第十三話
さて、ガリラヤ湖では数々のミラクル(本当かよ?)を起こした大工のあんちゃん。南の地方にあるカリオテへ向かいます。
「フィリポ、やっぱり石ノ森章太郎先生の代表作といえば、『サイボーグ009』だよな~」
「いや、リーダー。やっぱり『スカルマン』でしょう?」
「お前は若い。いいか?009のメンバーは各国の特徴を表していて、漫画界で始めて人種を描き分けたエポックメイキングな作品なんだぞ」
「リーダー。それなら両親を殺されたスカルマンの復讐に燃える姿は、いつの時代でもエポックなストーリーでしょ~」
「いやー、フィリポ。フランソワーズの美しさと色気は世界一だな」
「いやいや、リーダー。それなら絶対に女ライダーだって!妙な艶があるんだって」
するとそれを聞いてたペテロが、遠くの方で聞こえないように呟きます。
「(小声で)ったく、チェリーズが。二次元キャラに萌えやがって」
さて、一行はようやくカリオテにたどり着きます。ここは香油売りが盛んで、多くの商売人も集まってくる場所。
「さあーさあー!皆さん。カリオテにようこそ!今日はお祭りですから、みんな楽しんでくださいね!」
飲めや歌えやで、みんな大にぎわい。お好み焼き、焼きそば、たこ焼き、金魚すくいなどなど。
「いやー、ここの街は活気があっていいね~」
「リーダー、金魚すくいでもする?」
「イイね~フィリポ。これでもナザレでは『金魚すくいの寅さん』って言われたほど、スンゴイんだぜ」
一方、他の弟子達は、お祭りのメイン会場に向かってます。
「さぁ、みなさん!今年も祭りの季節がやってきました!今宵も最高のMCバトルが繰り広げられることでしょう!」
フリースタイルの哲学ラップで相手をディスし合い、互いの所持金を奪い合うMCバトルが開催されてました。
「昨年四度目の防衛に輝いた『チーム・ユダス』!彼らは今年も五度目の防衛になるのか?!」
チーム・ユダスとは、この地方において香油売りで富豪な家のボンボンであるユダを筆頭とした、ニュー・スクール哲学ラップを得意とするギャング集団です。
「もし彼らに勝った場合、王者の栄光はもちろん、賞金二十ローマ硬貨が貰えます!もちろん負けた場合には、挑戦者の所持金を全て頂きま~す」
ボンボンのユダは金アクセサリーをゴテゴテと着飾り、マルコムXと書かれた黒いニット帽をかぶり、黒光りするサングラスを逆さまにして、両脇に二人の子分を従えながら、両腕を堂々と組んで、偉そうに深々とソファーに座ってました。
「さぁ!我こそはという挑戦者はいますか!?」
元ヤクザ帝国の税金収税人マタイとタダイが眺めていました。
「賞金二十ローマ硬貨か~。タダイ、すっごいな~」
「マタイやってみたら?」
「いや、お前やってこいよ」
「えへへ、どうしようかな~」
すると二人の横にいた無口なバルトロマイが、突然すっと手を上げて名乗り出ました。
「おおおっと!ご覧ください!なんと、一人の若者が、チーム・ユダスに挑戦しようとしているではありませんか!」
司会者はバルトロマイにステージへ上がるよう指示します。
「バ、バルトロマイ!?お前ラップなんかできるのか?」
「(コクリ)」
「大体、お前は喋るときでもTwitter経由で呟いてるだけじゃんか」
しかし上半身裸になって気合を入れるバルトロマイは、まったく彼らの話を聞こうとしません。すでに会場からは気合十分の挑戦者に拍手を送られておりました。ユダは両腕を組んだまま立ち上がり、
「フフフ、おろか者め!」
しかし、勝負の世界は非情です。動きだけがラッパーみたいなバルトロマイでしたが、あっという間にユダのディスに負けてしまいました。
「バルトロマイ!お前、動きだけじゃんか」
「(呟き)タダイ、僕はかなりショックなう」
「よーっし、僕が代わりに勝負してやる!」
しかし素人が簡単に勝てるほど、ボンボンのユダも甘やかされてはいません。結局、弟子達全員が勝負に挑みましたが、カリオテのラッパーにことごとく負けてしまう始末。
「おい、マタイ!お前、なんてことしてくれるんだ!?」
「だって、ペテロ。タダイとか一生懸命戦ったのに、可哀想だから勝負したんだけさ」
「だーーー。会計士のお前までもがやられたら、これじゃ俺達は一文なしだぜ!」
「うーん、すまない。ミラクルな大工の先生を呼んできてくれ」
その頃、大工のあんちゃんはフィリポと一緒に、のんびりと金魚すくいを楽しんでいました。
「フィリポ、あそこの黒い金魚ベイベー、なかなかしぶとい奴だな」
「リーダ、あれは出目金だから、スライドして捕らえるしかないよね」
「よーし」
大工のあんちゃんは気合十分。すると、弟子のペトロが後ろから二人の元へ駆け寄ってきます。
「おーい大工、た、大変だ!」
しかしペテロは躓き、あんちゃんの背中を押してしまいました。その勢いで、金魚すくいの紙は無残にも破れてしまいます。
「ああああ!ペテロ!おめぇーなんてことしてくれんだ!?」
「そ、それどころじゃねーよ、大工。大変なんだって」
「せっかく俺は、あの黒い出目金をとらえようとしたのによ~!おい、ペテロ。もう一回挑戦するから、硬貨出せ」
しかし、ペテロは自分の懐から金袋を逆さまにして、スッカラカンをアピール。
「無いだ?!ふざけるな!あれだけお金を遣いすぎるなって言ったのに。お前らは何考えてんだ?」
「だからさっきから大変だって言ってるだろ!つまり、俺達の有り金、全部取られちまったんだって」
「何だと!?誰に取られたんだ!?」
「チーム・ユダスのユダっていう、ニュー・スクール哲学ラップを得意とする連中にだよ!」
「ニュー・スクール哲学ラップだぁ?」
すると大工のあんちゃんは顔色が変わりました。何か、思うところがあったのかもしれません。すると十匹以上の金魚を捕まえた小さなボールを、店の親父に突き出しました。
「親父、わりーが預かっててくれねぇか?」
「おう!いいぜ。チーム・ユダスを負かしに行くんだろう?」
「ああ。ニュー・スクール世代のくせに、偉そうな名前を付けやがって」
「あいつらはここのボンボンなんだがよ、やりたい放題なんだわ。もしあんたがあいつらを負かしたら、今破れた金魚すくいをチャラにしてやるからよ」
「さすが親父、話がわかるじゃねぇーか。フィリポ、ペトロ。ついてこい!」
こうして、大工のあんちゃんはチーム・ユダスに哲学ラップを挑むのでした。
続く




