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第十五話

今や大工のあんちゃんの人気は、あのパンキッシュなアニキの人気さえも追い抜け追い越せ状態です。しかし、いつの時代でも他人の人気にやっかみをする、心の狭い人間はいるものです。


「キィ~!何がパンキッシュでザマすか!?キィ~!何がロックでザマすか!?」


ここはエルサレムにある、大手レコードレーベル会社『サドカイ』。悔しがっているのは、ジャラジャラと金銀宝石で着飾り、二本のチョビひげをピーンと伸ばしたカヤパ大社長でした。


「あたしのアイドル・ビジネスを邪魔する輩は許さないザマす!!」


大手レーベル『サドカイ』は、ヤクザ・ローマ帝国に上納金を納めることで、エルサレム市にある神殿ライブ会場でアイドル・フェスティバルを開いて、高額なチケットを捌いて稼いでいました。


「パウロ~!パウロはおるザマすか~??!」

「うぃーっす」


ボサボサ頭のこの男。彼は

大手レーベル『サドカイ』に吸収合併させられた、ヒップホップレーベル会社『ファリサイ』のパウロです。


「カヤパ社長、なんかお呼びっすか?」

「クェー!?なんザマすか?その汚い格好?それに酒臭いザマす!」


はっきり言ってパウロにはやる気などありません。大手レーベルの言いなりになっている現状に、嫌気が差していたのです。


「とにかく、このままじゃうちのアイドル・ビジネス存亡の危機ザマす!アニキと大工のライブを妨害してくるザマす!」

「ういーっす」


カヤパは鼻を摘まみながら、シッシと手で払います。パウロは一礼して社長室を出ますが、内心腸煮え繰り返えっていたのでした。


「ちくしょう、カヤパのクソ野郎!ドンガバチョみたいなヒゲしてるくせに、偉そうにしやがって」


さて、その頃大工のあんちゃん達一行は、次のライブ会場を求め歩いています。


「フィリポ、やっぱり漫画の神様手塚治虫先生の代表作と言えば、『鉄腕アトム』だよな~」

「いや、リーダー。やっぱり『ブラックジャック』でしょう?」

「お前は若い。いいか?手塚先生は、未来を担う子供達を願って、ヒーローを少年型のロボットにしたんだぜ!」

「いやいや、リーダー。それを言うなら、一話完結として始まった『ブラックジャック』こそ、新たなマンガのジャンルを生み出したんだよ!」


二人のマンガ談義を聞いて、今まで影が薄かった漁師兄弟のヨハネとヤコブも感化されます。


「ヨハネ、やっぱりトラウマになる手塚先生の代表作は『火の鳥 宇宙編』だよな?」

「いや、ヤコブ。愛と性による悲劇の輪廻を描いた『アポロの歌』でしょう?」

「ああ!あれはトラウマになるわ。そうなると、人間の原罪を描いた『きりひと讃歌』も無視できない」

「ならば俺は、手塚マンガのキャラクターで描いた、ドストエフスキーの『罪と罰』が一押しだぜ」


どうやら漁師兄弟達の好みは、ヘビーで重厚な物語のようです。一行がある村に行くと、ツバキの花々をぎったんばっこんに切り裂いてる、醜い顔をした青年ラザロに会いました。


「おいおい!お前なにやってるんだよ?!」

「あああ?!」


あんちゃんは醜いラザロへ駆け寄って必死に止めます。


「駄目じゃないか。せっかく咲いてるツバキを、そんなにいじめちゃ可哀想だろうが?」

「うるせーな!よそ者は引っ込んでろ!」


ドン!


ラザロはあんちゃんをどつき、地面に倒したのです。それを見たユダはすぐにブチ切れて、ラザロの襟首を掴みました。


「クソガキ!てめぇ!俺のブラザーに何しやがるんだ?!」

「あああ?!何だ?てめぇ?!」

「こちとら、イスカリオテのユダって名前があんだよ!」

「ケッ!このカリオテのくそボンボンが!」

「んだと?こら!?もういっぺん言ってみやがれ、クソガキが?!」


まさにラザロとユダは一触即発状態。しかし、埃を払って立ち上がったあんちゃんは、襟首を掴んでるユダを静止します。


「やめろ、ユダ!」

「ブ、ブラザー?!どうしてですか?!」

「いいから!その手を離せ」


すると渋々ユダはラザロから手を離します。あんちゃんは笑顔で、そのクソガキに話し掛けます。


「うちのもんが無礼を働いてすまなんかった」

「ケッ!ちゃんと教育しておけよ!」

「ああ、そうするよ」


だが、あんちゃんはこのラザロが、ツバキの花々を切り裂いているのが気になって仕方ありません。


「なぁ?ラザロっち。もし良かったら、お前がムシャクシャしてる事、俺に話してくれないか?」

「はぁ?何で、てめえなんかに話さなくちゃいけねぇんだよ?」

「いやさ、きっとお前嫌な事があったんだろ?」

「はぁ?!」

「だって、こんなに綺麗なツバキの花々を切り裂いてるだからさ」

「。。。」


ラザロの足元にはいっぱいツバキの花びらが落ちてました。それを指摘されたラザロは、段々イライラし始めて、ついに癇癪を起こしたのです。


「うるせー!!!!てめえはこんな花が綺麗だって言うのかよ?!ああ?!」

「お、おい、ラザロっち。落ち着けって」

「恵まれてる奴っていうのは、そうやっていつも俺を見下すんだよ!!」

「誰もお前の事なんか、見下していねぇぜ」

「大体何様のつもりなんだ?俺の気持ちを分かったような言い方しやがって!お前のような童貞なんかに、俺の気持ちが分かってたまるか!!」


さすがのペテロとマタイは焦りました。大工のあんちゃんが一番気にしていることを、ラザロは挑発するように言ったからです。こうなったら、怒り出す大工のあんちゃんを止める者はいません。


「そうか、悪かったな、ラザロ。。。」


ところがです!この日の大工のあんちゃんは全く怒りもせず、しかも相手に謝ったのです。ペテロ達は???でした。


「二度と俺に偉そうな事を言うんじゃねぇぞ!てめえ」


捨て台詞を吐いて、その場を去って行くラザロを見つめているあんちゃんは、どこか寂しそうな顔をしていました。


続く

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