第百十七話
<大工のあんちゃん最終章 受難!ゴルゴタ丘ライブへの道編!!>
あんちゃんとロンギヌスの戦い!最後の最後で勝ったのは、ローマ軍の百人隊長ロンギヌスだったのです!
「我がローマ帝国に栄光あれ!」
ローマ軍にて強靭な肉体を鍛えられたロンギヌスは、あんちゃんの蹴りで深いダメージを負ったものの、右手を天に掲げていました。
「ロンギヌス隊長が勝ったぞ!!」
「反逆者をひっ捉えろ!」
ローマ兵士達は地面にぶっ倒れているあんちゃんを一斉に囲み、全身に鎖をきつく巻きつけて拘束します。
「反逆者を確保!!」
「うむ」
あんちゃんに気絶させられたカッシウスも、ようやくロンギヌスの手によって目が醒めました。
「大丈夫か?カッシウス」
「ロ、ロンギヌス隊長。すみませんでした」
「いや、謝る事はない」
「と、ところで大工の奴は?」
ロンギヌスはあんちゃんのいる方を、自らの顔でカッシウスに示します。そこには全身を鎖で縛られ、ローマ兵士達から立たされてるあんちゃんがいました。ロンギヌスはあんちゃんの側に近付きます。
「クッ!ロンギヌスの旦那。負けたのは俺だったのか?」
「そのようだな。だが、お前の奮闘ぶりも凄いものがあった」
それを聞いたあんちゃんは無駄な抵抗はしません。ですが傷だらけの顔から放つその鋭い眼光は、未だにロンギヌスに挑戦状を叩きつけています。
「どうやら、大工。お前も諦めがついたようだな」
「いいや。俺はどんな事があっても生き延びてやる」
「あれほど俺の牙狼双烈拳をまともに喰らったというのに、その根性だけは認めてやろう」
近くにいたカッシウスは、あんちゃんの迸るような存在感に茫然としています。そしてその横にもう一人、あんちゃんの存在に跪いて、祈りをささげている男がいました。ロボスの力によって右耳を治癒されたマルコスです。
「マルコス!何をやってるんだ?立て!」
「ロンギヌス隊長、今すぐその御方を鎖から解き放って下さい!」
「な、なんだと!?」
「その御方は神の遣いであり、神の言葉を預かる預言者です!」
ロンギヌスは、マルコスのあんちゃんに対する狂信的な態度を叱責します。あんちゃんもその奇怪なマルコスの行動に理解不能でした。
「何を馬鹿な事を言ってる!?こいつはローマ国家に反抗した反逆者だ!」
「いいえ、この御方こそ救世主です!彼を処刑してはなりません!」
「うるさい!貴様はそれでも、ローマ兵士か!?」
バシン!
マルコスのふざけた発言に、右頬を叩くロンギヌス。しかしマルコスはなんと!さらに左頬を突き出したのです。
"我が救世主の為なら、ローマ国家の名誉も軍律も投げ捨てる!"
ロボスがくれた人間の本音が聞こえる能力で、マルコスの本心があんちゃんの心に響き渡りました。
「貴様!上官に対する不服従は十分の一刑だ!覚悟しろ!!」
十分の一刑とはローマ軍隊で行われる極刑です。このままではマルコスは自分の味方に殺されてしまいます。
"さぁ、どうする?あんちゃんさん"
悪魔のようなロボスの囁きが、再びあんちゃんの心を掻き乱しました。叱責を受けてるマルコスは、それでも目を閉じて覚悟を決めてました。
"自分の為なんかに、マルコスを死なすわけにはいかない"
なんと!あんちゃんはロンギヌスの怒りの矛先を、ワザと自分へと向けさせたのです。しかも、あのアニキの口調で。
「ククク、お前達ローマ人は、つくづく哀れだな」
「?!」
「弱き者を暴力のみで従わせ、強き者として悦に入るなんて。本当に哀れだとし言ってるんだ」
ロンギヌスはローマを愚弄するあんちゃんを睨みつけます。
「大工。お前らしくない、挑戦的な物言いだな?」
「そうか?俺は事実を言ったまでだ。貴様らローマ帝国は、本当は俺たちのような弱者恐れているのさ。それを悟られぬよう、暴力と法律で従わせているだけなんだ」
「なんだと?!」
「フン。正に軍神マルスが処女で巫女のレイアを強姦し、双子を孕ませた国らしいやり方だ」
あんちゃんの挑発的な言葉にキレたロンギヌスは、近くにいたカッシウスの槍を奪ってぶっ殺そうとしました。
「ロンギヌス隊長!止めてください!」
やばいと感じたカッシウスは、すぐさまロンギヌスを後ろから羽交い絞めで制止します。
「離せ!カッシウス!こいつだけは!こいつだけは許せん!」
「駄目です!属州住民に総督のリコール権があることを、お忘れですか!!!」
「?!」
「今、この男殺せば、ユダヤの民達は此奴を殉教者と崇め、反乱が必ずや起きます!そうなれば、ピラトゥス様のユダヤ属州総督の任も罷免となります!正にヨハネと同じ挑発をしておるのです!!」
「うるさい!何人たりとも我がローマ帝国を愚弄した人間は、このロンギヌスが成敗してくれる!」
「今この男を殺せば!我々はロンギヌス隊長自身を、十分の一刑に処さねばなりません!!」
「グッ!!!」
するとロンギヌスはカッシウスを力任せで振り払い、あんちゃんの喉元目掛けて槍の先を近くで止めました。しかしあんちゃんは微動だにしません。
「どうした?ロンギヌスの旦那。ローマ帝国を愚弄した俺を殺さないのか?」
「ウグググ!!!」
ロンギヌスを敢えて嘲笑するあんちゃん。怒りで震える手を抑えつけるロンギヌスは、槍の先を地面に落とすしかありませんでした。
「懸命だな、ロンギヌスの旦那。結局あんたも十分の一刑を恐れるローマの子分ってことさ」
「。。。」
槍を柄の方で持ち替えたロンギヌス。
ドス!ドス!ドス!
「うぐ!うげ!うが!」
素早い動きで、あんちゃんの喉元、腹部、右目を叩きつけました。
「あまり調子に乗るなよ、属州民のクズめ!」
うなだれるあんちゃんですが、ローマ兵士によって無理矢理立たされてる為、全身を縛る鎖が肉片に食い込み、激しい痛みが襲い掛かってきました。ロンギヌスはあんちゃんの髪をガッチリ掴み上げます。
「貴様を殺せなくとも、ローマ軍最高の拷問でたっぷり料理してやるからな!」
「へへへへ。ロ、ロンギヌスの旦那。しっかり、た、楽しませてもらうぜ」
「!!」
ガツッ!
再びロンギヌスに叩かれるあんちゃん。全身の鎖がさらに肉片へ食い込んでいきます。
「うがあああああ!!」
この時マルコスは、ようやく気が付いたのです。ロンギヌスの暴力に耐えているこの男が、敢えて自分の為に身代わりとなっていることを。
「ローマ帝国に反逆する愚か者を逮捕した!これよりカヤパの元へ連行する!!」
続く




