第百七話
<大工のあんちゃん最終章 死闘!!エルサレム神殿編!!>
慌てて帰ってきたフィリポとバルトロマイ。ゴルゴタの丘で行われてる磔刑の模様を、あんちゃんや弟子達に報告しました。
「先生!ローマ軍の奴ら本当にアニキのファン達を十字架に張り付けてました!」
「(呟き)両手両足首には、こんなブっとい十寸釘をぶっ刺して」
「しかも誰かが先生を突き出すか、先生が自首するまで処刑を続けるそうです」
「(呟き)あのロンギヌスとカッシウスって連中は、本気と書いてマジっす!」
腕を組みながら偉そうに聞いていたあんちゃんですが、流石にローマ軍の残酷非道さには、脂汗を流すしかありません。するとペテロの弟アンデレが、蒼ざめながら絶望します。
「うわーー!もうダメだ〜!!」
「アンデレ、落ち着け!」
「兄ちゃん、これが落ち着いてられる事なの?!ローマ軍は世界一残酷な処刑をするって有名じゃんか!」
そうです!奴隷で剣闘士だったスパルタカスも、ローマ軍に歯向かったために磔刑にされたのです。その話を聞いたみんなは、更に顔が蒼ざめてしまいました。
「分かった!分かったよ!元々はロンギヌスに頭突きした俺が悪いんだ。土下座して謝ってくる」
「んな!?元ヤン、それはいくらなんでも無茶だぜ!」
「そうだ!そんなので許されるのなら、わざわざアニキのファン達を奴らが磔刑にするか?!」
するとあんちゃんは久しぶりにニコっと笑います。
「フッ、奴らだってローマ軍人の前に、一人の人間だろ?ペテロ」
「いや、元大工。同情や詫びが通用する連中なら、アニキのファン達が磔刑にされる訳がない」
ちょっぴり焦るあんちゃん。しかし気を取り直して。。。
「少しは俺にカッコつけさせろよ。なぁ?マタイ」
「いいや、先生。本当にそういう問題じゃないですよ。あいつらは根っから処刑が大好きな人種なんです」
ヒヤリと汗をかくあんちゃん。されど気を取り直して。。。
「そんなこたーねぇよ、なぁ?シモン」
「処刑が禁止されてる俺たちに代わって、あいつらは獣の如くやり放題です。ゴルゴタの丘を髑髏だらけにさせたのも、奴らがやってきてからなんですから」
顔中蒼ざめながらも、必死に苦笑いしているあんちゃんは、弟子達に格好付けました。
「い、いいや!!そ、それでも俺は行くんだ!」
「マジかよ?!」
「俺のことは止めなくていいから、なっ?」
「で、でも〜」
「い、いいんだよ、お前ら弟子が止めようとも、俺は!ぜ、絶対に行くんだから!」
もはやあんちゃんの決意が硬いと感じた弟子達は、引き止めることをやめます。
「それじゃ、元大工。頑張って謝ってこいよ」
「え?ペテロ?!」
「ああ。その生き様と勇姿を、俺達は忘れないぜ!元ヤン」
「ちょ!ト、トマス?!」
「先生〜。あっしらの為に!先生は最高にシブいっす!」
「いや、あの、マタイ」
「く〜!皆まで言わないで下さい先輩!絶対には止めませんって!」
「いや、タダイ。何もそこまで言い切らなくても」
本当はダチョウ倶楽部の白々しいギャグのように、実は内心止めて欲しかったようなあんちゃんは、みんなに背中を向けたままです。
「今がチャンスだぞ、みんな!」
「うん?!」
「ほら、今、ここで!」
「何やってるんすか?先生」
「安心しろ、元大工。お前の屍は俺達が拾ってやるさ」
「クッ!!!」
もはや万事休すのあんちゃん。サラちゃんやマリヤの方にも、背中を向けながらチラチラ見ますが、心よりあんちゃんを見送っている様子。引き止めてくれなさそうです。そんな時でした!
「すまんが、こちらに愛の伝道師と名乗る若者はおるかね?」
パウロと同じファリサイレーベルの服装を着た、ヘンテコな爺さんが訪れてきたのです。これ幸いと思ったあんちゃんは、元気良く手を挙げました。
「はい!はーい!俺っす!俺が愛の伝道師でーっす!」
「あんたが有名な伝道師かい」
「いやー嬉しいな〜。奇遇だな〜。俺も爺さんに会いたかったのさ」
あんちゃんはすっかり爺さんの肩に手を回してます。
「本当かい?若者よ」
「あー本当だとも。あ、あれだろ?そう、あれだ!あのパウロの一件だろ?」
「おお!よくぞ!さすが救世主と呼ばれるだけあるな!」
「そ、そりゃー何でもお見通しだかんな、俺は。がっはははは〜」
白々しくこの場を去ろうとする、あんちゃんの魂胆が見え見えです。しかしそんなあんちゃんに、爺さんはニコニコしながら嬉しそうにしてます。
「気に入った!若者よ!ぜひおぬしの意見を聞かせてくれんかの?」
「まぁ、いいけど。爺さん、名前くらい教えてよ」
「おお、そうじゃった。わしはファリサイ派最高司祭をやっておるニコデモじゃ。宜しく楽しみますぞい、若者よ!」
「おお!こっちこそ宜しくな、ニコデモ爺さん!」
このファリサイ派の最高司祭であるニコデモ爺さんこそ、後々に多大なる影響を与えるのでした。
続く




