第百十五話
<大工のあんちゃん最終章 受難!ゴルゴタ丘ライブへの道編!!>
あんちゃんがロボスと話を終え、ペテロとトマスの二人が待つ場所に戻りました。
「ぐぁああああ~!」
「むにゃむにゃ~!むにゃむにゃ~!」
二人は寝腐ってやがりました。周りには氷結の空き缶が転がってる始末。たち悪く飲んだくれてやがったのです。
バフォ!!!
しかもペテロは寝ながら屁をする始末。それが臭いのなんのって。ムカついたあんちゃんは、まるでプロレスリングのコーナーの如くオリーブの木に登り、二人に目掛けてジャンプしました。
「喰らえ!アニキ直伝!エルボーアターーーっく!!!」
ドカ!バコ!
「アグァ!」
「うげ!」
あんちゃんのエルボーをマトモに食らった二人。しかし二人は怒り狂い、あんちゃんの襟を掴みます。
「痛ぇじゃねーか、元大工!」
「ったく、お前らは少しの時間も起きてらんないのか?!」
「んだとコラ?!元ヤン!大体、一人でブツクサ喋っててよ」
どうやら、二人にはロボスの姿は見えないようです。とにかく、あんちゃんは二人を落ち着かせる事にしました。
「ペテロ、トマス、とにかくここは危険なんだ。ローマ軍がやってくる前に、お前達は他の奴らと一緒に逃げろ」
「な、なんだと?」
「お前はどうすんだよ?元ヤン」
あんちゃんは少し沈黙したまま、陽気な笑顔を浮かべました。
「大丈夫だ、安心しろ。俺がここで奴らを食い止める」
「なに馬鹿な事を言ってるんだ?!相手はローマ軍だぞ!」
「そうだ、元ヤン!ミートくんを救うロビンマスクのつもりかよ?!」
「だーーー!!俺にはロビン戦法よりも凄いのがあんのよ」
ザッザッザッザ!ザッザッザッザ!
しかーーし!ローマ軍はオリーブの木々を掻き分け、遂にあんちゃん達のいる場所に辿り着いてしまいました。
「ロンギヌス隊長!奴らを発見しました」
先頭の剛力なマルコスが声を張り上げると、三人もついにローマ軍やユダヤ兵に見つかります。血気盛んなペテロは懐で短刀を握りしめ、冷静沈着なトマスは突破口を探しています。真夜中で視界が悪い中、ロンギヌスは右手である人物に合図をしました。
「へ、へへへ。元気か?ブラザー」
なんと!あのユダが苦笑いしながら現れてきたのです。これにはペテロもトマスも驚愕。ですがあんちゃんは嘆くような瞳で、ユダをジッと見つめています。心臓をバクバクさせるユダは、あくまでもフレンドリーな態度であんちゃんに近付いて行きました。
「ユダ」
「ブ、ブラザー」
「好きにするがいい、ユダ」
心臓を鷲掴みされたような苦しさが、ユダの全身を激しく襲い始めました。しかし、カヤパからもらった30枚のローマ銀貨が右手で鳴り響くと、ユダは信頼の証としてあんちゃんの右頬に口づけをしたのです。
「ブラザー、俺はあんたが羨ましかっただけなんだYO!」
ユダの口づけを合図に、松明を投げ捨てたローマ軍とユダヤの兵士達が、一斉にあんちゃんへ向かって走り出しました。この瞬間を待ち構えていたかペテロとトマスも、気合バッチリで特攻を始めました。
「ペテロ!トマス!止めろ!」
「うるせぇ!元大工!」
「そんな場合か!?元ヤン」
トマスはジャッキー・チェンの如く、見事にユダヤ兵士達を蹴散らして、突破口を開いていきます。一方、ローマ兵士のマルコスは、ペテロを捉えてその刀で切りつけようとします。
「アイヤーーー!」
「はい!ハイ!ハイ!ハイ!」
まるで燃えよデブゴンのサモ・ハン・キンポーの如く、素早い身のこなしでマルコスの剣術をかわすペテロ。そして隙を見て、懐から短刀を取り出しました。
ザクッ!!!
ドサ!なんとペテロは、マルコスの右耳を斬り落としたのです。
「うぁあああああ!!!」
マルコスの返り血を浴びたペテロ。そして余りの激痛に地面にのた打ち回るマルコス。
「馬鹿野郎ぉおおおおお!!」
あんちゃんは憤慨してペテロを叱りつけました。その言葉で我に返るペテロ。周りには獲物を捉えようと、狼の如く鋭い雁行を光らせるローマ軍。
「ロボス!頼む!さっきのボーナスだ」
「了解、あんちゃんさん」
斬り落とされたマルコスの右耳を拾ったあんちゃんは、すかさずそのままマルコスの耳元に近づけ、エジプト語であるヒエログリフで祈り出したのです。
「"死の世界を彷徨う太陽神ラーよ、守護神ウロボロスに癒しの力を授け給え"」
するとあんちゃんのそばにいたロボスは光出し、ボワ〜ンっとあんちゃんの指先を輝かせます。
"動くなよ、マルコスとやら"
光の玉になったロボスは、あんちゃんの指先を介して、一瞬に輝き始めました。その光景にローマ軍もユダヤの兵士も目をまん丸にしてます。
「なんなんだぁ?!」
地面に両膝をつけたままのマルコスは、何が起きたのか分からず、ただあんちゃんを見上げました。すると悪戯好きなロボスは、マルコスの右耳そばで呟きました。
"迷える子羊よ、キサマに幸あれ"
この世の人間とも思えぬロボスの低い声に、思わずマルコスは耳を塞ぎました。
「ヒイイイ!悪魔ディアボロスの囁きだ!!」
しかしマルコス自身は塞いだ耳を確かめると、なんと!斬り落とされたはずの右耳が元通りになっていたのです。
「そんな、俺の右耳が治ってる!」
これには周囲にいた人間達はビビりまくりの珊瑚礁です!さっきまで勢いが良かったユダヤの兵士達は、その信心深さから武器を放り出しました!
「か、神の怒りだ!!!」
「メシアの降臨だ!」
「逃げろ!!」
神の怒りに触れたとばかりに、彼らは武器を放り出して逃げてしまいました。流石のローマ軍も驚愕して後退りをしてます。ロンギヌスに至っては、自分の目を疑うしかありません。
「ペテロ、トマス。お前達はこの隙に逃げろ!」
「お、おう!」
「分かった!」
二人はユダヤ兵士に混じって、あんちゃんを置いて逃げ出しました。それを微笑んで見送るあんちゃん。ようやく我に返るロンギヌスは、カッシウスと共にあんちゃんへ短刀を向けました。
「へへ〜ん、ローマ軍のお出ましか」
あんちゃんは指をポキポキ鳴らしながら、ローマ軍の百人隊長を、なんと!挑発し始めたのです!
「そこのチビなローマ人だったけ?(ポキポキ)俺の頭突きを(ポキポキ)喰らったままの馬鹿野郎は(ポキポキ)」
「な、何だと?!キサマ!!!」
さすがは元ヤンキーのあんちゃん。既に喧嘩の構えを始めてます。ロンギヌスもカッシウスも勇み足で走り出しました。
「一人ずつじゃ埒が明ねぇ!!てめぇら束になって、掛かって来いやぁ!!!」
続く




