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第百十四話

<大工のあんちゃん最終章 受難!ゴルゴタ丘ライブへの道編!!>


ロボスの前で跪いてるあんちゃんは、涙と鼻水をボロボロ流しながら訴えています。


「陽気なあんたでも、世の中が嫌になっちまう時があったのか」

「あの頃の俺は若かったのさ。。。」


鼻水を垂らしたままのあんちゃんは、腕を組みながら回想を始めました。


「俺が引き籠りの時に、色々な事が起きたんだ。両親にも突き放され、片思いだった女にもフラレ、ブログは炎上するわでさ。だれも俺の寂しい気持ちを分かってくれる奴なんて、世の中に誰もいないんじゃねーかってよ」

「。。。」

「人を簡単に信じてた自分が馬鹿らしいって思うようになって、気が付いたら風呂場が真っ赤に染まってたんだ」

「ほう。よく死なないでいられたもんだな」

「よく言うぜ、ロボス。俺を救ったのは、お前だったんだろ?」


そうです。

風呂場の中でリスカしたあんちゃんが、目覚められたのはロボスの一言でした。


"起きろ!あんちゃんさん!"


目を閉じながら腕を組み、昔の若かりし頃の自分を、まるで微笑ましく思うように笑みを浮かべてます。


「鼻水垂らしながら、言うセリフじゃないわな?」

「だははははは、すっかり拭き忘れてたわ」


あんちゃんに背を向けたロボスも、その頃を懐かしむように目を細めます。そして、あんちゃんから鼻水が消えたのを感じて、ようやく振り返りました。


「それで、その死に損ないのあんちゃんさんが、どうして生きてやろうって思えたんだ?」

「それがな、リスカすると劣等感が優越感へ変わるのが分かったんだ。すると今度はどんどん人が信じられなくなっていった。人どころか神様なんか信じたって損するだけだって」

「なるほど」

「でもよ、究極のところまで行ったら、たった一人信じられる奴がまだいたんだ」

「ほう、神をも超えるそいつ一体誰だ?」

「意地悪な、もう一人の俺自身だ」


その時ロボスはどこかで何かを悟ったような瞳を見せます。


「良い事をしようとするおれは信頼できなかったが、悪い事をしたがる俺なら信じられるってよ。そしたら、みーんな好き嫌いなだけの話じゃんかって思えて、そういう見方や価値観を一切合財を捨てたら、みんなもひょっとしたら同じなのかもって思えたんだ」

「。。。」

「なんとなくだけどよ、ロボス。お前って、意地悪な俺と似ているんだよな」


その言葉を投げかけられたロボスは、じっと黙ったまま微笑んで頷いています。時折、目尻にキラリと光るものが見えました。だが、ロボスはキリッと険しい表情をします。


「そこまで悟ったのなら、覚悟を決めな、あんちゃんさん」

「え?」

「あんたは世界でビッグな存在になるために、今まで懸命に生きてきたんだろう?」

「お、おう!まぁ~な」

「あんたを痛めつけようと思っている連中だって、あんたと同じかも知れないぞ?」


ロボスの言葉が、あんちゃんの胸にグサっと刺さります。


「あんたは無事に気が付く事が出来たから、こうやって陽気な性格を取り戻す事が出来た。でも、彼らは気が付く事さえ怖がっているとしたらどうだ?」

「気が付く事さえ、怖がってる?」

「そうさ。あんたが人を信じやすい性格なら、あんたにしかできない何かがあるんじゃないか?それを失うことの方が、よっぽどローマ軍の処刑よりも怖くないか?」


あんちゃんは立ちあがって、真剣なまなざしでロボスを見つめます。


「ロボス、あんたは俺に死ねと?」

「いいやその逆だ。アニキ・ザ・ヨハネの魂を受け継いでいるのなら、どんな事があっても、最後まで生き延びてくれ!」


さて、その頃ゲツセマネ園の外で待っていたペテロとトマスはというと、すっかり待ちくたびれて、ガーガーいびきをかいていたのです。


「ぐぁああああ~!」

「むにゃむにゃ~!むにゃむにゃ~!」


一方、遠くの方からは、ローマ軍とユダヤの兵士が、一歩、また一歩とゲツセマネ園へと近付いています。


ザッザッザッザ!ザッザッザッザ!


ユダを警戒しているロンギヌスは、しっかりと後ろから見張っており、焦っているユダは、どうにかあんちゃんがゲツセマネ園にいる事を望んでました。


「ロ、ロンギヌス様。あの〜大工の野郎がいましたら、俺が親友である証拠を見せます!それをきっかけに、奴を逮捕しちゃってください」

「フン!逮捕できなければ、貴様の首が飛ぶだけだ!」


ザッザッザッザ!ザッザッザッザ!

次第にローマ軍やユダヤの兵士達が持つ松明が、あんちゃん達がいるゲツセマネ園を照らし始めました。その灯りに気が付くロボスとあんちゃん。


「あんちゃんさん。どうやら、お迎えがやって来たようだぞ」

「ロボス、ユダも一緒なのか?」

「当然だろうな」

「そっか」


しかし、全てを受け入れたあんちゃんの表情には、もはや一点の曇りも無く、満面の笑みが浮かんでいました。


「覚悟出来たのか?」

「いや、むしろその逆だ」

「逆?」

「何があろうとも、俺は生き延びてやるのさ」


続く


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