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第百八話

<大工のあんちゃん最終章 死闘!!エルサレム神殿編!!>


ニコデモ爺さんの登場で、白々しくピンチを切り抜けたあんちゃん。星々が鮮やかに輝く夜空の下、二人は宿の屋上に行きました。


「いやー、若者よ。あんたは数々のミラクルを起こしてきたそうじゃないか」

「たはは、そんなの偶然だって」

「いや、若者よ。正に神懸かり的なのだから、これほどまで多くの人々に慕われるのじゃろ」

「参っちゃうな〜。まぁラッキーだったのかな俺ーって」


ニコデモは立派な髭を蓄えた老人ですが、しかしその物腰や表情は、最高司祭に選ばれるだけあって柔軟性と協調性に溢れています。


「あの小童パウロが繰り出す無理難題に、堂々と論破したと聞いて私はびっくりしたものじゃ!さらにはロンギヌスにかました空手水平チョップ!わしゃ、若い頃の力道山を思い出したぞい」

「あ、いやニコデモ爺さん。あれは頭突きだって、頭突き」


しかし爺さんは全く聞いておりません。もはや初めて街頭テレビでプロレスを見た子供のように、目を輝かせて熱弁しています。


「それにしても、どうしたらあんたみたいに人々に愛され、理想に燃え信念を持って生きる事ができるのじゃろうかの?」

「そりゃ、爺さん。生まれ変わらないと無理だな」

「何じゃと?」


あんちゃんはニコデモ爺さんに即答しました。


「それじゃ、わしのような先行き短い、老いぼれ爺には夢も希望も無いじゃないか。もう一度、母親の胎から産まれるしかなかろう?」

「タッハハハ〜。爺さん、面白い事を言うな。俺が言っているのは魂をどう見るかの問題さ」


ニコデモ爺さんは両手を組んで、真剣な眼差しで聞き入ってます。


「哀しいかな、この世の中って人生を諦めた奴らほど、頑張ってる人間を蹴落とす努力をしちゃうんだよ」

「誘惑は常に周りあるものじゃからな」

「だろ?だから世の中で理想を持つ事ほど、困難で険しい道のりはないわな」

「確かにそうじゃな」


するとあんちゃんは、ニコデモ爺さんに問いかけます。


「時に爺さん、あんたは風の音を聴くだろう?」

「うむ。そうじゃな」

「だけどその風がどこから来て、どこへ行くかは知らないだろ?」

「ほうほう、確かに」

「俺が生まれ変わらないと無理だって断言したのは、今まで知らなかった事を知ることにあるのさ。それは並大抵な努力では辿り着けないし、時には人々から嫌われる事だってある。自分自身のちっぽけさに嫌気が差して、格好つけようとしたがる時だってある」


自分の実体験を通して語るあんちゃんに対して、ニコデモ爺さんじっと聞き入っています。


「でも、それでも、自分の心の中にある情熱がある限り、そして、世界中にいる人々に平和をと心から真剣に願えるのなら、先行き短くとも信念を持って生まれ変われれば、その時初めて風の行き先を知ることができるのさ」


パチパチパチパチパチパチ!

あんちゃんの自論に、スッカリ感心したニコデモ爺さんは、拍手喝采です。


「すんばらしい!やはりあんたは只者じゃないな!」

「いやー、それほどでも」

「やっぱり民衆の心を鷲掴みできるカリスマじゃ!」

「たははは、照れるぜ」

「本当じゃ。皆が救世主というのも頷けるものじゃ!」


あんちゃんを大絶賛のニコデモ爺さんですが、あんちゃんは突然落ち込んでしまいました。


「どうしたのじゃ?」

「いや爺さん。俺ってそんなに立派な人間なんかじゃないんだよ」


それを聞いて不憫に思ったニコデモ爺さんは、心配そうにあんちゃんの相談を乗ります。


「陽気で明るい若者よ、一体何があったのじゃ?」

「実は民衆からインチキ呼ばわりされて、ついカーッとなってしまってよ。そのおかげで弟子達は危険な目に遭うわ、さらにアニキのファン達はローマ軍に処刑されちまったんだよ。。。」


あんちゃんは責任を感じ両肩を落として、どんよりした雰囲気で落ち込んでいます。しかしその話を考察した利己でも爺さんは、何かおかしいと思い始めました。


「うーーーん。若者よ、彼らは一人も磔刑などに遭ってはいないはずじゃぞ」

「ええええええええええええええ!?」


その言葉にあんちゃんはビックラこきまろです。


「だって、うちの弟子のフィリポとバルトロマイが、ゴルゴタの丘でアニキのファン達が磔刑されたって」

「いいや、ワシはさっき見てきたが、誰も十字架にされた者はおらんかった」

「う、うっそぉおお!?」

「本当じゃよ。首都ローマでは皇帝の親衛隊長官セイヤヌスが失脚し、ピラトゥスも後ろ盾を失い、更にティベリウス皇帝(カエサル)自ら、ユダヤ属州国民からの反乱を避けるよう命令が下ったのじゃよ。だからよほど我々から求められない限り、むやみやたらの処刑などあり得んじゃろう。それにじゃ、若者よ。ティベリウス皇帝という男は、我々を処刑する以上に属州国で勃発する反乱を嫌う性格じゃからな」


あんちゃんは顎を外して、なんだか心配して損した気分でした。


「それじゃそれじゃ!ニコデモ爺さんよ。ローマ軍がやったはずの処刑って、一体どうなっているわけさ?」


顎鬚を何度かさすったニコデモ爺さんは、何かピーンと来たようです。


「ははーん。どうやらあのカヤパが一枚噛んでいやがったのじゃろう。この手の騒ぎはカヤパの仕業に間違いない」

「カ、カヤパ?」

「我々と敵対するサドカイ・レーベルの大社長じゃよ。奴は売れるためなら何でもやる男じゃしの、きっとおぬしをおびき寄せるための大掛かりな罠じゃな」

「罠!?ちっくしょおおおおおおおおおおお!!!!!!」」


さて、その頃カヤパのいるサドカイ・レーベル宮殿ではというと。


「ホッホッホッホッホ~!ユダ!よくやったでザマス!」

「きっと騙されたブラザーはダチ想いだから、きっと名乗り出てくるYO!」

「一時期はあの伝道師がローマ軍に頭突きなんてしたもんだから、ミー達の立場も本当に危うかったザマス!」

「まぁ、所詮セイヤヌスが失脚してしまえば、ピラトゥスもローマ軍も恐くねぇYO!」

「ホッホッホッホッホ~!これでローマ軍を利用して、憎きインチキ伝道師を逮捕できるザマス!」


ユダとカヤパは二人揃って笑っていました。しかし壁を隔てたその裏では、苦渋を舐めさせられて憤慨する、あのロンギヌスとカッシウスがいたのです。


「クッソ!何でピラトゥス様も皇帝(カエサル)様も、属州民の奴らを野放しにしてるんだ!」

「落ち着け、カッシウス」

「し、しかし!ロンギヌス大隊長!」


するとロンギヌスは見事な手捌きで槍を振り回し、カッシウスの喉元ギリギリに槍先を近付けました。


「我らローマ軍が抑えるのは、今だけだ!」


続く


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