ついたあんちゃんは、iPadのアプリから呟き返しムーンサルトで返事をしました。
「(呟き)いい加減、とっとと寝ろ!」
すると寝ぼけてるバルトロマイ、うなづいて、バタンキューしました。
「ふぅ~。ビビらせやがって」
こうして、第一のミッションは完了しました。さて、『パラダイス・モンチッチ』へ向かう前に、チェリーの彼には第二の関門があります。
【第二のミッション!『自由への装備』】
場所:コンビニ
指令:素早い動きで他の客の視線をかわし、ばれないように近藤さんを購入しろ。
真夜中のコンビニというのは、とかく酔っ払いやら立ち読みの若者がたむろしています。あんちゃんは早速、本棚のあるコーナーから二列目の、化粧品コーナーに向かいました。しかし、あんちゃんは度肝を抜きます。
「な、なに!?こ、こんなに種類があるのか。。。」
そうです。『明るい家族計画』とキャッチコピーの書かれたきったない自動販売機は昔の話、いまやポップなものから有名ブランドまで、さまざまです。さすがの童貞あんちゃんも、どれを買っていいのか?分かりません。
「うーん、世界一の薄さを求めるべきなのか?」
モワモワモワ~ン。あんちゃん、早川ツバキちゃん似のトップキャバ嬢との会話を妄想中。
"いやーん、薄くてビックリー"
「それとも、形を求めるべきなのか?」
モワモワモワ~ン。あんちゃん、早川ツバキちゃん似のトップキャバ嬢との会話を妄想中。
"いやーん、ゴワゴワしてる~"
「はたまた、美しさを求めるべきなのか?」
モワモワモワ~ン。あんちゃん、早川ツバキちゃん似のトップキャバ嬢との会話を妄想中。
"いやーん、かわいい~"
色々考え過ぎて鼻血が出そうになったあんちゃん。
「いやいや、いかんいかん。やはり、ここはオーソドックスに」
と言いつつ、しっかりちゃっかりと世界一の薄い0.03ミリを手に持つあんちゃん。幸運にも、真夜中のバイトは女の子ではなかったので、余裕綽々と近藤さんを購入しました。こうして二つの関門を突破したあんちゃんは、待ち合わせしたラザロと一緒に『パラダイス・モンチッチ』に入店します。
「ラ、ラザロ!?な、なんなんだここわ!!!!???」
「ど、同志!?どうしましょう!?」
続く




