第十六話
その晩、村に泊まったあんちゃん一行は、オリーブ木々が実る庭園で、弟子達と夜な夜なグループ討議をしてました。岩に座ったあんちゃんは、集まって耳を傾ける弟子達に問いかけます。
「実は、お前達に一つ聞きたい事があるんだ」
「何すかリーダー?」
「さっきのラザロっちの事なんだが、お前らは、俺があいつの事を見下してたと思うか?」
あんちゃんの問いかけに、弟子達は互いに顔を見合わせて話し合い、大体の弟子達は首を横に振ります。一番下っ端のユダが手をあげて発言しました。
「いいや、ブラザー。絶対にそんなことあり得ないっすよ」
「どうしてだ?ユダ」
「だって、あのマザファッキンなラザロ野郎は、自分が醜い姿をしてるから卑屈になってるじゃないっすか」
「でも、卑屈になってる奴からすれば、やっぱり俺は見下してた事にならねぇか?」
「ブラザー。あんなサノバビッチの言ってること、いちいち気にする必要ないっすよ~」
確かにそうだそうだと、弟子達は互いに見合って頷いています。しかし、ペテロの弟アンデレは、手を挙げて反対意見を述べます。
「先生、でも僕は、やっぱりラザロは見下されていると感じてたように思います」
「アンデレ、どうしてそう思う?」
「昔、僕は背が低かったけど、背の事を言われると、そん時、やっぱり嫌な気分になりました」
「そうだよな。きっと、そんな風に相手は思ってなくとも、言われた方は傷つくよな?」
あんちゃんは両腕を組んで、うーんと唸って困った様子です。ペテロはそんなあんちゃんの姿に???
「大体、大工。なんだって、あのラザロって野郎の事を構うんだよ?」
「ペテロ。実はな、あのラザロって、どっかで見かけたんだよ。どこだったか忘れちまったけど。まぁーなんちゅうか、ほっとけないちゅうか」
「気のせいじゃねぇか?第一、ツバキの花を切り裂いてるなんて、まるで男に振られて癇癪起こした女だな」
するとユダは、腹を抱えてケタケタと笑い出します。
「へっへっへっへ、あのファッキンアグリーな顔じゃ、女だって俺はゴメンだね!」
弟子達もユダに反応して、クスクス笑っています。だが、あんちゃんだけは真面目に怒ってました。
「おい、ユダ!人を見かけで判断したり、馬鹿にするじゃないちゅーの」
「ブ、ブラザー?!」
「お前、その坊主をハゲって馬鹿にされたら、ムカつくだろ?」
「容赦なくキルです!」
「いいか?つまり人には触れられたくない、悲しいことだってあるんだよ。俺だって、セクシー女優の早川ツバキちゃんが引退したって聞いた時は、仕事も手に付かないくらい、そりゃあ悲しくて悲しくて。。。」
すると大工のあんちゃんは突然固まってしまいました。弟子達は心配して、あんちゃんの顔の前で手を振って気が付かせようとします。
「あああ!思い出した!!!」
「うわ!ビックリした!」
「(ポーンと手を叩く)ラザロの奴、それでイラついてたのか~!」
するとあんちゃんは一人、駆け足でラザロのいる家へ向かいます。
「おい、大工!どこ行くんだ?!」
「ペテロ!ちょっくらラザロんち行ってくる!」
「こ、こんな真夜中にか?!」
ところがあんちゃんが到着すると、ラザロの家では家族達が、嘆き悲しんで泣いていました。
「うううう~。ラザロ~!!!」
「どうしてええええ?あんたは死んでしまったんだ~」
あんちゃんはビックリしました。家族の話によると、昨夜家に帰ってきたら、部屋に閉じ籠って死んでやるーと叫んだまま、出てこなくなったのです。
「うううう、確かにあの子は、うううう。偏屈なところがあったかもしれないけど、本当は心根が優しい子で、うううう」
「だからって、うううう、何も死ななくったっていいのにいいいい!!!」
家族を優しく慰めるあんちゃん。自分がラザロの様子を見てくると言って、あんちゃんはラザロの部屋へ向かいます。あんちゃんが扉を開けると、中からはイカくさい異臭が立ち込めてきました。
「ああああ、やっぱりラザロは死んでしまったのよーーーー!」
鼻を摘まんで嘆き悲しんでいる家族達でしたが、あんちゃんは確信します。そして、一呼吸してラザロに話し掛けました。
「おい、ラザロ。出て来い!」
しかし、反応はありません。
「俺のこと忘れたか?」
それでも、反応はありません。
「(小声でボソボソっと) お前に貸した早川ツバキちゃんのAV、そろそろ返してくんねぇ?」
すると!ミラクルが起きました!イカくさい異臭を放ってた部屋から、ラザロが突然手を伸ばしてきたのです。
「同志!あ、あんただったのか?!」
あんちゃんはラザロの右手を引っ張り出して、抱き寄せました。ついでラザロの左手にある早川ツバキちゃんのDVDも、しっかり受け止めました。しかし、家族達はラザロが蘇ったと勘違い。
「あわわわ!!!!ラ、ラザロが生き返った!!!」
「いやいや、そんなんじゃなくって」
「すごいぞ!この大工のあんちゃんが、うちのラザロを蘇らせたぞ!!」
「あ、いや、そうじゃなくって」
大工のあんちゃんは苦笑い。横にいるラザロも困り果ててます。必死に家族へ説明しようとするあんちゃんですが、誰も聞く耳を持ちません。
「ったく、あのですね!ラザロはただ単に、夜中じゅうひたすら、一人でオナ。。。」
「だーーー!同志!それ以上は18禁だから、ピー!って音声入るよ」
「お、おう。そうだったな。結構、女性の読者層も多いんだった」
実は何を隠そうこの二人、セクシー女優である早川ツバキちゃんのファンで、感謝祭で知り合った童貞同志だったのです。ラザロは引退したツバキちゃんが結婚した事に嘆き悲しみ、だから、イメージフラワーであるツバキの花を切り裂いていたのでした。
「ラザロ、朗報だ。エルサレム近くのシロムア池に行って来い」
「同志、どうして?」
「結婚したツバキちゃんが、そこで花売りしてるって噂だ」
「マ、マジで?!」
「おう。しっかり使い込んだ利き手で、彼女と握手して来いって」
「おおお同志!やっぱりツバキちゃん最高だ!なんか俺は目が覚めたぜ!」
ラザロの家族は大工のあんちゃんに、抱きついて感謝の言葉を述べ始めました。しかし、あんちゃんは恥ずかしいので、どうかこの事を誰にも言わないでって頼んでます。ますます好感度がアップするあんちゃん。しかし、そんな様子を、物陰から一人の男が見つめていました。
「フン、あれが噂のミラクルな大工野郎か。。。」
そう彼こそが、カヤパ大社長からあんちゃんの妨害を頼まれた、『ファリサイ』レーベルのパウロでした。
続く




